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Like a Phoenix?

 今回のサブタイトル『Like a Phoenix?』とは『不死鳥の如く?』もしくは『不死鳥はお好き?』って意味です。

 どちらの意味合いでとってくれても構いません。

 なお、ネタバレになりますが、結果的には「やっちまった」ってことになります。

 今回のサブタイトルは、それを読者の方がどのように評価するかのたとえですね。

「で、馬鹿な冗談は抜きにするとして、それでどうするつもりなわけ?」


 改めてみさ姉が訊ねてきた。


「そうだよなあ…。

 クラスの奴らは除外するとして、まずはフェアリーのふたりか…」


 あと、千鶴さんと如月姉妹。

 でも、こっちの方は何を欲しているかはまあ解ってるので問題無い。

 否、問題無いって謂ったら正確には違うのだが、だって彼女らの欲する相手は男鹿純(オレ)じゃなくって『JUN』の方なんだから。

 実際、結構する物を贈り付けられてしまったしな。

 一層キャンディではなくグミでも贈ってやろうか。確か「アナタが嫌いです」ってストレートな意味合いが有るって聞いたような気がするし。

『リル・ニトロ』なんて面白いかも。900万SHU(スコヴィル)の辛さを誇る頭の可怪しいお菓子だもんな。発狂すること間違い無しだ。

 まあ、冗談はともかく、素直に曲を作ってやることにしよう。一応約束……ってわけじゃないけど、多少の義理は有るからな。


 で、先程のフェアリーテイルだけど……。


「実用的なところでハンカチとか?」


 まあ、この辺が無難なところだろうな。


「アウトっ!」


 へ⁈ なんで?


「ハンカチってのは「あなたと別れたい」って意味合いが有るのよっ!

 もし貰った子がそれを知ってたなら、気を悪くするわよっ」


 マジ? ハンカチってそんな意味が有ったの?

 まあ、確かにハンカチって、涙を(ぬぐ)うものだしな。そこから別れを連想させるってことかな。

 全く、暗喩だなんだって本当面倒臭い話だよな。


「それよりも今の「フェアリーのふたり」って、もしかしてあの『フェアリーテイル』のこと⁈」


 ああ、そう謂やみさ姉は知らないんだったよな。


「まあな。ミナとレナのふたりはリトルの妹分ってだけでなく、オレ達の通ってた中学の後輩にも当たるからな。そんな理由で少なからず縁が有るんだよ」


 正しくはあいつらはオレ達の卒業後に転入して来たみたいだから、学校の後輩ってのは微妙な気もするのだけど、別に可怪しくは……ないよな?


「なによそれ。なんであんたばっかりっ。

 狡いわよっ。なんでよ、私にはそんな偶然(イベント)なんて起きてくれないってのにっ!」


 そんな風に責められてもなあ…。


「そう謂う恨み言はオレじゃなく神様にしてくれよ、オレの責任じゃないんだから」


 この分じゃ、香織ちゃんに求愛されてるなんて知ったりしたらどんな反応になるんだか…。


「……まあ、そうよね。あんたに愚痴ったって仕方が無いものね。

 それに私だってリトルキッスのふたりに御堂(れい)って謂うトップアイドル三人と知り合いなんだし、他の子と比べればまだ十分機会(チャンス)は有るわよねっ」


 おい、みさ姉⁈ それってもしかしてまだコネによるデビューとか考えてるってことか?

 まあ外見(みてくれ)はオレの従姉妹なんだし、そんなに問題は無いけれど、でもそれだけでなんとかなるほど芸能界って生易しいものじゃないんだぞ。


「なあ、みさ姉。なんか物事簡単そうに考えてるみたいだけど、現実ってのはそんな容易にはいくものじゃないんだぞ。

 実際、美咲ちゃんはああ()えて随分と努力しているし、その妹分のフェアリーテイルのふたりだって同じだ」


「それくらい()われなくったって解ってるわよっ」


 オレの言葉に反論するみさ姉。

 ならば、あれも教えてやるか。


「さて、どうかな。じゃあこれならどうだ。

 実はあの『フェアリーテイル』って名前の由来なんだけどな――」


「はあっ⁈ 嘘でしょ?

 もしそれが本当の話なら、そのプロデューサーって相当性格悪いわよっ」


 フェアリーテイルのこの一年について、問題の無い程度で語り聴かせた。

 でその後がこの、みさ姉の反応ってわけである。

 悪かったな。オレがそのプロデューサーなんだよ。


「まあそんなわけで求められるものは厳しいし、なったらなったで随分と大変ってわけだな。

 実際、フェアリーテイルと同期デビューのサンダーバードなんて、最近(ようや)く名が知られ始めたってとこだしな。

 今人気の加藤香織だって最初の一年は鳴かず飛ばずだったみたいだし、皆苦労をしてんだよ」


「でも、私だって……」


 それでもまだ、抗弁しようとするのでそれを遮るように続けて諭す。と謂うかトドメの一言で釘を刺す。


「確かにみさ姉もがんばってるんだろうけど、それでも全然足りないんだよ。もし本当に足りてるってんなら、そんな奴周囲が放っとくわけが無いもんな。

 実例としては御堂(れい)か。あいつは確かに一俔(いっけん)見た目だけだけど、でもそれが間違いなのはそのデビュー後を考えればよく解るってものだろう。

 確かに元々の才能も有るけど、いろいろと努力だってしてるからな。実際、剣道部とか演劇部とかそんなところに顔出ししてるって話だし」


 …ちょっと一言に収まらなかったか。でも、これで理解はしてくれるはず。


「で、でも私だって…」


「足りないんだろ。現実を前にそんなこと()ったところで精々が笑い話にしかならないってことだな」


「……………………」


 沈黙したか。つまり今度こそ理解し受け容れたってことだな。

 ってか、おい、なにも泣かなくったって…。


「ま、まあ、それでもがんばり次第ではなんとかならないわけじゃないし。

 ほら、あの兄貴でさえプロデビューしてるわけだしさ。

 それにみさ姉だって、これから大学でそう謂うことを勉強していくんだろ?

 つまりまだこれからってことなわけだからさ」


 ……オレ、なにをやってるんだろう。

 トドメを刺したはずなのに、今度は蘇生ってか?


「うん、そうだよね。

 夢は信じればいつかは叶う。

 未来は決して夢を裏切らないもんね」


 あ、復活した。

 しかもこれ、どこかで聞いたような台詞だし。



 それにしても、人の説得って結構難しいもんなんだな……。

※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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