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ドキッ! リトルキッスのプライベートな水着撮影会(前編) -ポロリは無いよ-

「全くあの子ったら、もう少しよく考えて目的に合った物を選べばいいのに。

 それは確かに紐のビキニは色気を演出できるけど、その分アクシデントに弱いっていう弱点が有ることをすっかりと忘れてるんだから。

 ましてやあんなぶかぶかなブラじゃ、水に浸かれば取れやすくなるに決まってるでしょうに。

 まあ、胸元がキツく締め付けられるよりはゆったりとしているほうが楽でいいのは解るんだけど、でもその場合は水の中に入るのは避けるべきで、ましてや泳いだりとかの激しい動きはもってのほか。

 なのになんでそんな大事なところが抜けてるだか」


 いきなりの長台詞をかましてくれたのは佐竹である。

 でもまあ、こうして呆れた台詞が出てくるのも無理はない。

 だってなあ…。


「まあ、あれだな。泳ぎたいってこと以上に可愛い水着を着たいって願望が勝ったってことだから。

 つまり美咲ちゃんも女の子だったってことだろ?」


 美咲ちゃんに呆れてるのはオレも一緒だが、それでも一応のフォローくらいはしておこう。

 こういうことに理解がない男だなんて思われたくはないからな。


「解ってるわよ。だからこそあの水着を着ること自体には反対しなかったのよ。

 泳いだりしない分には、恐らくは問題ないと思ったから」


 つまり泳ぐ前に止めるつもりだったってことか。

 ……って、あれ?


「なあ、もしかして、こうして着替えに戻ることも想定の内だったってことか?」


「なによ、今ごろ気付いたの?

 せっかく複数の水着を購入したんだもの、他の物も着てみたいって思ったって罰は当たらないでしょ」


 ははは…。なるほどな。

 つまり何度かの着替えは予定に入ってるってことか…。

 勘弁してくれよ。いくらなんでもそんなにいろいろと付き合わされるのはつらい。

 普通の男連中なら喜ぶところかも知れないけれど、オレにはそこまでの耐性ってのは無いんってんだ。


「お待たせ、純くん」


 そんな先のことにうんざりとしていたところに美咲ちゃんが戻ってきた。

 今回は小森さんも一緒だ。


「お帰り、美咲ちゃ……って、なんで小森さんが一緒なんだよっ⁈」


「なにを言ってるのよ。まさかあなた達の引率の私の存在を忘れたってわけ?」


 オレの疑問にしれっと応える小森さん。

 まあ確かに、さっきまでこの場に居なかったわけだから、途中でどこかに行ったものとばかり思ってたけど…。


「…って、そうじゃない。

 なんで小森さんまでそんな格好をしてんですかっ」


 そう、オレはそんなことを訊きたかったわけじゃないのだ。オレが訊きたかったのは、今の小森さんの格好についてだ。

 で、その小森さんの格好はというと、美咲ちゃんと同様の水着姿だったのだ。


 う~む、しかし、さすがは大人の女性だな。

 色気を醸し出すこの感じは佐竹でさえも及ばない。

 この水着、ワンピースではあるのだが、胸元の辺りからまるでビキニでもあるかのように首元まで二股に分かれている。確かプランジングとかいうタイプのやつだ。しかもこの部分ってまるで胸元から布地をめくりあげたかのようなやつで、それが絞ったかのように首のほうまで登っていき、そしてその後ろ側で結ばれている。

