修学旅行から帰って来たら…
修学旅行から帰って来たオレ達だけど、学校行事はまだ続く。体育祭に中間試験、それが終われば学園祭。学校は生徒を忙殺するつもりだろうか。…って、これは去年も言ったよう気がする。
今年は生徒会への打診があったけど、そんなのを受けてたらもっと大変だったことだろう。まあ、当選していればの話だけど。
最近のオレは忙しい。リトルキッスにBRAINにWISHとプロデューサーとしてユニットを三つも抱えているわけだからな。
体育祭までの期間でリトルキッスの新曲を美咲ちゃん達にものにさせ、それが終わった今は美咲ちゃんに……まあ、いつもの試験前の勉強会だな。
幸い今年は優等生の佐竹もいるし、そんなには……。
いや、うん、どうなんだろう。一学期のことを思うと少し不安だ。
「本当、不思議よねぇ。仕事関係のことはきっちりと覚えられるってのになんでかしら」
佐竹が不思議そうにぼやく。
ただ、それに関しては凡その答は出ている。
一言でいうならばズバリやる気の有無だろう。
中学三年の時のがんばりとその結果を知っている者としては他に答えようが無い。
要は美咲ちゃん自身が本当に必要と認めたこと以外は身に付かないってわけだ。
エスカレーター式の学校ってのが裏目に出た結果だろう。ただ、それでも最低限の成績は必要なんだけど、美咲ちゃん、解ってるんだろうか…。
「全くなあ……。こんなんじゃなけりゃ、学園祭のイベントにも普通に参加できたのになぁ」
美咲ちゃんがこんな状態だけに、今年もアイドル同好会主催のステージにリトルキッスは不参加だ。代わりに鳥羽達サンダーバードが出演する。恐らくは去年のアレによる引け目のせいだろう。
因みにこのイベントのメインはいうまでもなく香織ちゃんだ。まあ、他にタレントを呼ぶ予算なんて無いだろうからな。
あ、でももしかしたら……。
案外今年も瑠花さんのゲスト出演があるかも。
オレのコネでBRAINやWISHを呼べないかって打診はあったけどそれはない。あいつらはあいつらで自分達の学校の学園祭があるからな。他所の学校なんかよりも自分の学校が優先なのは当然だろう。
「もうっ。これでも私だってがんばってるんだから、そんな意地悪なこと言わないでよっ」
美咲ちゃんが反論するけど、残念ながら説得力は無い。
ただ、それでも美咲ちゃんが言うのも嘘じゃない。がんばっているのは確かなのだ。
それで結果が出ないのは、恐らく潜在意識の問題だろうな。苦手意識が邪魔をして脳が拒絶しているのだろう。
これ、どうすりゃいいんだろうな。
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結局、美咲ちゃんは四科目で追試となった。
苦手な理数系と英語、そして国語だ。
う~ん、国語くらいならなんとかなりそうな気がしたんだけどなあ…。
美咲ちゃんって、本が嫌いってわけじゃないし、漢字だって結構難しいものを知ってるし……といっても読むの限定だけど。
やはり古文と漢文かなあ。日常生活じゃ縁がないし学ぶ意義があるとは思えない。多分そのせいなんだろうな。以前オレが英語を苦手にしていた理由がそれだしきっとそんな理由だろう。
英語も日本で暮らす分には用がない。
理数系は……もうそれだけで無理か。難しいっていう先入観がある教科だもんな。
でも、中学の時はそれらも一応はなんとかなっていたんだし、高校の授業ってのは精々がそれらの復習みたいなものだ。否、実際には新しいものとかの追加はあるけど、それでも基本は変わらない。
「そんなこと言えるのは純くんの頭が良いからだよ。
あ~っ、補習とか追試とか、もうイヤ~っ!」
……ああ、またしても泣き言か…。
「なに言ってんだよ。美咲ちゃんだって本来は頭が良いはずだろ。仕事の時なんか大抵が余裕じゃないか。
それに中学の時だってなんとかなったんだ。今回だって本気でがんばれば大丈夫だって」
いつもの如く宥め賺す。
とりあえず中学の時のことを根拠として示してみる。
「そんなこと、他人事だから言えるんだよ~っ」
……やっぱりか。
ダメだこりゃ……って、そんなわけにもいかないんだよなあ。
「いつまでも泣き言を言ってないで、さっさと補習に行ってこいよ。
そんなんじゃ、レナ達だけじゃなく、望達にまで追い抜かれるぞ。
それもアイドルとしての実力じゃなくて、学校の授業に付いていけないって理由でな」
「ぶぅっ。純くんの意地悪っ!」
と、言いつつも補習へと向かう美咲ちゃん。
でも、こんなやり取り、いつまでやればいいんだろうな。
いい加減なんとかなってくれないかなあ…。




