Let's Lesson!
やってきました星プロダクション。
建物内に入ると、幾人かの子供達(10〜15歳くらい?)がちらほらと見かけられた。
きっと彼達は訓練生。つまり将来を担うタレント予備軍、アイドルの卵達なのだろう。
そんなロビーを真っ直ぐに突き進み、受付へと向かう。
「あの〜、すみません。今日からお世話になる男鹿という者ですが」
「おや、君は新入りの子かい?」
オレの声に応えたのは、受付の係員ではなく、後ろから現れた、兄貴(一応18歳)と同じ歳くらいのイケメン男子だった。
オレが振り返るよりも早く、彼に気づいた周りの子達が、次々に彼へと挨拶を始める。
「おはようございます、大成さん」「おはようございます」
「あ、おはようございます。今日からここでお世話になります。男鹿です。よろしくお願いします」
オレも急いで、続くように挨拶をし、軽く自己紹介をする。
「ああ、やっぱりそうか。じゃあちょうどいい。彼達も同じ訓練生だ。ついて行くといい。君達、この子のこと頼んだよ」
「はい、任せてください」
どうやら彼、オオナリさんは、兄貴とは違って人望のある人物らしい。
まぁ、兄貴の場合だと、周囲の人間が怯えて逃げ出すから比べ物にならないんだけど……。
とにかく、彼のおかげで行き先は解ったし、ついでに、そこの子達とも仲良くなれそうだ。
ありがとう、オオナリさん。
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彼達について行き、そこで仲良く一緒にレッスンを受ける。
早速のレッスンは、決められた曲に合わせてのダンスだった。
なんとかというステップを、速いリズムで踊るため覚えるまでが結構苦労だ。
だが、自分で言うのもなんだが、オレは運動神経がよく、また、物覚えもいいほうなので、数度もすればすんなりと出来るようになっていた。
それはもう、指導の先生から、筋がいいって褒められるくらいに。
ただそれは、必ずしもいいことばかりってわけじゃなかった。
そう、オレは忘れていたのだ。
同期の訓練生とは、苦楽を共にする仲間ってだけでなく、互いに競い合うライバル同士だということを。
数分の休憩時間に入ったところで、一人の男子がオレのところへとやってきた。
「なかなかやるみたいだが、いい気になるにはまだまだ早いぜ。いい気になるなら、せめて最低でもこれくらいのことは出来ないとな。」
そう言うと奴は突然と踊り始め、最後を一回のバク宙で締めた。
「どうだ、これが上級者だ」
そう言うと奴はニヤリと笑った。
「すげぇ、バク宙決めやがった」
周りは驚愕の渦に包まれていた。
「マジかよ……」
そして、オレもその中の一人だった。
「まさか、こんなのお粗末なのをバク宙って言う奴がいたなんて……」
但し、その意味合いは正反対、呆れによる驚きだ。
明らかに高さが足りない。
腰ではなく、せめて胸以上で回るつもりで跳ばないと。
「ふざけんなよ! だったらお前はこれ以上のバク宙が出来るってのかよ!」
「少なくとも、アンタよりはマシなつもりだぜ」
こうなったら仕方がない、奴に付き合ってやることにするか。
オレは奴と同じように踊り始める。(といっても当然、奴よりキレッキレだ)
それに加えて途中途中にバク宙を挟む。
そして最後は月面宙返りで締めだ。
「嘘だろ」「マジかよ」「次元が違い過ぎる」
周囲の驚きの中、奴と同じようにニヤリと笑って返してやる。
「どうだ、上級者。これで満足か」
沈黙する奴に対して、他の連中は大興奮。
危うくもみくちゃにされるかと思ったのだが、
「いたっ!」
突如現れた人物により、オレはその場から連れ去られたのだった。




