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『BRAIN』&『WISH』

 新たなるアイドルプロジェクト始動!

 今回は男性三人組ユニット『BRAIN』と女性三人組ユニット『WISH』の二組。

 ただ『BRAIN』はこ9月にデビュー予定という促成栽培?が求められる。彼らの出場したクイズ王大会の記憶が世間に残る内にデビューさせたいからだ。

 番組の方には既に根回しはすんでいる。

 また、『BRAIN』のデビュー曲『Cool It Down』をイメージ曲として採用してくれるゲーム会社の方も、そのゲームの体験版を同じ9月に出すということでタイミングが好い。……ただ、ゲーム中のBGMとして急遽追加で組み込んだらしいので、工場の方ではてんやわんやって話だけど…。

 他者の心配をするよりも、当の『BRAIN』の三人だけど、幸いこちらの問題は少ない。

 知性派として売り出す予定なので、曲に派手なダンス等を組み込むつもりは無く、彼らへの負担は少ないはず。頭脳労働が売りなんだし、この程度のことは楽に(こな)してくれることだろう。


 問題は『WISH』の方だ。

 こいつらのデビュー時期はまだ未定。一応秋を予定しており、曲も作りはしたのだけど…。



 体力作りのためのジョギングから六人が帰って来た。

 5kmを1時間程度の時間で走るのだからランニングというよりもジョギングだ。

 BRAINは頭脳派といえど男ということもあってやはり余裕といった感じ。

 対するWISHの方は……。

 おい、なんでこの程度でぜぇぜぇ喘いでいるんだよ。中学生のレナやミナでさえここまで酷くはなかったっていうのに。


 六人に課したのはフェアリーテイルの時とほぼ同じメニューだ。

 早期のデビューを目論んでいるため、それより少しキツめかも知れないけど、女子中学生の(こな)せたことを高校生ができないなんてことはないはずだ。



 WISHの問題点は体力面だけではなかった。

 そっちの方はまだ鍛えればなんとでもなる話だが、こっちの方は難題だ。


「こら、お前ら、ちゃんと真面目にやらないか。それぞれの役割りについては説明したはずだろう。

 気持ちは解るけど、そう自己主張が強過ぎるとバランスが壊れるって何度言ったら解るんだよ」


 そう、こいつらには自己主張が強く協調性に欠けるという問題があったのだ。


「本当よっ。コーラスの人間がメインとなる人間の邪魔をするなんてあり得ないでしょ。

 脇役ってのはメインとなる人間を引き立てるのが役割りなんだから、そこのところちゃんと弁えときなさいよ、全く」


 メインパート担当の望が余勢を駆って他のふたりを非難する。


「なによ、偉そうに。あんたなんて偶々運でメインに選ばれただけじゃない」

「そうだよ。それに自分だけ目立とうなんてズル過ぎだよ」


 それに対し、ふたりの方だって負けてない。

 大人そうに見えたかなえは悪態を吐いているし、珠恵も普段の嬌態を忘れたかの如く、人目を気にせず不満を表す。


 初めて会った時は仲の好さげだった三人が、今ではこんな分裂状態。

 こんな不協和音を奏でてるようじゃ、とてもじゃないけど使えない。


 はあ……。これだから女の子ってやつは…。


 野心が必ずしも悪いこととは限らない。

 それはものごとの原動力であり上昇志向、ある種のやる気の表れともいえる。

 でもだからって……。


 これ、どうすりゃいいんだろう?



 その日、結論の出なかったなかったオレのしたことは、ただ、彼女達に注意を促し指導することだけだった。


 このままじゃまずい。

 なにか手を打つ必要性がある。

 しかしどうすれば……。


 一番なのは彼女達を追い込むことだろう。

 人というのはそれが必要とならない限り、己の意に反することはしないものだ。ならば必要となるようにしてやればよい。

 ただ、その状況ってのはプロジェクトの失敗であり、オレにとっても都合が悪い。


 では、次善の策は?

 ……なにかの褒美で以て釣る?

 一時的には効果があるかも知れないけれど、それはあくまで表向きだろう。加えてこちらの条件を無効化することを考えさせる分だけ効率も悪い。最悪ただでもっていかれるだけになりかねない。


 う~ん、難しい。

 なにか自然と彼女達が力を合わせようとなることってのはないものだろうか……。


          ▼


 オレは一晩考えた。

 苦悩の末に出したその結論は、結局のところ最初に考えたものだった。

 否、それともこれは次善の策の方になるのか?


 やることはただ今まで通りにするだけ。つまりはなにも変わらない。

 違うのはオレ自身の考え方。

 とはいってみても、やはりこれも従来通りの当たり前のことなのだけど。


 ベストを尽くし結果を出す。そうして信用を築くこと。

 それがオレの出した結論。

 結果さえ出ればそれに依存するようになるだろうし、過程として必要となればオレの指示にも従うだろうし仲良く……は無理でも協調 (※1)くらいはできるはず。

 同調 (※1)の強要だパワハラだと言われても、それでも仕事だやってもらう。

 まあ、本来は仲が好かったみたいだから、そんなことにはならないだろうと思うけど。



 よし、方針は決まった。

 それじゃあ後はがんばるだけだ。

※1『協調』とは『自分と異なる環境や立場の人や違う考え方を持つ人と協力して、同じ目標の達成に向けて行動すること』という意味。なので必ずしも仲好くする必要はない……のですが、無理があるならそれは『同調』らしいです。

『協調』とは『他者の意見も自分の意見も尊重し、その中からお互いが納得できる妥協案などを出したりする協力すること』であり、『同調』とは『自分に意見があってもそれを軸とせず周りに合わせることや、思考を停止させたまま周りに合わせること』らしいです。つまり『協力に際し主体性がある』のが『協調』、『無関心で主体性なく協力する』のが『同調』ということらしいです。[Google 参考]

『なんでもいいから周囲のいうことをきけ』なんて『周囲への忖度の強要』は『協調性』ではなく『同調圧力』なわけです。

 良い人間関係を築くには、やはりお互いに理解を深め、お互いを尊重し合えるよう努めることが大切ですよね。


※この後書き等にある蘊蓄は、あくまでも作者の(にわか)な知識と私見によるものであり、必ずしも正しいものであるとは限りません。ご注意ください。

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