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ドキッ! リトルキッスのプライベートな水着撮影会(後編)

 散々に(はしゃ)ぎ回ったあの後は、真面目な撮影会となった。

 否、真面目なっていうと正確にはなんか微妙に違う感じがあるけど、それでもそれまでのように意図的にふざけ戯れ回ってるわけじゃないんだから、やっぱり真面目ってことでいいんじゃないだろうか。

 まあ、泳ぐという美咲ちゃんの目的はまだ果たせてはないけど、それでもこれだけビーチで遊んだこともあってすっかりとご満悦といった様子だった。

 お陰でいい感じで撮影に移れたわけだ。


「ええっと…、こんな感じでいいのかな?」


 美咲ちゃんが腰に片手を当て気取ったようなポーズをとる。


「ねえ? どうかな、純くん」


 本人としてはセクシーポーズってつもりかも知れないけど、オレから見れば……。

 うん、どう見ても子どもが大人っぽさを真似ようと必死に背伸びしているようにしか見えないな。

 ただ、こんな風に評してみたけど、決してこれが悪いってわけじゃなく、却ってこの無邪気さが好ましい明るさを感じさせてくれる。

 よし、この表情をいただきだ。オレはカシャリとシャッターを切った。


「うん、いい感じ。やっぱり美咲ちゃんにはこういう天真爛漫さが一番だな」


「ええっ⁈ ちょっと、いきなりって酷いよっ。

 ちゃんと撮るなら撮るって言ってくれないと、心の準備ってのがあるんだからっ」


 オレのコメントを余所に、非難の声を上げる美咲ちゃん。

 もちろんこれは予想通り。


「ははっ、だって絶好のシャッターチャンスだったんだ、それを逃すなんてもったいないじゃないか」


 というわけでオレの方も言い訳を述べる。

 うん、あれは本当に可愛いらしかった。あれを余計な台詞で変えようなんてあり得ないよな。


「ふ~ん、そんな風に思ってたんだ。

 でも、そういうことはぼそりと零すように呟くんじゃなくって、ちゃんとはっきりと口にするべきじゃないかしら。

 そんなんだから周りからヘタレなんて言われるのよ」


 と、そんなオレにツッコミが。


「んなぁ⁈

 へ、変な聞き耳を立ててんじゃねえっ」


 これはいつもの如く今回も佐竹。

 でも、なんであれを聞き取れるんだよ。

 てか、あれって声に出てたんだ。

 くぅ~、こういうのって他人に聞かれるのは凄く恥ずかしいってのに。


「へ? なに? 純くん、他にもなにか言ってたの?」

「えっとね、純くんってば……」


「おいこらっ、やめろっ。余計なこと教えてんじゃねえっ。

 美咲ちゃんも訊こうとするんじゃねえっ」


 オレは周章ててふたりを制止しようとしたが……。

 くそっ、やはり無理だったか。美咲ちゃんの頬がにんまりと緩んでるし。


「ふ~ん、純くんってば、本当はそんな風に思ってくれてたんだ。

 あは、そっか、純くんってば、私の悩殺ポーズにイチコロ状態だったんだぁ」


 あ~あ、すっかり天狗になっちまった。調子に乗ってこんな小悪魔めいた台詞を吐いてくれてるし。

 まあ、こういうところも可愛いらしいとは思うけど…。

 でもこれって、大人の色気的な魅力ってよりは、子どもの純真無垢な好ましさの方なんだよな。

 余程こう指摘してやろうかとおもったけど、今回のところはやめておこう。なんてったって、今回はその手の撮影の都合って問題があるからな、気分を害するようなことを言うのは無しだ。

