契約
スカウトマンがやってきた。
本当に家にやってきた。
どうやらマジな話だったらしい。
両親を含めた四者での話合いが始まった。
そして契約が決まった。
マジか……?
正直、意外なことだらけだ。
両親がOKを出したこともそうだし、
こちらにとって、好条件での契約にしてもそうだ。
プライバシーの保護は当然としても、
プライベートさえも保護されている。
例えば、学業の絶対的優先だったり(仕事のため、学校を変わるのはもちろんのこと、休んだりする必要さえもない。さらに、試験休みなんてものまで認められている)それどころか、私生活の考慮まで(流石に最優先とはいかないが)認められいる。
とはいっても、それは書類上のことにすぎないのかもしれないのだが、それでも驚きだ。
両親が言うには、未成年なんだから当然のことらしく、契約における絶対条件だった。
また、契約金や給与も高額だった。
これに関しては、こちらからの要求ではなく、事務所側からの提示されたもので、向こう側の本気度の表れらしかった。
契約期間は約二年。現在、中一のオレが義務教育を終えるまでで、それ以後は、新たに更新契約を行うということに決まった。ようは、学業等への影響の有無により今後を決めるということだろう。
とはいっても、本当にヤバいようならば、途中休業ってことになると思われる。
まあ、そんなことはないとは思うが。
一応、オレにだって責任感やプライドはある。そんなことにするつもりは断じてない。
それになにより、オレの成績じゃ、そんなことにはなり得ない。これでも、それなりに優等生なのだ。脳筋の兄貴とは違うのだよ、兄貴とは。
で、その兄貴はというと、今頃、ライブハウスでライブの真っ最中ってとこかな。一応、アマチュアバンドのメンバーなのだが、本業は、高校三年の受験生。大丈夫なのかねぇ本当。
なお、オレの芸能界入りについては、兄貴には内緒だ。
どう考えても面倒なことになりそうだし……。きっと、コネでデビューさせてくれとかなんとか言ってきそうだ。優越感はあるが、やはり面倒臭い。
それに、メジャーにならなきゃ結局は五十歩百歩だ。笑ってやるならメジャーになってからだ。
まあ、おそらく無理だろうけど、それでもやるからには、メジャーデビューを目指すべきだろう。
契約は好条件だし、モチベーションもできた。
よし、やるぞ!