女心は複雑そうだ
「で、結局、あんたらは何者でオレになんの用なわけ?」
オレに声を掛けてきたに四人組にオレは問い返した。
相手は全く知らない人間なんだし、仮令それが歳上の女性だったとしても仕方の無い話というものだろう。まさかオレ一人相手に四人掛かりでナンパなんてわけもないだろうし。なんとも怪訝な話である。
「ああ~ん、もう、そう警戒しないでよ~」
いくらそんな風に言われても無理なものは無理だ。悪い人物にはみえないけれど、だからといって初対面の知らない相手にそこまで気を許せようはずもない。
「まあ、そこは仕方が無いわよね。
取り敢えず自己紹介だけど、私達は『スカーレット』ってアマチュアバンドのメンバーで、私はアケミ。で、こっちがリーダーのクミコ、それからミオにミチカ。
さっきクミコがキミに声を掛けたのは以前ライブで観客だったキミが印象に残ってたからみたいなのよね~。
でしょ?」
「んなっ⁈
もしかして『スカーレット』って、あのときのあの露出狂の変態バンドぉ⁈」
な、なんでそんなイカレた馬鹿女達がオレに⁈
「ちょっ、ちょっと、止めてよっ、そんな大声でっ」
驚くオレの口をクミコと呼ばれた女性が慌てて押さえてくる。
「本当よっ、全くデリカシーが無いんだからっ」
ミチカだったか、がオレを横から非難してきた。けど、それは自業自得だろ。
「う~ん、悪いけどそのことについては触れないでくれないかな」
説明をしていたアケミという女性も顔を顰めながら、笑顔で威圧を掛けてくる。
なんだ、この人達、一応は羞恥心が有ったんだ。
「ああ、あの時のアレはアタシ達にもどうかしてたって自覚が有るんだ。だからこれ以上それには触れないでくれよ」
「本当よ~。アレは私達にとって思い出したくもない黒歴史なんだから~」
クミコ、ミオもやはり同様で、明らかにアレは失態だったと後悔しているようだ。
なるほど、今の彼女達を見るに普段はそんな感じじゃないようだ。あの時のアレが嘘だったかのような常識的なファッションに身を纏っているし。
まあ、普段からアレなら間違いなく変態だもんな。
とはいえ、いかにバンドのパフォーマンスだとしてもアレはない。きっと本人達の言うように、なにかで迷走していたのだろう。
「ごめん、ちょっと場所、変えようか」
突如クミコが言い出した。
「ええっ⁈ 今注文が届いたばかりだってのに⁈……って、ああ、これじゃ仕方ないか……」
気付けばなんだか周囲から注目を集めているようだ。
まあ、話題が話題だったからなぁ。女性相手に露出狂の変態なんて大声で言ってしまったしな…。
というわけで、オレ達は急ぎでその店を出ることにしたのだった。
……ああ、もう少しゆっくり味わって食べたかった…。
▼
場所を改めここは駅近くの喫茶店……ではなくファミレス。
まあ、オレを含めて5人とあれば喫茶店じゃ少し席が狭いし仕方がないか。できればスイーツで有名な喫茶店とかが好かったんだけどなぁ…。
まあ、それでもその手の物を扱ってないってこともないわけで……。
「よし、それじゃオレはこのチョコレートサンデーで」
やはりファミレススイーツといえばパフェかサンデーが定番だろう。
というわけで、オレの注文はこれで決まりだ。
「うわぁ…。この子、本当に根っからのスイーツ男子だ。迷うことなく凄いの頼んでるし」
『スカーレット』のメンバーが揃って唖然としている。
因みにこの台詞は……ミチカ…だったか? まあ、とにかく余計なお世話だ。
「なんだよ。他人が何を頼もうと、そんなのそいつの自由だろ」
「まあ、それはそうなんだけどぉ~、やっぱり女の子としては、なにも考えずにそういう物を食べられる男の子ってのを見てるとね~…」
オレの返しにこう応えてきたのはミオ……だったか?
でもそんなこと言われてもなあ…。
「なんでだよ? そんなの関係無いだろ? 食いたければ普通に頼めばいいじゃねえか。
恐らくはダイエットとかを気にしているんだろうけどそれは男も女も同じだって。
だいたい女性ってのはそういうことを変に気にし過ぎなんだよな。
そりゃあ肥満は健康的に問題だけど、痩せ過ぎだって見れたもんじゃねえと思うんだよな。ガリガリに痩せた木乃伊みたいな女性なんて正直オレは御免だな。
それに、女性らしい体付きって話なら少しくらいは肉付きの良さも必要なんじゃねえの?
スレンダーなのも好いけど、痩せてちゃ出るところなんてあまり期待はできないし、何事もバランスが大事だよな。
でも、やっぱり一番なのは自然で健康的な美しさだとオレは思うんだよな。だから可怪しなことは考えず、よく食べそしてよく動く。これが一番なんじゃねえの?」
長々と語ってしまったけれど、これがオレの持論である。少なくともオレはそうだし、由希もそう。多分美咲ちゃんなんかもそうじゃないかな。なんかそういうことに気を使ってるようにはみえないし。
「うわぁ…。この子、一聞すると良いことを言ってるように聞こえるけど、これって実際は苦労を必要としない恵まれた者の上から発言だよね」
う~ん、言われてみればそうなのか?
まあ、仮にそうだとしても、余程なことじゃない限りは誰しもそんなに変わらないと思うんだけどなあ。
「なんだよ。そんなことを言うためにオレに声を掛けてきたのかよ。本当、女性ってのはよく解らないよな…」
「あっ…。
そうよ、そんな話をするつもりじゃなかったのよ。危うく横道に逸れるところだったわ」
オレのツッコミを受け、話の方向修正に入るアケミ。…って、この人達、リーダーが話を進めるわけじゃないんだな。
まあいいけど、それよりも本題ってなんなのだろう。
……ああ、文字数的にまた次回に持ち越しか。




