現実は都合好く回るとは限らない
今さらですが本作品で使われている漢字が未だに一般的なものでないものが混ざっていたり、統一性がなかったりするのは語り手の純の文章能力によるものです。……ということにしているため基本的に修正はありません。単に作者の無精さによるものなのですが、実は作者自身の反省材料を残すという理由もあります。どこをどう間違っていたのか、いつの時点まで理解できていなかったのかこれで解るというわけです。
そういえばこの『解る』という言葉も初期は『判る』とよく間違って使っていたりとかしてますよね。
佐竹の登場によりそこからは気をつけるようにはしていますが、やはり文章というものは難しいもので未だに漢字と平仮名の使い分け方等で頭を悩ませています。一応はルールがあるらしいのですがどうにも身に付いてくれません。悪癖ってのは治すのが…いや、直すのがやはり大変です。
まあ、一応キーワードに『作者やらかしあり』ってつけているのでそれを免罪符ってことに……ダメですか?
物事というものは必ずしも巧くいくことばかりとは限らない。努力は報われるなんていうけど、そこには相応にといういう言葉が隠れている。最近のオレの身の周りは特にそんな感じだ。
「申し訳ありません。例の結果ですが準々決勝敗退でした」
「「すみませんでした」」
晴海さんからの報告に続き良昭達が頭を下げる。
なんの話かといえばこいつらの出場していた高校生クイズ大会の結果だ。
「そうか。一応期待はしてたんだけど、まあそれも仕方がないか。所詮勝負は水物だしな」
いわゆる時の運というやつで、不確定要素で流れが変わるってわけである。例えば去年の美咲ちゃんなんかがその例だ。
「いえ、それなんですが、そこで敗れた相手ってのが選りに選ってあの大東のアイドルグループなんですよ」
…………。
「はあっ⁈」
続いた晴海さんの言葉に思わず間抜けな声を上げてしまった。
「全く、なんなんだよあいつら。俺達の二番煎じのくせにっ。しかも諸星三兄弟ってあの名前絶対ふざけてんだろっ」
浩司が毒突く。否、相手がいないから毒を吐き捨てるというべきか。いや、今はそんなことよりもだ…。
「諸星三兄弟? 聞かない名前ですね」
晴海さんの説明によると、そいつらは今年大東プロからデビューした頭脳派アイドルユニットで『トリニティ』という連中らしい。諸星三兄弟というのはそいつらの別称でメンバーの名前に由来する。
長男、諸星勤。二年生。こいつらは兄弟だったらしい。この勤は社会問題を得意とする秀才タイプ。浩司の言によると漫画に出てくるガリ勉ヒョロ眼鏡タイプとのこと。美咲ちゃん風にいうなら某漫画の○尾くんってことになりそうだ。
次男、諸星亮。二年生。勤の双子の弟で、こいつが一番の曲者とのこと。全てのジャンルを網羅した完全無欠な超人タイプで、それを鼻に掛けた全知全能パフォーマンスが苛立つらしい。これは浩司に限らず三人の一致した意見だ。余程嫌味なやつなのだろう、『黒孔明』なんて渾名で呼んでるし。…ってなるほど名前が一文字違いだこの三人。まるでネタ芸人だな。
というわけで、三男の名前は言うまでも無く諸星均。こいつは一年生らしい。得意ジャンルは世俗一般。まあ、要するにオタクタイプか。案外実態はただの平凡タイプでそれ故のそっち方面担当なのかも知れないけど。
「全く、大東もそこまでするか? どれだけうちをライバル視してるんだよ」
最早苦笑するしかないなこの馬鹿馬鹿しさは。
「で、晴海さん、そいつらのアイドルとしての技量はどんな感じか解ります? まさか本当はネタ芸人ってわけじゃないんでしょ?」
「いや、それなんだけど、基本はバラエティー出演みたいでさ、他の活動についてはまだ確認は取れてないんだ」
いったいどういうことだろう? バラエティーメイン? それじゃ本当に芸人だろ?
「まさかとは思うけど完全にそれ一本のバラドルとか?」
まさかとは思うけど、そうでもなければこいつらにぶつけられるとは思えない。こいつらだって基本的にはそっちの比重が大きいわけだし。
「それはまだなんとも言えないんじゃないかな。あくまでも今はってだけだし。
でも、あれだけうちに対抗意識を持ってるんならそっちでもぶつけてくる可能性も有るかもね」
なるほど確かにそうだろう。今は他の面でリードしているがそれでもこの一敗は痛い。しかしこれ以上のことを求めるのは少し酷というものだろう。こいつらはこれでも高校生なんだから。
「まあ、そっちの方はオレの領分か。
そんなわけだ、今年は残念な結果だったけどその分来年は期待させてもらうってことで、頼んだぞお前ら」
ここは不動を貫くべきか。動かざること山の如しだ。焦って余計なことをするべきではないだろう。
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物事というものは必ずしも巧くいくことばかりとは限らない。それはここでも同じだった。
「もうっ、最っ低っ! なんであんなやつらに主題歌を持っていかれなきゃならないのよっ」
望だ。今回のアニメ主題歌を逃したのが余程悔しかったのだろう。最近のWISHは人気が上り調子になってきていただけにこの冷水を浴びせられたような状態に不満を覚えたってわけだ。
「偶にはそんなこともあるだろ。いつもいつもそう物事が都合好くいく方が可怪しいんだよ」
そうは言ってはみたものの、残念ながら今回はWISH自体に原因が有る。といってもそれは今現在のことではなく……、まあデビュー当時のイメージが未だに尾を引いていたってわけだ。まだ一年も経ってないし、これは仕方のないところだな。
「でも、だからってなにもあの子達じゃなくったっていいと思いませんか?」
今度はかなえだ。これでもこの中では一番理知的なはずなんだがな。こいつまでがこう感情的になっているとは、余程気に入らなかったんだな。
いや、それは珠恵も同じか、うんうんと首を縦に振っているし。こういうことではこの三人も意見が揃うんだな。
「まあ、確かに気持ちは解らないでもないけど、でもあいつらも最近結構人気が出てき始めてるみたいだからな」
そう、こいつらがここまで悔しいがるのも当然で、その相手というのはライバル事務所の同期のエルダーシスターズだったのだ。
またしても大東のアイドルだ。しかもうちに対抗し、ぶつけるかのようにデビューしてきた連中である。
くっ、ここでも不覚を取ったか。
否、不覚というのはオレの慢心か、油断してたつもりは無いんだから。それに大東プロにも失礼というものだよな。
しかし、これはまずいことになったな。河合達やそれに伴う恭さん達の件だってあるというのに。
まあ、そうはいっても仕方がない、やることは多いが、こうなったらやれるだけのことを全力でやっていくだけだ。




