表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/420

鳥羽、初詣でやらかす

 7月に続き、8月も多くのアクセス、ユニークを記録しました。読者の皆様ありがとうございます。

 まあ、そうは言っても9月に入ってからは、また今まで通りに戻ったっぽいのですが。やはりそれって夏休みってことのお陰だったってことで、期間限定ってことだったのでしょうか。些か浮かれ過ぎだったようです。

 まあ最近はまた投稿も滞り始めたので自業自得ではあるのですが…。

 せめて皆様に見放されないようがんばりたいと思います。

 仲間内の(いさか)いも解決したところで、愈々(いよいよ)境内に入場だ。

 鳥居の左側を潜り抜け、オレ達も人波の一部と化すように紛れ込み進んで行く。

 それにしても本当に凄い。去年も結構多いと思ったけど、今年は輪を掛けて多い感じだ。

 これって落ち着いてお詣りできるんだろうか。

 なんか後ろの方から急かされて、そのまま追い出されそうな感じになりそうな気がしてならないんだけど…。


 そんな心配をしている間に、オレ達の番がやってきた。

 ええい、ここは余計なことなど考えずに、お詣りに専念することにしよう。

 と謂うわけで、以早(いざ)

 鈴を鳴らして賽銭を入れ、二礼二拍手、両手を合わせてお祈りをする。

 良し。それじゃ最後に一礼をして立ち去るか。


 オレ達の番が済んだので、速やかに立ち去り、後ろで待つ者達へと場を譲る。


 うん、なんとか無事にお詣りは終了。

 こんな説明(言い方)じゃ如何にも粗雑的な感じだが、でもちゃんとお詣りは果たしている。

 だってせっかく列んだのだから、後続に気を遣ってそれを無駄にするのはもったいない。それじゃなんのために列んだんだって話だ。

 大体、正しく得た権利なのだから、それに文句を()われる覚えは無いってんだ。

 そしてなによりもだ、ちゃんとしたお詣りもせずに粗雑的な感じで済ませるだなんて、神様に対して失礼 (※1)だ。幾らオレでも神様相手にそんな無礼 (※1)を働く気は無い。



「ねぇ、みんなはなんてお願いしたの?」


 こう尋ねてきたのは、果然(やっぱ)り今年も美咲ちゃん。


「もちろん私は、純くんとの仲がもっと進展しますようにってお願いよ」


 透かさずこう答えてきた香織ちゃん。

 例年ならここは由希が応えてるところなんだけど、まあこうなるのは当然だろう。

 香織ちゃんとしては積極的にオレにアピールをしたいってところだろうからな。

 それに対してレナがなにか()いたそうにしてたけど、ミナからの掣肘を受けなんとか(こら)えたようである。

 普段ならレナがミナを率いてるって感じなんだけど、意外とミナがレナの暴走を抑えるブレーキ役を務めているのかもしれないな。以前ならレナと一緒になって暴走し、相乗作用で手が着け難くなってるところだったのだが…。

 まあこいつも成長しているってことだろう。レナにも見習ってほしいものだ。

 そんなわけで、ミナにはこれからもレナの諌め役に努めてもらいたい。

 

「アタシは去年と同じ。家内安全と家族の健康、あとは道場のことかな」


 香織ちゃんに続いたのは由希だった。

 多分、空気を読んでタイミングを合わせたのだろう。

 で、こいつの願い事だけど、果然(やっぱ)り今年も同じだった。

 なのでこいつは省略で可いよな。

 って、由希の奴、こっちを睨んでやがる。相変わらずオレ(ひと)の考えてることを見抜いているかのようだ。前から思っているけれど絶対に読心術とかを修得 (※2)しているに違い無い。


