君子連盟
調子に乗って続けてきた中国ドラマを捩ったサブタイトルは今回で終了です(多分)。
で、今回は『三国志〜司馬懿 軍師連盟〜』という歴史長編。
こんな大それたものからパクったサブタイトルですが、内容はいつもの如くそこまで大したものではありません。今回の『君子連盟』の意味合いは精々が『もう子供って年齢じゃないんだから、友人同士仲好くしましょう』って程度な感じです。『大人な付き合い』ってことですね。
さて、鳥羽との正しい関係を築き直すには、果然り改めて和解するって謂う結論に戻り 、こちら側から歩み寄る姿勢を示す必要が有るって結論に格った わけだが……、結局は聖さんに相談する必要が有るんだよなぁ…。
遉にこれ以上、許可無しで勝手なことをするわけにはいかないだろうし、なのでなにをするにしても一応承認は貰いたいところだ。なんだかんだで、結構迷惑を掛けたことには違い無いからな。
で、オレのやったことと説えば…、まあオレにできることなんて大体決まってるわけで、ただそのできることをやっただけだ。
基本はフェアリーテイルの時と同じである。
曲を作ってあいつらに提供し、それをコネでTVのテーマ曲に捻じ込んだだけである。
具体的には来期の『魔法少女マジカルリリー』の主題歌をサンダーバードに宛行ったってわけだ。
元々は不本意で受けた仕事だったけど、なにが幸いするか解からないってことだな。まあ公私混同であるのだが、そこは仕事柄の特権ってことで。
抑々こう謂う時くらいしかこの手の肩書きって使うこと無いだろ?
さて、一応これで『JUN』の側からの具体的な和解の意思は示せたことになるはずだ。
なんかフェアリーテイルの時と同じで、鞭のあとの飴って感じではあるけど、一応相手は『サンダーバード』、つまり『猛禽類』だからってことで…。
いや、そんな風に謂うから風聞が悪いだけで、普通の人付き合いでも、喧嘩とかの後の仲直りって大体こんなもんじゃないの?
「純さん、もし可かったら家に遊びに来ませんか?」
実際それなりに関係は改善されてきたようで、今ではこうやって遊びに誘われたりもするようになったわけだし。ただ…。
「それは可いけど、宜い加減その言葉遣いは止めてくれないか?
同じ年齢相手にその扱いって、判然り摘って気持ち悪い」
ただ、未だにこの言葉遣いは変らないんだよなぁ…。
「いや、でもその辺りの線引は果然り判然りとしておかないと遉に失礼に当たるんで…」
否、変らないのは言葉遣いだけでなく気遣いもだ。
せっかく友人関係を築けたと思えば、その実態は兄弟分。オレは舎弟分なんて欲っしてなんていないのに…。
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鳥羽の家ってのは、如何にも○○荘って感じの集合住宅だった。なるほど『荘』の『田舎屋敷』って意味合いに相応しい、そんな古…歴史を感じさせる雰囲気が有る。
中の様子は喩うなら寮って感じの共同住宅……は違うか。寮ってのは謂わゆる寄宿舎のことだからな。ただ、建物の造りは如何にもそんな感じで、便所や浴室等が共用となっているようだ。
「あれ? 翔くん、お友達?」
突如現れたのはオレ達と同じ歳くらいの女の子。この子もここの住人なのだろう。
「まあね。ほら知ってるだろ?
この前話してた――」
「ああーっ!
御堂玲っ! それにリトルキッスの花房咲に、ライバル事務所の加藤香織っ!」
鳥羽の紹介を待たず、騒ぎ燥ぐ女の子。
まあ、そりゃ気づけばそうなるか。なんてったってこの三人は全国レベルで有名な人気アイドルなんだからな。
てか、指を差すなよ、失礼な奴め。
いや、それよりも『ライバル事務所』⁈
「なに、この子? もしかして鳥羽の正体知ってるの?」
疑問に思ったので、小声で鳥羽に問い掛けて認る。
「うん、まあね。実はここって元々は以前は下宿だったみたいでさ、それでいろいろ管理人をしている彼女の家には結構世話になっているんだ。それに彼女はうちの学校で同じクラスってこともあって、彼女個人にもいろいろと世話になってるから、まあその関係もあってね」
「ふ〜ん、「彼女個人にもいろいろと世話になってる」かぁ~。そこのところ、もっと詳しく訊きたいところだわねぇ〜」
「なるほど、新人とは謂え遉はアイドル、そっち方面でも早速デビューかぁ」
なにやら朝日奈と向日が、意味有りそうなこと訊ってるけどそれよりもだ、オレについて余計なこと曝ってないだろな。
「ええっと、男鹿くんだっけ?
それに関しては今さらだと思うけど?
だって男鹿くんと香織ちゃんの噂って、結構学校内に拡散ってるみたいだし、隠す意味無いんじゃない?
それにその噂って、校内に留まらないって聞いたことも有るんだけど…。
で、実際のところってどうなの?」
……どうやら『JUN』の正体がバレてるってことはなさそうだけど…。
でも、なんだよそれはっ。
香織ちゃんとの噂ってそんなに拡散し捲ってんの⁈
いったいどんな内容なわけ?
