ソレが何かは指摘しないでください
祝200回!
というわけなのですが、自分で自分を祝うのもなんかアレですよね。
いや、別に祝ってほしいとかじゃありません。そんな烏滸がましいことを言うつもりでは…。
まあ、それでも祝ってもらえれば当然嬉しいのではありますが。
さて、そんな区切りの良い記念するべき(?)回なのですが、今回の話は下ネタです。特に女性に嫌われるネタだったりします。
「お前、なに考えてるんだよ!」と責められても仕方がないのですが、まあ、やっちゃったことは仕方がないと笑ってもらえれば幸いです。
「ちょっと、なによ、この、もの凄い量のキャンディはっ」
なにって、これらはホワイトデーだからと今年も大量にリトルキッスへと送られて来たキャンディ『リトルキッス』の山である。
でも、なんでだろうな。1st.アルバムの時みたいに大量にチョコを散撒いたってわけじゃないのに、何故か翌年以降もこうして届いてくるんだよな。これってもう、ホワイトデーってのはただの口実なんじゃないの?
まあ、今年は美咲ちゃん達とチョコを作ったため、それなりに配りはしたけれど。例えば海堂を始めとする高校野球の時に知り合った奴らとか。あとは例年の如く仕事の関係者くらいか。
うん、果然りこれって、間違い無くただの口実だな。だって今述った奴ら以外に配ってなんていないんだから、他に贈られる覚えは皆無だ。恐らくは昭和製菓の企画ってところだろうな。
「これらはホワイトデーのお返しだよ。
まあ、これでもオレは結構モテるんでな。だからこうして大量に用意する必要が有るってわけだ」
オレはこの疑問の台詞の主である従姉妹の男鹿操へとそう応えた。
実はまだみさ姉は我が家に住んでいたりする。
引っ越し先が決まらなかったってわけじゃない。ちゃんとこの前の葉さんの知り合いの紹介してくれた所へと決定している。ただ、何故かそこへ引っ越すまでは我が家にそのままってことになってるみたいなんだよな…。いや、本当何故なんだよ。
「ふ~ん、お返しねえ……。
依然り純って男の子にモテるんだ。そんなにいっぱいお返しのキャンディ貰ってるなんて凄いよね。私も肖りたいものだわ」
「おいっ! なんでオレが貰ったことになってんだよっ。オレは男なんだからそんなわけ無いだろっ!
頭の中腐って、変な虫でも湧いてるんじゃないか? この腐女子めがっ!」
なんでそんな風になるんだよっ。普通、男がホワイトデーにお返しのキャンディって謂えば、貰う側じゃなく返す側だろうがっ。
「え~っ、でも純って昔っから、女の子みたいに可愛かったから、今でも男の子に結構モテてるんじゃないの?」
いや、実際は確かにその通りなんだけど、でも、それは早乙女純であって男鹿純じゃない。
「いや、本当男の娘の素質十分よね。なんか嫉妬するわ」
そう言いながら、オレのことをじろじろと覩回す、否、鑑回す?
とにかくそんな目でオレを観察するみさ姉。
まさか『矚望 』の『矚る』じゃないだろうな。つまり、今のは『男の子』じゃなく『男の娘』ってことで…。
うん、嫉妬とか零してたし有りそうだ。でなけりゃ男に嫉妬なんて起り得ないしな。
「そう謂う質の悪い冗談は止めてくれ。
本当は解ってるんだろ。これはオレが返すためのキャンディだよ」
「へ~、意外ね。
でも、幾ら義理って謂ってもこんなに返す相手って在るものなの?
ひとり当たり2~3個にしてもこの分量は買い過ぎでしょ⁈」
まあ、そうなんだよなあ…。
「ちょっとわけありでな。それでこんな分量になってしまったんだよなあ…」
その理由ってのは説明するわけにはいかないけど。
「なに? もしかして本当に男の子から貰った物なわけ?」
「んなわけねえだろっ。いつまで引っ張ってんだよ、それ」
お陰でこんな羽目になるし。
「で、冗談抜きでこんなにいっぱいどうする気なわけ?」
「ある程度配る分量を分けたら、残りは天堂にでも譲ることにするよ。あいつならこんだけ有ってもきっと困らないだろうからな」
まあこれは毎年のことなんだけどな。
以前、自分だけでなんとかしようとしてそれで苦労したからなあ…。
「確かその天堂って子、あの御堂玲のことよね?
え? なに? 純ってば、あの子とそう謂う関係だったの⁈」
「どう謂う関係だよっ!
