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JUN BE BAD

 今回のサブタイトルを見て「ええ⁈ 悪くなるの⁈」なんて思った方もいるかと思いますが、実は『BAD』は『スゴイ』って意味合いのスラングでもあります。方向性としては『ちょいワル』とか『ダークヒーロー』といったイメージでしょうか。

 ただ、今回のサブタイトルでは少し意味合いが違い『純、悪ノリをする』って感じのつもりなのですが……どうなんでしょう? 本当にそういう意味になっているかは自信がありません。

 気分を鎮め、冷静になって挑んだ前田の打席、その第二球目だが……、まあ当然のように打たれた。しかも長打で(スリー)(ベース)(ヒット)

 そりゃあ直球(まっすぐ)一本で、精々が120km/h程度の球なんだから、甲子園で活躍してきた選手からすれば、子供騙しにも劣るだろう。

 でも、これでも、あの海堂から、筋が良いって褒められた身としては……。

 くそっ、口惜(くや)しい。口惜(くや)し過ぎる。

 身の程知らずと解かっていても、それでも口惜(くや)しいものは口惜(くや)しいのだ。

 しかし現実は受け容れるしか無いわけで…。

 こうなれば二番手の日馬(くさま)には悪いけど八つ当たりだ。こいつを抑えることで鬱憤を晴らさせてもらうことにしよう。


 この目論見は外れた。

 まあ当然か。堅実にスクイズ狙いだったのだから。

 まあそれならそれで構わない。だったらそれを潰すまでだ。これに乗じて前田を殺ってやるとしよう。

 日馬がバントで転がした球を八極拳の絶招歩法・箭疾歩(せんしっぽ)で捕捉。そのまま捕球し本塁(ホーム)へと送球。突入中の前田は捕手の遠山のタッチを掻い潜れずにアウトとなった。

 良し、計算通りだ。ざまを覿()ろってんだ。


 続く三番打者の大桃だが、こいつは普通に二塁(セカンド)ゴロで併殺打。

 これなら前田が三番になった方が良かったんじゃないだろうか。まあ、大桃は一年生だから今はこんなものなのかもしれないが。



 一回裏、今度はうちの学校の攻撃だ。

 春日山高校の先発投手は吉良と()う一年生。

 恐らくだが、彼が春日山高校の新たな主戦投手(エース)に違い無い。

 その根拠としては前主戦投手(エース)の直江の不在。そしてその替わりとばかりに()る女子マネジャーの宇佐美()()


 これって幾らなんでもそのまんま過ぎるだろ。

 こいつがあの直江でまず間違い無い。

 恐らくはこっちが本名なんだろうな。

 でもだったら、偽名の方はもう少し考えるべきだろう。直江尚人(なおと)は無いと思う。

 まぁ、早乙女純なんて芸名のオレが()えたことじゃ無いけれど…。

 因みに『早乙女純』って名前だが、実は有名女児向け漫画の主人公と同じ名前らしい。あとA○女優にも同じ名前の者が()るようだ。

 つまりそれだけ有り触れた、誰でも考え着くような名前ってことだ。

 ……それでも美咲ちゃんの考えるセンスのものよりは、こっちの方が常識的(まとも)で良いけれど。


 ああ、そう謂えば吉良の話だったか。

 こいつの実力の程だが、まあそれなりになかなかのものだろう。他校の一般的な主戦投手(エース)に比肩するレベルだ。

 少なくともスペックでは直江よりは上だな。

 ただ、それは見た感じだけの話だ。直江には、そのスペックの低さを補う技量と根性が有ったからな。

 問題はこの吉良にそれが有るかどうか。


 少なくとも、一回裏を三人で直然(すんな)り終わらせるくらいにはやるようだな。

 だが、オレだって負けるものか。少なくともオレだって同じ一年だ。



 二回表は四番の樋口の打席からだ。

 この樋口、二年生ってことだが正直こいつには見覚えが無い。ってことは多分、甲子園ではベンチ要員だったのだろう。

 実際、こいつはオレへのゴロで直然(すんな)りだった。

 これなら前田の方が四番に相応しかったんじゃないだろうか。

 こいつには実績はもちろんのこと、前田のような風格も威圧感も無い。なんでこいつが四番なんだろうな。


 続く五番打者は五十山田(いかいだ)

 こいつは先程の樋口と違って覚えが有る。甲子園じゃ七番を打っていた二年生だ。

 こいつも果然(やは)一塁(ファースト)ゴロで浅然(あっさ)りと。

 所詮は元が下位ってことなのだろうか。クリンナップは荷が重かったようである。


 六番打者は中堅手(センター)の本間、一年生だ。

 こいつは全く問題無し。

 結果は今日初めての奪三振。

 こいつお陰で、オレもやればできるのだと自信を取り戻すことができた。

 正直少し不安になってきてたんだよな。前田相手に完全に打たれてしまってたから。



 二回裏。うちの攻撃はまたしても直然(すんな)りと終わってしまった。

 おいおい、少しは確りしてくれよ。

 仮にも四、五、六番だろ。なんでこんな描写する余地すら無い感じで終わってんだよ。全く頼りにならない人達だ。



 三回表。

 七番打者は(いちじく)。甲子園では八番だった二年生だ。

 こいつって、三年生が()なくなっても下位なんだな。五十山田(いかいだ)は五番になってるのに。

 果然(やは)左翼手(レフト)みたいな外野ってのは、実力は低めってことなのかな。

 否、それを謂うなら五十山田だって右翼手(ライト)なんだからそれは当て嵌まりはしないか。


 ……なんだ、単に九は打撃が苦手ってことか。

 たった三球で三振なんて、超楽(チョロ)過ぎだろ。


 八番は二年生捕手の両津。

 三年生の長尾の後継ってことになるのだろうけど、打席が下位ってことは打撃よりも守備に専念するって典型(タイプ)ってことなのだろう。


 ……どうやら思った通りだな。

 打ち損じで捕邪飛(キャッチャーフライ)

 これで(ツー)(アウト)。あと一人だ。


 さて、最後は投手の吉良か。

 九番ってことは、こいつも投げることに専念ってことで、打撃の方は重視してない典型(タイプ)だろうな。

 ってことで、吉良も三塁(サード)ゴロで難無くアウトとなった。


 さあ、次の三回裏は愈々(いよいよ)オレの打席だな。

 試合で打つのは初めてだし、果たしてオレの打撃がどこまで通用するか楽しみだ。

※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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