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Home Alone

 今回のサブタイトル『Home Alone』の意味合いは『ひとり暮らし』です。

 有名映画のタイトルと同じですが、そちらの意味合いは『お留守番』。なのでもしかすると訳を間違えたかと思ったのですが、でも『家にひとり』なんだからこの訳って問題無いですよね?

 みさ姉を小鳥遊のところの下宿(アパート)にと斡旋を持ち掛けて()たのだが、無碍(むげ) (※1)も無く浅然(あっさ)りと断わられてしまった。


「なんでそんな無下 (※1)なことを()うんだよ」


 もちろんオレはその理由を問い(ただ) (※2)た。


「そりゃあ確かにうちは部屋が空いてないわけじゃないけれど、でも、その(みさお)さんって若い女の人なんでしょう。

 うちって、若い男の人ばかりだし、なにか()ったり、変な噂が()ったりしたら大変じゃない。

 だから断わられせてもらったってわけ」


 なるほど確かに筋は通っているな。

 でも、他の若い女を警戒してるってのが本音じゃないのか。

 せっかく鳥羽と美味(うま)くやってるところに他の邪魔者がやって来て、それで鳶に油揚げってんじゃ確かに目も当てられないからな。


「でも、それはお前も同じだろ。

 実際もう既に虫が着いてるみたいだしな」


「誰が虫よっ!

 翔くんのことをそんな風に()わないでよっ!

 失礼じゃないっ!」


 オレの誂戯(あてつけ)の言葉に激昂する小鳥遊。でも、それって…。


「お前、ボロが出ているぞ。

 一応、鳥羽と付き合ってるのって世間には内緒なんだろ?」


「あっ…。う……うぐぐ……。

 は、謀ったわね。うぐぐぐ……。

 わ、解ってるとは思うけど、皆には内緒だからね」


 はぁ……、果然(やっぱ)りそうか。

 いや、まあ、いろいろとボロはだしてるし、そうでなくても見え見えのバレバレだったけど……。


「まあ、そう謂うことなら仕方が無いか。

 武士の情だ、今回は他所を探すことにするよ」


 いや、折れるつもりは無かったんだけど、でも、こうして素直に認められるとなあ…。


「あ、それと今のそれだけど結構な奴が気づいてるぞ。隠してるつもりならもう少し気をつけることだな」


 オレはお節介な忠告を残しその場を放れることにしたのだった。


          ▼


 さて、それではみさ姉の住むところだけどどうしようか。正直あそこぐらいしか当てって無かったんだよなぁ…。


 だがオレの心配は無用となった。

 良物件が見付かったのだ。

 意外なことに見付けてきたのは兄貴だった。

 アマチュア時代の知り合いの紹介らしい。と謂うかその人物の住むアパートなんだとか。

 しかもその人物ってのは女性らしい。つまりその彼女がご近所さんってなるわけで、そっちの面でも頼りにできそうだ。

 これ、本当は兄貴じゃなくって恭さんか葉さんの知り合いの紹介なんじゃないの?


「なんだよ、確かにあいつはヨウの知り合いだけど、それもオレの人望だろ。

 オレがヨウと連るんでなけりゃ、この話も無かったんだぜ」


 いや、確かにそうなんだけどさ。

 でもそれで如何にも自分の手柄のように振る舞うってのはどうなんだ。


「でもその人を紹介してくれたのは、そのヨウって人なんでしょ。だったら感謝するべきはその人じゃない。

 まあでも、その人を紹介してくれたのは確かに仁兄なんだから、一応は礼は()っておくけどね」


 と謂うわけで、みさ姉の住居はなんとか無事に決まりそうだ。

 いや、本当随分と良い物件なんだよなあ。

 交通の便は良いし、大学からもそれなりに近い。

 (つい)でに兄貴達の贔屓(ひいき)にしているライブハウスからも近い。

 また、間取りの方もそれなりで、これなら女性のひとり暮らしにも向いてるんじゃないだろうか。

 でもそんな優れた物件のくせに家賃の方も……多分結構安……くはないみたいだけど、それでも納得のいくものだったらしい。

 いや、なるほどな。確かに薦めるだけのことは有る。(さすが)は葉さんの知り合いだな。


「ただ、問題なのは少し町から外れてることか。

 近所にゃコンビニの一つすら無いからな」


 はは…、なんだよそれ。実生活には結構不便なんじゃないか。なるほど葉さんの知り合いだ。


「まあでもそれは、学校の帰りとかに買って帰れば済むことだし、多分なんとかなるんじゃない。

 それに町から外れてるって()ってもそんなに遠いってわけじゃないんだから問題は無いんじゃないかしら。

 それに街中ってわけじゃないんなら、そんなに騒がしいってことも無いってことでしょ。ものは考え方次第よね」


 そんなわけで優良物件では無く良物件なのである。

 みさ姉としてもそんなに不満が有るわけではないようなので、どうやらこれは本当に決まりか?

 でも、今のところは説明を受けただけってことみたいで、実際の下見はこれかららしい。


 まあでも、なんとかなるんじゃないか?

 実際の住人が薦めるんだし、そんなに問題は無いんじゃかないだろうか。


 うん? まだ決まったわけじゃないのに決まりそうだを連発し過ぎだって?

 いや、だってさ、良い物件が有って、それに納得がいくってんなら当然期待もするだろう?


 え? そんなにみさ姉を追い出したいのかって?


 ああ、そうだよ、その通り。

 だっていろいろ我慢してたけど、果然(やっぱ)り若い女性と同じ家で暮らすってのはどうにも落ち着かないんだよ。

 いや、変な気を起こすとかそう謂うんじゃなくって。

 だってあれでも一応は普通の女なんだしさ、いろいろと気を遣うことも有るんだよ。

 それがなにかってことは敢えて言及しない。

 個人情報(プライバシー)はもちろんのこと、なによりも女性への配慮(デリカシー)にも関わるからな。

 まあそう謂う礼儀(マナー)とか美意識(エチケット)みたいな話だ。つまり良識(モラル)の問題だな。


 そんなわけで、是非ともみさ姉には早々(さっさ)と決めてもらいたいものである。


 いや、本当、なんとかなってくれないかな…。

※1『無碍(むげ)』とは『(さまた)げが無い』つまり『妨げが無い』ということで『難無く』という意味。『無下』とは『下が無い』ってことで『酷い』という意味合いです。発音は同じなのですが、その意味合いが正反対なので間違えると大変な言葉です。使う際は注意しましょう。


※2『(ただ)す』とは『追及する』という意味です。似た言葉に『真偽を確かめる』という意味の『(ただ)す』という言葉が有りますが、これはより厳しい上位版ってところでしょうか。『(ただ)す』とも表記されるようです。[Google 参考]


※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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