まさかまた変なこと戯い出すつもりじゃないだろうな?
解ってるとは思うけど、あれはただの友人だっての」
「ホモダチ?」
「ト・モ・ダ・チっ!
腐ったこと吐戯いてんじゃねえよ、全く」
勘弁してくれよ、全く。オレは道化キャラじゃないってんだ。
▼
やって来たのは、とある有名百貨店。
バレンタインの時と同じフレーズだけど今日は早乙女純としてでなく、普通に男鹿純本人としてだ。
そしてオレの隣にはみさ姉が。
オレがホワイトデーでチョコのお返しの話をしたせいだろう、親しい相手にキャンディだけってのは無いと、オレの助言者として連いてきてくれたってわけである。…別に頼んだわけじゃないのに。
まあ、それでもオレはこう謂うことには疎いって自覚は有るので、それならばと受け容れることにしたわけだ。
「で、純はどんな物を考えてるわけ?」
みさ姉が早速とオレに問い掛けてくるけど、何が宜いかなんて解らないのは先程も述べた通りである。
「取り敢えずは貰って邪魔にならない物かなあ。
それが実用品ならなお好しなんじゃないかと思ってるんだけど。
で、値段は手頃な程度かな。
剰り高過ぎると怯くし、かと謂って安過ぎると今度は失望されそうだし、本当こう謂うのって難しいよな」
こう謂うのっておまけなんだから、適当で可さそうな気がするんだけどなあ…。
でも、そのおまけが主役なんてものもよく聞くし、……って、そこは大抵大人の事情だったりするのだが。駄菓子のガムひとつに立派な玩具の附いたやつなんて有名だしな。最近だと本にいろいろと附いてる物とか有るし。酷いのになると聖書の類いにン十万円の壺が附いてくるってのも……ってそれは明確に別物か。遉に一緒扱いするのは失礼だな、剰りにも非道過ぎる話だし。
「なあ~んだ、ちゃんと解ってるんじゃない。
って、当然よね。誰だって嵩張る上に役に立たない不要品なんて欲しがる理由が無いものね」
ははは、全くその通りだ。
でも、価値観ってのは人に依って違うから、そこが難しくはあるのだが。
「あ、でもだからって、幾ら実用品でも下着とかは絶対ダメだからね」
ぶふぅおっ‼
「な、な、な、なんでそんな物贈るんだよっ! 嫌がらせかっ⁈
そんな性的嫌がらせ行為、誰がするってんだよっ!
大体そんな女性への配慮の無い物貰って喜ぶ女性なんて在るのかよっ⁈」
全く、なんてこと説いやがる。思わず吹き出してしまったじゃないか。
「まあ、お子ちゃまの純には解らないだろうけど、それで喜ぶ女性も在るのよ」
なんだよそれ? それって婬乱女だけだろ? R指定の話じゃないか。
「そんなんで嬉しいってんなら、みさ姉には座布団でも附けようか?」
「なんで男のあんたがそんな言葉を知ってるのよっ!」
透かさずオレの背後に回ったみさ姉が、オレの側頭部をグリグリと両拳で締め付け始め…。
「ぐあっ、じょ、冗談、冗談だって。
ギブっ! ギブ、ギブ!
オレが悪かったって。謝るからもう、勘弁してくれっ!」
オレの謝罪はなんとか受け容れられたようで、漸く解放してもらえた。
「全く、冗談に決まっているだろ。そんな恥ずかしい真似できるかってんだ」
なによりソレを買わないことには、そんなことなんてできるわけが無い。もうソレを実行する方が罰ゲームだ。
「はあ…。でも、純もそんな下ネタを吐うような年齢になったのね」
なんだよその保護者目線は、みさ姉はオレの母親かっ。
……まあ、なんにしてもアレは失敗だった。
果然り慣れないネタはするもんじゃないな。なによりもオレのイメージが崩壊する。
うん、このことはここだけの話にしよう。
てか、もうこの話は忘れてしまおう、そうしよう。
と、謂うことで今回はここまで。
読者の諸兄、今回のことは全て忘れてくれ。
※1『矚望』とは『希望の目で矚る(見る)』ってことで『将来を期待する』という意味の言葉です。『嘱望』『属望』と同じ意味です。まあ、『嘱望』との違いは『目で見るだけ』か『口に出す』かって程度の違いってことじゃないでしょうか。『属望』の方は恐らくこれらの常用漢字版です。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