「僕は今年も皆が仲好く過ごせるようにってお願いだね。果然(やっぱ)りなによりもこれが一番だよね」


 そして再び、空気を読んだ天堂。

 好し、ナイスフォロー。

 しかしこいつ、相変わらずの温厚篤実()りだな。なによりも調和を重んじるこいつらしい願い事だとは思うけど、自身のための願い事ってのは無いのだろうか。


「そんなことを()われてもね…。

 仮令(たとえ)平凡で無欲なように思えても、僕にとっては平穏な毎日こそが一番なんだ」


 ああ、なるほど、そう謂うことか。

 今流行りの悠々自適な生活(スローライフ)が望みってわけな。

 でも、案外それって安易なようで厳しいと思うぞ。

 少なくともオレの場合は望んでないのに波乱万丈だ。

 …って、だからそう謂うのを望み願うのか。

 平穏過ぎるのも退屈だけど、毎日が波乱万丈じゃ、身体も心も()たないもんな。

 なるほど日々平穏が一番だ。

 実は天堂が一番強欲なのかもしれない。


「私は、一日も早く咲さん達に追い付きたいってお願いしました。身の程知らずな願いかもしれませんけど、それでもおふたりに置いていかれたくはないですから」

「ええ、その通りです。

 だから私もレナと同じで、咲さん達の妹分として恥ずかしくない存在になりたいってお願いしました」


 レナとミナの願い事はこれだった。

 ってか、何故ふたりともオレの方を()て言う。

 そう謂う他人を(めかりう) (※3)ような真似は香織ちゃんだけで十分だ。


「いや、そりゃ当然そうだろう。そこは俺でも同じことをするって」


 オレの心でのツッコミに鳥羽がツッコミで応じた。


「ええっ⁈ 翔くんってそう謂う性癖(しゅみ)だったの⁈

 そんなっ、酷いよっ!」


 うん、小鳥遊じゃないけれど、今の台詞を聞いたなら当然こう謂う反応になるよな。

 実際、他の連中は皆()いていて、精神的だけってだけじゃなく物理的にも距離を()っている。事情を察せなかったら、恐らくオレも同じ反応だっただろう。ってか、本当にその()は無いだろうな。


「そんなっ、それは誤解だって!

 俺には決して欠片もそんな性癖(しゅみ)なんて無いからっ!

 それになによりも、俺が好きなのは梢ちゃんなんだし、仮に男鹿が美少女だってそっちに(なび)くなんてことは絶対に無いからっ!」


 オレのそんな心配を他所に鳥羽はオレ達への、否、小鳥遊への弁解に必死だ。

 って、なにを状況(どさくさ)紛れに告白なんてしてるんだよ。

 いや、こいつらの関係については周知なだけに今さらではあるのだが、でもこの混乱した中で、本当(ちゃっか)りしてるよな。てか、こいつらってもう()っくに付き合ってんだろうから告白って謂うのも変な話…なのか?

 まあ、それでも改めてってことで。実際受ける身としては、そう謂うのって何度であっても嬉しいものだろうからな。


「ちょ、ちょっと、なにを()ってるのよっ、こんな公衆の面前でっ!

 こんなのが世間に拡まったらどうなるか解らないわけじゃないでしょっ⁈」


 あ、そう()われて()ればその通りだ。

 と、謂うことで、オレ達は慌ててこの場を離れたのだった。

※1 ここで使われている『失礼』『無礼』といった言葉ですが、その類義語も併せて説明すると次の通りです。

【失礼】礼儀を欠くこと。礼儀を知っているにも関わらず、失っている状態。

【無礼】礼儀をわきまえないこと。礼儀を知らない状態。

【非礼】礼儀をそむくこと。最も礼儀に外れた状態。

【失敬】人に対して礼を失うこと。主に男性が同等や目下の人に使う。

【無作法】礼儀を欠くこと。礼儀方法をわきまえていないこと。

 無作法<失敬<失礼<無礼<非礼 の順で意味が重いそうです。

[Google 参考]

 作者の思うに、

【失礼】礼儀がなってない。

【無礼】礼儀知らず。

【非礼】喧嘩を売っている。

って感じじゃないでしょうか?

『無』と『非』の違いについては、前回『無情』でやったとは思いますが、やっぱりとっさじゃ解りづらいですよね。


※2 ここで使用している『修得』ですが、類義語に『習得』という言葉が有ります。

 その意味合いの違いは次の通りです。

【習得】技術や知識を習い、身につけること。

【修得】学問を習い、身につけること。

[Google 参考]

 と、これだとこの場面では『習得』の方が相応しそうですが、この由希の場合『身を修める』目的で会得したということで『修得』としてみました。つまり『実用目的』か『嗜み』かの違いってことですね。


※3『(めかりう)つ』というのは『媚びた視線で異性の関心をひく』という意味です。

 因みにそういう目的で『異性を流し目で盗み見すること』を『睇視(ていし)』といいます。


※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