 つまりその絞られた感を強調する布地の皺と、そんな布地からはみ出しかけながらもはみ出していない胸元という演出…。


 くそっ、思わず見惚れてしまったじゃないか。オレは○っぱい好き人間ってわけじゃないはずなのに…。


 そして腰から下の部ぶぉわわわ⁈


「言葉と行動が合致してないわよっ。

 でも、いくら子どもだとはいっても、やっぱりあなたも男の子だったわけね」


 そう言うと小森さんは溜め息を吐いた。

 …って、そんなよりも…。


「い、痛い、痛いですってっ」


 先ほどの小森さんの水着審査?の途中から、突如右耳を(つま)まれ、そして現在捻上げるように上方に……って、痛い、痛いってばっ。


「全く。気持ちは解るけど、そんなに露骨にまじまじと見つめるんじゃないの。

 そういうことは彼女を作って、そしてその彼女を相手にやりなさい」


 一応解放はされたものの、続くのはお説教の言葉だった。

 ううっ…。御高説はごもっとも。返す言葉もございません。


「なんだ。やっぱり純くんって○っぱいが大好きなんじゃない」


 ぐぅ……、美咲ちゃんの言葉を否定できない。

 まさか、オレって本当にいっぱい大好き人間だったのか……。


「ま、まあ、そんなに落ち込むことはないわよ。これは男の子なら当然の感情なんだから。

 ましてや思春期の男の子ならば余計にそう。

 ただ、いき過ぎは問題ですけどね」


 小森さん、フォローの気持ちはありがたいんですが、女性にそれを言われるのってとっても複雑なんですけど。あと、序でとばかりに釘を刺すのも止めてください。殆どとどめと変わりません。


 ……って、ちょっと待て。なんか話が脱線してんじゃないだろうか。


「それよりも、なんで小森さんがそんな格好をしてんですか。

 話を逸らしても誤魔化されませんよ」


 うん、すっかり本題がそっちのけになりかけていた。


「だってこれって海水浴なんでしょ。だったら水着は必須じゃない。

 ……って、そうよ。せっかくの新調の水着だもの。だったら着る機会を逃すなんてできないでしょ」


 やっぱりか。そういやこの人もあの時、美咲ちゃん達と一緒になって水着をみてたもんなぁ。

 多分、今着てるのがあの時の水着だな。新調したとか言ってたし。


「あ、念のために言っておくけど、これはちゃんと自腹での購入だから」


 いや、当たり前だろ。なんでそれが経費で落ちるんだよ。


「はあ…。まあいいですけど。

 それよりも、そんなに楽しみにしていた水着なら、せっかくだしプライベートな撮影会でもやってみないか?」


「あら、それはいい考えじゃないかしら。いっそのことその写真を今回のグラビアにおまけとして付けるってのも案外面白いかも知れないわね」


 はは、小森さん、オレの意見に率先して賛成しているくれたかと思えばこんなことを言い出すとは。

 やはり代理でもマネージャーはマネージャーってことか。こういう面じゃしっかり強かだったりするようだ。


「じゃあ純くん、撮影の方はお願いね」


 どうやら美咲ちゃんは乗り気なようで、最早決定とばかりにオレを撮影役に任命だ。


「一応注意しておくけど、変な気は起こさないようにね」


 うん、佐竹の方にも異存は無しか。

 …って、それよりも、なんだよその変な気ってのは。


「当然だろ。オレ(ひと)をなんだと思ってんだよ、失礼な」


「「○っぱい星人」」


 なあっ⁈

 ……こ、こいつら…。

 いや、冗談なのは解ってる。そうでなければこんな役なんて任せてこようわけがない。

 解ってはいるけど…。

 くそっ、変なところで息を合わせてくれやがって。

 こうなったら、本当に変なやつを撮ってやろうか。

 まあ、もちろん倫理に反しないものをだが。


「なんだよ、そんなにそんな写真がいいってんなら、期待通りにそんなのばかりを撮ってやってもいいんだぞ。なんてったってカメラを握ってるのはオレなんだからな。ふっふっふ」


 もちろんこれは冗談だけど、あえてそんな風にカメラを構えて美咲ちゃんの方へと(にじ)り寄る。


「わ、わ、ごめんなさい。今のは嘘です、冗談だから。だからそんなのだけは絶対やめて」


 あ、念のため、先ほどからカメラなんて言ってるけれど、本職と違うオレ達が実際に写真機(カメラ)なんて持っていようわけがなく、そんなわけで使うのは多くの人間と同じで携帯通話機の写真機能だ。

 いや本当、写真機ってのは今じゃそういう趣味の人間か、またはそういう仕事をしてる人間くらいしか持っていないんじゃないだろうか。昔は結構なやつがもっといたらしいけど、今じゃ時代遅れの骨董品のイメージだもんな。


