修学旅行 高校編 -山口県 観光-
今回もまた、罰当たりなネタをやってしまいました。
残念ながら、これは本当にある噂らしいです。
でも、こういうのってどこでも多かれ少なかれありますよね。
なお、指月公園ではその手の現象はあまり起きていないらしいので危険は無く、傍を通る程度なら特に問題は無いそうです。
因みに、その手の場所でその対象を怒らせるような真似は厳禁。物を持ち帰ることはもちろんのこと、線香をあげるのもダメらしいです。正に触らぬ神に祟りなしってことのようです。余計な干渉はしないよう気を付けましょう。
九州の玄関口と称される福岡県。そんな福岡県の玄関口と呼ばれるのは福岡ではなく博多だ。
新幹線で博多駅に着くと「はかた~」車内アナウンスが流れるので、旅行者にとってはここが博多なのか福岡なのか解らなくなるという話を聞く。また、福岡地区にも博多の名前の付いた施設が多く、より一層混乱を増すことになっている。加えて福岡県民は福岡のことを指して博多と呼ぶんだとか。
これじゃ、どこが博多で福岡か、他所の者には解らなくなるのも当然だ。
正解は中洲を流れる那珂川の東側の地区が博多、反対側の西側が福岡だ。
「またやってる。
そんなことどうでもいいでしょ、どっちも同じ福岡市なんだから」
由希が呆れながらツッコんでくるがここは反論するべきだろう。
「なにを言ってんだ。これは地元の人間にとっては重要な問題なんだぞ。元々この地は博多と呼ばれていたんだからな。
それが福岡と呼ばれるようになったのは、戦国大名として知られる黒田親子がこの地を治めるようになってからで、その城の周辺を福岡と名付けたことが……」
「地元って、お前はここの人間じゃないだろ。
…って、なに? こいつって前にもこんなことやってたわけ?」
今度は河合のツッコミが入った。
まだ説明の途中だってのに。
「うん、中学の時もそうだった」
美咲ちゃんが河合に答える。
それに由希が続いた。
「全く、アンタは未練がましいのよ。
どうせまた、せっかくの博多を楽しむこともなく山口へと向かうってことが不満なだけでしょ」
その通りだ。
せっかくの博多なのに、ホテルで一泊しただけで素通りなんて、この旅行の企画者はなにを考えているんだ。
「過ぎたことは仕方がないでしょ。
それよりもせっかくの関門海峡なんだから、しっかりと見ておかないと後悔するわよ」
おおっと、佐竹の言う通りだ。
博多に続いてここまでなんて、あまりにももったいなさ過ぎる。
関門橋から眼下を眺める。
バスならではの景色だ。
これは関門橋が高速道路となっているためで、それ故にこの景色は車上限定のものとなるわけである。
……ああ、窓を開けられないのが残念過ぎる。
もっとよくこの景色を堪能したいのに。
「仕方ないでしょ、安全が第一なんだから」
そう言う佐竹もオレと同じで残念そうだ。
やはり誰もが思うことは同じということか。
仕方がない。今はこれで我慢するしかないか。代わりに後でその手のサイトを覗くこととしよう。
過ぎ去る門司を後にすれば、眼前に下関が窺える。
あれに見えるは壇之浦古戦場か。他にもいろいろと気になる所の多い下関だけど、残念ながらここも素通り、今日の目的地は秋吉台と萩。
まあそれが定番なんだから仕方がない。
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「わあっ、凄い!」
美咲ちゃんが感嘆を漏らす。
ここは秋吉台秋芳洞。
山口県美祢市東部、秋吉台の地下100~200mにある鍾乳洞で、約1kmの観光路をもって公開されている。鍾乳洞としては日本最大規模。洞奥の琴ヶ淵より洞口まで、約1kmにわたって地下川が流れ下っているという。
「う~ん、確かに凄いな。
写真映像とかで見て凄いと思ったけど、実際に見てみるとそれ以上だ」
身代観音を過ぎて現れた石灰岩の長淵・竜が淵にオレも感嘆したけど、凄いのはそれだけでなかった。石灰成分の雫からできた鍾乳石の氷柱の中を進み現れたのは、百枚皿と呼ばれる石灰華段丘。この洞窟一の見どころだ。その数は大小500を超えるともいわれ、世界でも稀に見るスケールだという。