 ……うん、この借りを返すのは撮影が終わってから、それまでは我慢だ。

 くそっ、覚えてろよ、ふたりとも…。


「そんなことよりも次は純だ」


 オレはこの話はここまでとそうそうに話を切り替える。


 ……しかし、どうにもこの『純』って呼び方には慣れないな、オレと同じ名前だし。

 かといって本名の方で呼ぶわけにはいかないしなぁ…。

 いや、だったら名字の早乙女の方で呼べばよいってだけなんだけど、それもなんだか他人行儀というか距離感ができたと美咲ちゃんを心配させかねないし…。

 当初はオレ自身が早乙女純として活動していたから、慣れない名前で呼ばれるよりはと覚えやすい安直なものをってことでこの名前に決めたわけだけど、でも二代目に代替わりなんて考えてもいなかったからなあ…。

 そんなわけで、極力こいつを名前で呼ばないようにしてたわけだけど、今になってそれが祟ってきたってわけだ。


「え、えっと……、ねえ、これでいいのかしら」


 佐竹が怖々(おじおじ)と訊ねてきた。やはり佐竹もこういうことには不慣れらしい。

 って、今さらだけど、こうしてみると、あんなスケベな写真家(カメラマン)でも、あれこれと指示を出してくる存在ってのはやっぱり必要ってことみたいだ。とはいっても、それには限度があるのだが。


 因みに佐竹がとったポーズってのも、殆ど美咲ちゃんと同じ。両手を首の裏へと回し、髪を掻き上げるといったポーズだ。

 これってありがちなイメージだけど、意外と見かけないんだよなぁ。…って、いやまあ、実際がどうかは本当のところはよくは知らないんだけど…。

 ただ、言えることは……。


「いや、いろいろと角度だなんだと気にかけているところ悪いんだけど、あまりにぎこちなさ過ぎで不自然だ。

 多分だけど、変にあれこれと余計なことを考えずに、自然体でいけばいいんじゃないか?」


 うん、恐らくだけど気負い過ぎだ。まあ、緊張するってのはよく解るんじゃあるけどどな。


「そんなことを言われても、自然体ってどうしろってのよ。それにそんなこと言われても余計に緊張するだけなんだから」


 佐竹はそんな言葉通りで、よりいっそうに体勢が強張ってきて……。

 だめだこりゃ。これじゃ某モノマネ芸人のあの機械仕掛けの動きのネタだ。

 これは一旦仕切り直しが必要だな。


「仕方がない。ここは一旦休憩で気分転換だな」


 オレの一言に一気に脱力した佐竹は、傍らの椰子の木へと凭れかかった。


 カシャッ。


 丁度よい感じの自然さだったので、不意打ちでそれを撮らせてもらった。


「ちょっと、嘘っ⁈ 今のを撮ったの⁈」


 さすがの佐竹も狼狽し、そのあたふたと慌てふためくさまはあまりに間抜け。面白いのでこいつもカシャリといかせてもらう。


「えっ⁈ 嘘⁈ 今のまでっ⁈」


 もちろんこれらはきちんとしたものが撮れている。…はずだ。

 まだ確認はしていないけど、それでも撮ろうと構えて撮ったんだから、多分きっと大丈夫。


「あは、純ちゃんも不意打ちだ」


 美咲ちゃんが仲間ができたと喜色の笑みを浮かべる。

 そんな美咲ちゃんの笑顔も、やはり逃す手はないだろう。

 ってなわけで、これもカシャリと。


「えっ? 嘘っ?」


 ふっふっふ。油断は禁物だよ美咲ちゃん。

 今さら驚いてみたところで手遅れだ。



 と、こんなわけで、またもや不意打ちスタートだ。

 でも、これでふたりからは完全に硬さは取れたようで、その後の撮影は順調に進んでいった。

 もちろん今度は不意打ちなんかじゃなくって、ちゃんと普通の撮影だ。

 ただまあ、こんな感じの撮影なので、その内容ってのは当然和気藹々な様子の画像が殆どである。つまり色気よりも明るい健全さが主体ってわけだ。


 やはりリトルキッスのイメージってこっちだよな。

 本番の撮影もこんな感じであってほしいものだ。

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