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純、ホワイトデーのお返しに悩む

 ホワイトデーのお返しの品の意味合いについてはいろいろな意見が有るようで、一概にどうとは言えません。今回の作中の内容は飽くまでそれらの一つに過ぎませんので精々参考程度ってことで。

 でも、みんな難しく考え過ぎて泥沼にはまってるだけのような気が…。

「あとは本命の純ちゃんね」


 みさ姉の復活後、再びいろいろとあれこれ()(まわ)りフェアリーテイルや美咲ちゃん、あと(つい)でに由希達クラスの親しい奴らにと選んでいき、残すは本命チョコをくれた香織ちゃんだけとなったわけだが、そのことを知らないみさ姉は、早乙女純を本命の主だと思い込んでいるようだ。

 なお面倒なことになりそうなので、その誤解を解くようなことはしない。もちろん肯定もしないけどな。


「でも、本命をくれた相手ってどんなの渡せば()いんだろうな。

 オレとしてはそう謂う付き合いをするつもりは無く、ただ友人として付き合えればと思ってるんだけど」


「う~ん、確かあの子って甘いお菓子が好きなんでしょ? だったらそう謂うものを別にあげたら良いんじゃない?

 例えば……バームクーヘンとか!

 あれって確か、いくつもの層が重なる姿を時間を積み重ねる作ることに因んで『幸せな時間を一緒に重ねていこう』って意味合いが有るって聞いたことが有るのよね。だからとっても良いんじゃない?」


 へえ~。なるほどな。じゃあこれは除外。

 そんなヤバい意味の有る物を贈るわけにはいかないからな。


「ふ~ん、他には?」


 他にもそう謂うのが有るのなら是非とも知っておかないと。


「じゃあ……マカロンとかは?

 これは『あなたは特別な存在』って意味……だったかしら」


「へえ~、他には?」


「う~ん、じゃあマドレーヌは?

 これは『あなたともっと仲良くなりたい、特別な関係を築きたい』って意味ね。

 あれって二枚の貝が重なったような形でしょ。それが親密さや円満な関係を連想させるってことみたいよ」


「ほうほう」


「あと、キャラメルが『一緒にいると安心できる』で、金平糖が素直に『あなたのことが好き』『長く甘い関係でいたい』だったかしら。

 本命相手のお菓子って大体こんなものだったはずよ」


 はあ~、なんともいろいろと有るもんだな。


「で、念のため避けた方が好いものは?」


 うん、こっちの方も知っておきたい。てよりこっちの方が本命か。


「う~ん、お菓子自体にそこまで考える必要性は無いみたいだけど、それでもって避けられてる物も有るには有るわね」


 あ、果然(やっぱ)り有るんだ。


「クッキーはサクサクって擬音から『友達でいよう』って意味合いの定番だし、ホワイトチョコも『嫌いじゃないけど今まで通りの友達で』って意味合いだって聞いたことが有るわね。確か白って色が純粋さをイメージさせるため『清い関係でいよう』ってことになるらしわ」


 おおっ! ホワイトチョコかっ!

 確かにこれがオレの求める関係だな。


「あとは、普通のチョコレートが『あなたの気持ちは受け取れません。お返しします』ってことになるらしいわね」


 うん、これは解る。つまり想いを突き返すってことだな。


「あとは、同じ拒否だけど、マシュマロが『あなたとは長続きしない』で、グミが『あなたのことが嫌い』。これだと酷い扱いしてることになるので要注意ね」


 あ、グミの方は知ってる。リル・ニトロを贈ってやろうかと思った相手がいるくらいだし。

 でもこれだと遣るが殺るになるんだよな。てか、海外から取り寄せだから、面倒で実行することは無いな。


「あ、あと思ったんだけど、ウケ狙いでパイなんてのも面白いかも」


「3月14日だからか? 円周率じゃないっての」


「なんだ、知ってたの」


「ああ、去年兄貴がそのネタをやったらしいからな。

 そこで止めときゃ良かったのに、おっ○いのぱいだなんて()い出して周りの女性の顰蹙(ひんしゅく)を買ったらしいぜ」


「ちょっと、なによあの下品男。馬鹿じゃない」


 全くだ。でも男連中にはウケたらしいんだよなあ。

 オレはそんな風にはならないように気をつけよう。


「う~ん、でも食べ物っても場合によっては微妙かもね」


 ん? どう謂うことだ?


「いやね、果然(やっぱ)り女の子って体型とか気にするでしょ?

