ソングライターのひとりごと -若きJUNの悩み-
オレは頭を悩ませていた。
どうしてこうなった。
いや、本当は解っている。
オレが周囲に流されただけだ。
『早乙女純』のことは、契約の盲点を突かれてのことだったが、今では一応受け入れている。
全く問題がないわけじゃないけど、リトルキッスのデビュー後の人気が定着したことで、こちらの要望が多少ばかりだが通るようになったからだ。
但し、無条件でというわけじゃなく、ソングライター『JUN』として、リトルキッスを支えてほしいとの要請を受けたのだが。
今までオレの作った曲は、リトルキッスの3曲、長谷川千鶴の『恋愛中毒』、ついでに演歌『恋花火』、そして最近、SUCCESSに『Guardian of the garden』という曲を作っただけだ。
最後のSUCCESSの『Guardian of the garden』だが、まぁ、これはあれだ。
この前のドラマ収録の際、その影響を受け、つい作ってしまった曲を、隆さんに渡したものだ。もちろん、渡したのが早乙女純なのは言うまでもないだろう。
そしてこの曲は聖さんに渡り、SUCCESSの曲として採用されたというわけだ。
なお、この曲、番組用のテーマ曲として作ったものと勘違いされたため、聖さんから制作会社の手に渡り、主題歌として採用されている。
で、上記の曲のうち、リトルキッスの3曲に、千鶴さんの曲がヒットという実績から、こういう話となったわけだ。
要するに、有望な若者を確保したいという青田買いである。
こういった経緯を経て、オレはリトルキッス専属非常勤ソングライターとなったのだった。
大事なことなのでもう一度、“専属”で“非常勤”なのだ。
如何に結果が出ていると言っても、それでもオレは初心者だ。結果は“出た”のであって“出した”のではない。
そんなオレに過度な期待をされても困るのだ。
そういうわけだから、“専属”で“非常勤”なのだ。
あと、面倒だからという理由もあるのだが。
実際のところ、リトルキッスにオレの曲が必要かというと…………あるのか?
聖さんは、数多くのヒット曲をうち所属の歌手達に、ジャンルを問わず幅広く提供しているというのだが、実はスランプもいささか多く、結構浮き沈みもあったりするのだ。
例えば、オレ達のデビュー曲になるはずだった、千鶴さんの『恋するトワイライト』
全く売れないなんてことはなかったのだが、期待した程ではなかったらしい。
オレとしても、当時は癪で、自分で曲を作ったわけだが、今では結果的には良かったと思っている。
だって、オレ達のユニット名は曲名から採ったもののため、その曲だった場合、ユニット名は『トワイライト』となっていた可能性が高い。
『トワイライト』つまり“黄昏”だ。
正直、縁起でもないと思う。
その曲がヒットしなかったのもそのせいか?
オレ達の曲にも、そういうのはある。
『教えてTeach me Love』『Little Angel』といった曲だが、やたら恥ずかしいばかりで、大してヒットはしなかった。
できればやりたくない曲だったので、オレとしては幸いだったのかもしれない。
そんなわけで、オレは予備戦力となることを受け入れたのだった。
とはいえ、一応、引き受けたからには、無責任ではいられないわけで、現在、聖さんの助言を受けながら曲制作を行なうこととなっている。
まぁ、実際には、気が向いた時に作った曲を、評てもらいにいってるだけなんだけど。
ともかく、そういったわけで、オレは今日も曲作りに頭を悩ませるのだった。