「ああ、本当に凄いよな。こればかりはマジで驚きだ。
こういうのってゲームとかの中だけだって思ってたけど、本当に実在するんだな…」
あまりこういうことに興味のなさそうな河合が言うんだから、間違い無くここは絶景だ。
当にここは地上に現界した夢幻の地。まほろばとはこのような所のことをいうのだろう。
「うん、こんな所だとドワーフとか住んでいそうだよね」
河合の言葉に釣られたのか、美咲ちゃんがこんなことを口にする。
この素晴らしさだ、そんな風に思う気持ちはよく解る。でもなあ……。
「残念ながらそれは無いかな。ドワーフが棲むのは鍾乳洞でなく鉱山だし。
彼らは鍛冶職人の種族って設定だろ。だからミスリルみたいなレア鉱石の産出されるようなところに好んで棲むんだよ。例えばモリア坑道とかな」
まあ、ゲームとなればまた話は別。その場合、多くの種族に混ざって街に住む者も少なくない。
といっても、大抵は鍛冶屋か冒険者って設定だけど。
「あら、一概にそうとは言えないんじゃないかしら。
彼らって芸術にも造詣が深いことになってるし、案外こういう場所を好んだりするかもよ」
むむっ、言われてみれば。
佐竹じゃないけどそういうこともあり得そうだ。
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秋芳洞に堪能した後は秋吉台のカルスト台地を横に眺めながら、次の目的地である萩へと向かう。
山口といえば萩くらいしか観るべきところは無いと思っていたのだろう、みんな秋吉台での感動の余韻に浸っているようだ。なにを隠そうオレもそのひとり。
いや、秋吉台については当然だけど知っていた。ただ忘れていたっていうだけだ。だって萩のイメージがあまりに強いんだから、それは仕方がないだろ?
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萩といえばやはり幕末、維新のイメージ。長州藩の烈士達に纏わるものが多い。松下村塾や松陰神社がその代表的なものだろう。
他にも長州藩の本拠地萩城跡の指月公園やその城下の武家屋敷なんかも観光スポットとなっている。
「ねえ、知ってる?
実はこの指月公園って心霊スポットになってるんだって。なんでも、白い服を着た首無し侍の幽霊が出るとか、死装束を着た女の人の幽霊が出るとかいう噂だよ」
斑目のやつ、どこでこんな噂を仕入れてきてんだか。まあ、例によってネットとかなんだろうけど。
「馬鹿なこと言ってないで次に行きましょ。
ほら、後がつかえてるんだから」
由希がオレ達を急かす。
ああ、そういえばこいつ、この手の話が苦手だったか。ちょっとばかり揶揄って……ってわけにはいかないか。
この手の場所でこういう冗談は厳禁だっていうし、それにこういう場所でこういう反応をするやつが出る場合、それはなんらかの兆しの証だって話も聞く。
信心深いつもりはないけど、でも触らぬ神に祟り無しっていうし、なにも好んで自分から災いを求めることもないだろう。
「ああ、そうだな」
そんなわけで、オレも由希に賛成する。
「ふ~ん、そうなんだ。
でも、少し意外ね。太宰府ではあんなこと言ってたのに」
「わけ解らないこと言ってないでさっさと行くぞ」
オレは佐竹を促した。
別に深い意味はない。理由は先ほど述べた通りだ。
うん、馬鹿を言ってないでさっさと行こう。
※前書きや作中にある蘊蓄は、あくまでも作者の俄な知識と私見によるものであり、必ずしも正しいものであるとは限りません。ご注意ください。
ただ、心霊スポット等でその怒り買ったり、その他関係を持つような真似をしない方が良いのは確かです。
心霊現象等は実在しないのかも知れませんけども、それでも自分から災いの可能性に近付く必要はないわけで、信じる信じないに関係なく近付かないのが一番でしょう。




