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今年もやってたミスコンだけど…

 店番から解放されたオレ達は、香織ちゃんの待つアイドルイベントのステージへ……とは向かわずに、各クラスの出すいろいろな店を巡っていた。

 といっても食べ物を出してるところばかりなのだけれど。

 いや、そろそろ昼時なんだし腹拵えは必要だろう。


「う~ん、今年も変わらずどこも安いところばかり。

 やっぱり学園祭って最高だよ~っ!」


 そんなことを言いながら腹部を擦る斑目。

 そういえば去年もこんなだったな。


「全く。それが女の子のすることかよ、みっともない。

 レナもミナも、こんなのを見習うんじゃないぞ」


 苦笑いをするレナとミナ。

 その表情からはなんて応えて好いかの困惑ぶりが窺える。

 まあ、斑目は一応は歳上だからなあ…。


「でも、気持ちは解らないでもないわね。

 品質はともかく、量と値段を比較すると明らかに釣り合いが取れてるとは思えないものばかりだもの。

 まあ素人のすることだし、多分、損益計算とかそういったことを一切気にしていないんでしょうね」


 佐竹が斑目をフォローする。

 代わりに各クラスの出店に対する評価がボロクソだ。いや、それに関してはオレに限らず、この場の誰もが同意見だろうけど。

 でも、味に関してはそこまでじゃないと思う。

 プロはもちろん、料理上手なやつと比べるからそう思うんであって……って、もしかして自分と比べてるのだろうか? だとすると佐竹って結構料理上手なんだろうな。

 まあ、単に味に厳しいだけの美食家気取りなのかも知れないけど…。


          ▼


 今年もやはりやっていたミスター&ミスコンテスト。通称ミスコン。

 つまりアイドルステージはまだ始まっていないってことで、メインイベントには間に合ったということだ。

 今年も司会は天堂と香織ちゃん。

 このコーナーだけでなく、今日一日このアイドルイベントを通じての司会役だ。

 そんなふたりだけれど、恐らくは今年もこのミスコンにエントリーされているものと思われる。

 現役アイドルのエントリーなんて、正直大人げない話だと思う。これじゃ結果の決まっているようなもので、実際去年の優勝者は男女ともにこのふたりだ。因みに一昨年までの三年間はやはり現役アイドルの伊藤瑠花(るか)

 所詮はアイドル同好会主催のイベントってことだな。本当の優勝者は次点の準優勝者ってわけだ。


「今年も咲さんは出場されてないんですよね……」


 ミナが残念そうに呟く。

 まあ、それは仕方がないだろう。だって美咲ちゃんはそれどころじゃないからな。


「本当、残念だわ。もし咲さんが出場してたなら、あんな女に大きな顔をさせることもなかったのに」


 レナなんてミナと違ってはっきりと不満を口にしてるし。こいつら、どれだけ香織ちゃんを敵視してんだよ。


「え? なに? ちょっとっ⁈ あなた達、私をどこに連れていく気⁈」


 なっ⁈ こいつら、いったいなんのつもりだ⁈

 突如、怪しい連中が佐竹を拐っていった。


「こら、お前ら、邪魔するんじゃねえっ!」


 しかもあろうことか、周囲のやつらが連中を庇うかのように追い掛けるオレ達の行く手を塞ぐ。


 くそっ、見失なってしまった。


 否、いたっ!


 ……って、なに? どういうことだ?

 佐竹のやつ、なんで舞台の上に?


 真相は実に馬鹿な話だった。

 そして納得のいく話だった。


 ミスコン女性部門の準優勝者が佐竹だったってだけだったのだ。……って、文字にすると解りづらいな、舌を噛みそうだ。

 しかし、もう少しやりようがあるだろう。なにごとかと思ったじゃないか。

 因みに男性部門の準優勝者は鳥羽だった。

 あいつも順調に人気が出てきているようだ。ただ、その分小鳥遊(たかなし)との付き合いは難しくなりそうだけど…。



「お前、いつの間にエントリーなんてしてたんだよ。

 いきなり連れていかれるから心配したじゃないかっ」


 表彰から戻ってきた佐竹をオレは咎め立てた。


「知らないわよっ。私だって登壇前に初めて聞かされたんだからっ。

 誰の仕業だか知らないけれど、当事者に断わりも無く勝手にエントリーするなんて、全く迷惑もいいところだわ」


 ううっ。ヤバい。

 佐竹のやつ、かなりのお冠だ。普段の冷静さの仮面が剥がれかけている。


「まあ、仕方がないんじゃないかな。

 この学校ってアイドル同好会が幅を利かせてるくらいなんだし、早乙女純そっくりな佐竹さんを放っておくわけなんてないんじゃない」


 うわっ! 馬鹿っ! 斑目のやつ、モロに佐竹の地雷を踏み抜きやがった。


「他人事だからそんな風に言えるのよ。

 考えてみなさいよ。変な連中に終始付き纏われるだけでも迷惑なのに、それが他の誰かの代用品としてなんていう侮辱的な理由でなのよ。

 全く、冗談じゃないわ」


 やはりそうか。こいつって転校してくる前は散々早乙女純に間違われてたって言ってたもんな。

 それが今度は間違いじゃなく解った上で、そっくりだからって理由でってんだから、プライドの高い佐竹には(さぞ)かし堪え難いことだろう。


「ひ、ひぃっ。ご、ごめんなさい~ぃ」


 あ~あ、斑目のやつ、涙目になってるし。

 でもこれは身から出た錆、自業自得だ。日頃から失言の多い斑目だけに、偶にはこれもいい薬だろう。

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