「はっはっは、待て待て待てぇ~。貴様のその胸元をオレに撮らせろぉ~」


 悪乗りしながら美咲ちゃんを追い回す。

 ははっ、ヤバい、なんだか楽しくなってきた。

 でも、もちろんこれは冗談で、本当に美咲ちゃんをどうこうなんてつもりはない。


「もう、咲ちゃんってば。そんなに(はしゃ)ぎ回るんなら、最初からそういう動きやすい水着を選べばよかったのに」


 目の前を通過した美咲ちゃんに、佐竹が呆れたばかりに溜め息を零す。

 そしてそんな佐竹の前をオレも通過し美咲ちゃんを追いかけ……ない。


「隙ありっ!」


 携帯通話機の写真機能がカシャリと起動音をたてた。

 オレの撮影した相手は佐竹だった。


「ええっ⁈」


 いきなりのことに驚きの声を上げているその姿からは、普段の冷静沈着さは失われており、なんとも滑稽なありさまだ。


「ふっふっふ。美咲ちゃんのことを他人事と決めつけて油断しているからそういうことになるのだよ」


 まあ、こんなことを言ってはみたが、走り回る途中からの急ターンでの撮影だ。まともな画像なんて十中八九撮れてなんていないだろう。つまりこれは内容の無い、悪戯紛いの撮影だ。


「ふっふっふ。そういうことだよ純ちゃん。油断は大敵なんだからね」


 美咲ちゃんも足を止め、そしてオレの台詞へと続く。


 カシャリ!


「ふっふっふ~。そういう美咲ちゃんも隙ありだ。

 今の姿、しっかりとカメラに収めさせてもらったぜ」


 佐竹のことですっかりと逃げることを忘れた美咲ちゃんの写真もいただきだ。

 とは言っても、これからも先ほどの姿勢から急激に上半身を捻ってからだったので、やはり画像はぶれまくって(ぼや)けていることだろう。


「えっ? 嘘? ズルいよ純くんっ。

 今のはナシ。やりなおしだよっ」


 いや、そんなこと言われても、もうカメラは起動したあとだからなあ。


「なによ、この子達にも案外子どもらしいところがあるんじゃない」


 小森さんがオレ達の燥ぐ様子に脱力する。


 カシャリ!


「この際、序でなんで小森さんも撮らせてもらいますね。

 まあ、せっかくの水着姿なんですし、仲間外れってのも悪いでしょ?」


 当然これも、今のふたりの時と同じである。

 まあなんだ、オレの耳を捻ってくれたことに対する意趣返しってところだな。


「ちょ、ちょっと、なんでっ⁈

 私の写真なんて全く関係は無いでしょ⁈」


 意外なことに、なぜか狼狽しまくる小森さん。

 悪ふざけの冗談って解ってるはずなのになんで?

 …しかし大の大人ってやつが、まさかここまで落ち着きを失おうとはな。

 う~ん、なんとも面白い。


「あ、でもこっちはおまけなんですし、さらにおまけの追加ってのも意外とアリかも知れませんよ」


 あまりに面白いので、さらに揶揄してみたくなる。


「あ、それ賛成。たとえおまけの方だけだとしても、小森さんも一緒なら私達だけってよりも恥ずかしさが紛れるかも知れないし」


 うわぁ…。美咲ちゃんってば、さらりと巻き添えを強要してるし。

 しかもこれって、小森さんには立場的に断りづらい要求だよな。代理とはいえ、一応はこのふたりのマネージャーなんだし。


「そうですよね。せっかくの水着なんですし、大勢の人達に披露されてみるのもいいかも知れませんね。きっといろんな感想が聞けますよ」


 うはぁ…、佐竹、お前もか…。


 まあふたりとも、望んで受けた仕事じゃないんだし結構いろいろと不満が溜まっているってことか…。


「ううぅっ。だったらせめてこの水着、経費で落としてもらえるよう一緒に頼んでもらえませんか」


 そんなわけで、小森さんも退路無しと観念したようだ。

 ただ、こんな要求をしてくるあたりは強かだ。あまり同情する必要は無いだろう。

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