 特に本命の男の子の前だと余計にそう。

 甘くて美味しいお菓子は嬉しいけど、でもその誘惑に負けるとって葛藤が有るのよ」


 ふ~ん、なるほどね。


「まあ、でも純ちゃんの場合は大丈夫よね。

 あの子結構スレンダーだし、もう少しその…、まあアレなわけよ」


 いや、まあ確かにな。

 でも、それは仕方が無いだろう。なんてったって正体が男なんだから、出るところなんて出るわけがない。


「んっんんっん。

 でだけど、それ以外に普通にプレゼントってなると……マグカップ……は無いわね。これって同棲したいみたいな意味に取られかねないし。

 それじゃ指輪……も微妙か。

 確かに贈られると嬉しいかもしれないけど、でもこれって婚約だとか、そんな重さも有る物だから結構注意がいるのよね。

 ねえ、もしかして、もうそれだけの覚悟って有ったりする? それなら止めないしお奨め (※1)だけど」


 なんだよそれ。そんな重たい物ばかり挙げてどうするんだよ。

 しかも指輪がお奨めって、そこはお薦め (※1)の間違いだろっ。勝手に話を進めるんじゃないって。


「まあ、(さすが)にそれは()くわよね。指輪だなんて重過ぎるもの。

 でも、それならネックレスとかブレスレットなんてどう? これならそこまでじゃないでしょ?」


 いや、十分重いって。

 そりゃあ指輪に比べれば全然だけど、それでも鎖物って束縛のイメージが有るじゃないか。独占欲の表れなんて、そんな風に思われるなんて冗談じゃない。

 うん、金属系は絶対無しだ。


「それじゃあ、あとは花とか……」


「パスっ。オレ花言葉とか解んないし。

 それに(しお)れればただのゴミだろ。

 そんな扱いに困るような物は無し」


「なによ、(ひと)がせっかく相談に乗ってあげてるのに」


「ああ、ごめん。悪かったな」


 うん、せっかく相談に乗ってくれてるのに、ちょっとこれは無かったか。


「う~んでも、よく聞くところじゃこんなものじゃないかしら」


 う~ん、そっか。

 じゃあこれらの中からってことになるのか?

 っても今話の内容って殆どお菓子の話だし…、つまりそこから選ぶのか?


「なあ、もしもみさ姉がオレの立場だったら何を選ぶ?」


 参考までに訊いて()よう。もしかすると良案が浮かぶかも知れない。


「え? なに? 何かくれるの?」


「やらねえよ。だって貰う物貰ってないだろ」


 なんて強欲な奴なんだよ。


「男のくせにケチよねえ。

 でもまあ、確かに純の()う通り、何もあげてないもんね。

 それで、何が好いかって話よね。

 う~ん、私は春の新作のバックが欲しいかな」


「いや、みさ姉の欲しい物を訊いてるわけじゃないだろ」


 てか、やらないって返事に納得してくれたんじゃなかったのかよ。


「でも、こう謂うのもプレゼントの定番よ。ちょっと値は張るけれど、本命だったらこれくらいどうってことは無いでしょ。ここは男の甲斐性の見せ所よ」


 むむ、確かにそれはその通りか。


「でも、ひとつ肝心なこと忘れてるぞ。

 オレはまだ高校生なんだからそんな金なんて無いっての。もう少し年齢に相当(みあ)ったことを()えっての」


 まあ、そうは()ったものの、実はその程度の予算は余裕で有るのだが。

 中学卒業後、契約の見直しと、見習いといえプロデューサーの仕事をするようになったことのふたつの理由により、最近は結構収入ができているのだ。

 いや、以前もそれなりに有りはしたけれど、それでも所詮は義務教育の子供だしな。

  果然(やは)り15歳未満の児童と義務教育終了後の満15歳以上~18歳未満の年少者とは違いが出てくるってことだな。基本的に児童の労働には厳しい制限が有るから。

 まあ、これ以上の話は難しくなるし今はどうでも()いから切り上げるとして。


「う~ん、でもバックかあ…。

 確かに身近な日用品だろうし、でも結構値の張る物って貰う相手も気を遣うものだしなあ…。

 じゃあ、化粧品とかか?

 それならオレ達みたいな学生だって手の届く物も多いしなあ」


「へえ、なかなか良いところに目を付けるじゃない。

 女の子だったらそう謂うのって嬉しいわよね。

 きっと貰った翌日とかには、早速それでお(めか)しして現れたりするんじゃない?」


「あ、ダメだ」


 みさ姉は絶賛するけれど、でも肝心なことを忘れてた。


「なんでよ?

 女の子って好きな男の子の前でオシャレした姿を見せたいものなのよ。

 それで褒めてもらえれば、もうそれだけで幸せだってのに、なんでそれを否定するようなことを言うのよ?」


 え? みさ姉、それって本気で謂っているのか?


「いや、それってオレなんかよりも、女性のみさ姉の方が解るんじゃねえの?

 化粧品ってのは人によって合う合わないってのが有るもんだろ?

 変にオレに気を遣って合わない化粧品で肌を傷めたりしたら、それこそ申し訳無いじゃないか」


 いや、以前ならそんなこと考えたことも無かったけど、オレも早乙女純として多少はそう謂うことをするようになったからな。

 そんな理由でオレにも多少の拘りや理解は有るのだ。なんとも不本意ではあるけどな。


「意外ねえ、男の純にそんな理解が有るなんて。

 ねえ、純って本当はそっちの趣味が有るんじゃない?」


「ねえよっ!」


 全く、なんてことを吐戯(ほざ)いてくれる。

 ちょっと女性に理解を示しただけでこれって、幾らなんでも(あんま)りだろ。


「全く、もうみさ姉には相談しねえ。あとは自分で考える」



 と、ここでみさ姉を置いて行ければ好かったのだが、そう謂うわけにはいかないんだよなあ。だってまだみさ姉にはこの辺りの土地勘は無いんだし。



 後日オレは、改めて香織ちゃんのプレゼントを探し直すことにしたのだった。

※1『おすすめ』という言葉ですが、三種類も有って紛らわしい思いをよくします。

 そんなわけで例によりGoogleの出番となりました。

【お勧め】勧誘です。一緒にやりましょう。

【お奨め】奨励です。がんばってください。

【お薦め】推薦です。これなんていかがですか?

 言葉の使い分けというのは熟語に直すと覚え易いそうです。


※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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