早乙女純、佐竹に面会する
読者の皆様のお陰で、9月もまた月別PV、及びユニーク数の自己記録を更新できました。PVのほうは3ヶ月連続の更新で、ユニークのほうも3ヶ月連続の1000人超えです。
低い頂き? 構いません。こういうものは他人と比べるよりも過去の自分と競べるべきものでしょうから。
負惜しみが無いとは言えませんが、他者の記録は比較するのがあほらしくなるほど凄いですから、そんな烏滸がましいことなんて考えません。いや、本当に他の投稿者の方達って凄いですよね。
まあ、それはともかく、ここまで読んでくださいました読者様方には感謝です。よろしければこれからもご愛読いただければ幸いです。
見つけた。
まさかの遭遇だった。
それは運命的出逢いだった。
まあ、オレにとっては希望だが、相手にとっては迷惑な話。絶望と嘆かれても仕方が無いだろう。
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さて、どうしたものだろうか。
始業式の翌日。オレは早くも新たなる問題を抱えていた。
「な、な、な、なんであなたがここに在るのよっ、早乙女純っ!」
想像通りこの台詞を放ったのは香織ちゃん。
いや、まあ当然ふたりが顔を合わせれば、こうなることはもう火を覩るまでも無く明確。
「人違いよ」
そして返事がこうであることもまた明白。
「香織ちゃん、信じられないかも知れないけど、今、佐竹さんの説った通りの別人だよ」
美咲ちゃんがこうして香織ちゃんに説明するのも…。
「そうそう、本当吃驚したんだから」
「でも、ふたりが別人だって始めから気づいてたのって男鹿だけなんだよねえ」
「うん、伊達にデビュー前からのファンはしてないってことよね」
それに普段はこう謂う噂話には自分から参加しない由希も……ってこっちは予想外だよっ。
まあ、朝日奈と向日に関してはまあ想定の範囲内ではあるけれど。
「あ、そう言えば、男鹿くんと純ちゃんって付き合ってるって噂が有るんだっけ。こう謂う話を聞くと納得だよね」
うおぉい、まさかとは思ってたけど果然りか斑目っ!
「えっ⁈ 男鹿くんって早乙女純とそう謂う関係だったの?」
ちっ、佐竹に勘違いされちまったじゃないか。
「そんな関係じゃねえよ。ただの古くからの付き合いってだけだ」
いや、そんな勘違いをしてるのは佐竹だけってわけじゃないんだけどな。
因みにこの噂の発端は恐らくは美咲ちゃんだ。
で、仲間内で唯一オレが早乙女純の正体を知ってるってことがそのことに信憑性を与えることになってるだよなぁ。だからってこいつらにまで早乙女純の正体を教えるなんてわけにはいかないし…。
「あ、でも、佐竹との違いを鑑わけた方法ってのが知られたら、その関係ってのもヤバいかもな」
は、問題ねえよ。オレがその早乙女純なんだから。
まあ、今の河合や他の連中がそんなことを知る由も無いんだけどな。
「あ、それは確かに不味いよね。だってその方法ってのが胸の大きさってんだから」
だからって、余計なこと拡っても可いってわけじゃないんだけどな。
もちろんこの空気を壊すような台詞の主は斑目だ。
「ぷっ……くくく……。はあっはははっ。
なによ、それ。でも摘われて考れば確かにその通りだわ。
しかもそれを指摘したのが純くんなんて。
こんな笑える話って草々に無いわよ。
ふっ、ざまを覿なさい、早乙女純!
って、この場にあの子が在ないのが残念だわ」
ちょっと香織ちゃん、佐竹が怯いてるんだけど。
うん、今確実にひとり香織ちゃんファンが減ったと思って間違い無いな。
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数日後の放課後。オレは佐竹の元を訪ねることにした。……早乙女純として。
いや、なんでって思うかもしれないけれど、オレの目的なんて少し考えれば、まあ殆ど一つと断言して間違い無いんだけど、要するに佐竹のスカウトだ。二代目早乙女純としての。
いや、だって当然だろ。オレの目の前に本物以上の本物が現れたんだぞ。これを放っておく手なんて絶対に無いだろ?
てな理由で、早速佐竹の元へと突撃だ。
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「あんたが佐竹って子だよな」
いや、解ってはいるんだけどそれでも問う。
だって早乙女純としては、佐竹と会うのは初めてってのことになるのだから。
「おおっ⁈ あれが本物の早乙女純か」
「でも、なにしにこんなところまで?」
「そりゃあ、花房咲に用が有ってだろ」
「馬鹿、なにを聞いてたんだよ。
言ってただろ。目の前の佐竹って子に用が有るって」
と、こんな風に周囲の視線に晒されているからってのも有る。
まあ、そのことに関しては敢えて人目に触れるようにして出向いて来たからなんだけど。
一応オレと佐竹とは別人物であることを周囲に印象付ける必要性を感じたからだ。
「でも、本物によく似ているよな。まるで双子か鏡合わせだ」
で、このオレの思惑通りに事は展開しつつある。
「あ、でも判然り解る違いが有るって聞いたぞ。
ほら、あの胸元。小さい方が本物の早乙女純だ」
でも、この一言は余計だ。
「って、おい、お前らっ。聞こえてるぞっ!
全く、失礼なこと摘いやがって」
いや、実際は失礼とかそんな風に思ってなんて無いんだけど。
まあ、そこはイメージって奴だな。一応は非礼な発言なわけだし、それなりのパフォーマンスってやつは必要だ。
まあ、それよりもだ…。
「もしかして、早乙女…純…?
なんで? 私に?」
うん、そりゃあ戸惑うか。まさか自分に縁の無い人間がいきなり訪ねて来るなんて思わないもんな。
「そりゃあ用が有るからに決まってんだろ。
…ってその理由を訊いてるんだよな。
まあ、まずは話に聞くオレの上位互換?ってのを拝みに、かな?
詳しい話はここじゃなんなんで場所を変えて、だな。こんな野次馬だらけのところじゃ都合が悪い話だし。
で、都合の方は大丈夫か?」
と謂うわけで、オレは早乙女純として佐竹との対面に臨むのだった。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