張本人のオレは全く聞いてないんだけどっ⁉
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取り敢えず鳥羽の部屋に向かう。
しかし先程の鳥羽の説明じゃないけど、確かに貸家ってよりも下宿だな。中の間取りは4畳半二間ってところか。
否、違うな。カーテンで仕切っているだけで、恐らくは9畳一間、下手すれば6畳一間ってことも考え得るかもしれない。
その内の1畳半が玄関と炊事場って考えると…。
うわぁ…。ひとり暮らしって結構辛いなぁ…。とてもじゃないけど、オレには真似できそうにない。
否、そりゃあ金さえ出せばそれなりのところは借りられはするだろうけど、普通の学生にそれは無理ってものだろう。大学生達が学業を余所にバイトに勤しむのも克く解かるってものだ。
だから若い間は親元からの仕送り頼りってなるわけか。自立するってのも結構大変なんだな。
解かってはいたが、これだけの人数がひとつの部屋に集まったのだから当然に狭い。
本当なんでこんなに集まったんだろう。本来ここに招待されてたのは、オレの他には、同じ事務所の美咲ちゃんと天堂。あとは自称オレの交際相手の香織ちゃんの4人のはずなのだが…。
「なに謂ってんのよ。天堂くんの行くところ私達の行かないわけがないじゃない」
と謂う理由で朝日奈と向日が。
「ええ〜、だってあの『サンダーバード』の『羽鳥翔』の招待なんだから来ないなんて理由無いじゃない」
と、流行追従な斑目。
「こんな面白そうな話、見す見す逃すなんて理由無いだろ」
と河合。
「余り多人数で押掛けても迷惑になるだけだから遠慮しとくわ」
と、空気を読んだのは由希くらいだ。
あいつって、こう謂うところは常識ってか、良識が有るんだよな。
だが、それでも合計で8人。招待主の鳥羽と、このアパート(?)の娘を合わせて10人。
幾らなんでもくそ狭い。
まあ、香織ちゃんはそれを理由にオレに粘然りと密着しているから、不満どころか大歓迎ってところだろうけど。
それでも会話は和気藹々と進んでいく。
ここの狭さなんて気にならないってくらいに。
それぞれの自己紹介から始まって、いろんな趣味だのなんだのと。特に女の子達に格っては姦しいって程だ。
香織ちゃんとオレの話になった時なんて、……いや、それについては省略する。とにかくあれこれ鬱陶しいことなったとだけ述っておこう。
でもそれでもそれなりに得るものは有った。
親睦を図る謂う目的ならば大成功したと謂って可いだろう。
図らずも、ここで出会った小鳥遊って子の存在が大きかったみたいだ。
どう謂う理由か彼女の前では、鳥羽も普通に自然な態度で接してくれるみたいなんだよな。
う〜ん、このままこれで定着してくれないだろうか。
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「今日は来て良かったよ。なんか今朝までは変な蟠りが有ったみたいだけど、こうして話し合えたお陰で少しはそれも解けたみたいだしな」
「そりゃあ、あれをやられたら、遉に畏縮る って。こっちは同じデビューし発てでも、後楯に控いてる人物が違うんだから」
オレの帰り間際の話し掛けに対し、鳥羽の返答は随分と砕けたものになっていた。こう謂う自然な対応な方が果然りオレには好ましい。
ただ、依然り『JUN』に対する扱いまでは変らないようで、今の畏縮るってのも本音なんだろうなぁ…。
まあ、仕方が無いか。こちらはプロデューサーに対する敬意ってことで受け容れることにするしか無いだろう。公私の分別ってやつだな。
「まあ確かにな。フェアリーテイルって、リトルキッスの妹分としてデビューしてるわけだし。
でも、それを煽った男鹿は果然り『虎の威を借る狐』だな。なんてったって如何に男鹿があの子達の中学の先輩で、リトルキッスのふたりの親しい友人だって威張ったところで、所詮はただの一般人なんだし。
だから美咲ちゃん達の機嫌を損ねた瞬間、ただの一般人。つまり無駄に怖れる必要なんて無いってわけだ。
だから鳥羽も、取り入るんならこいつじゃなくって美咲ちゃんだな」
河合の奴め。確かに客観的な視点だとそうなるんだけど。でも、実際にそうやって指摘されるのは面白くないんだよ。
「それって同じ男の子なんだし、だったら天堂くんの方じゃない?」
この意見は、まあ当然ながら朝日奈だ。
そして向日がそれに頷くのも最早お約束だな。
否、逆のパターンも起るだろうけど、それを謂うのは意味が無い。こいつらはどっちがどっちでも所詮は同じ、御堂玲のファンAとBに過ぎないんだからな。本人達も恐らく否定はしないだろう。
「まあふたりとも、仲好くしてもらえれば嬉しいかな。できればその友人であるみんなとも」
はは…。これって、直には頼えないから婉曲にってことだよな。
「私としては純くんを独占したいから、これ以上余計な人達に近付いてほしくないところなんだけど」
これに対して香織ちゃんの方は相変わらずだ。その半分は冗談だろうけど、残り半分は間違い無く本音だろう。
「私もみんなとは仲好くできたら嬉しいな。
ねぇ、純くん」
そして美咲ちゃんは全て本音だろう。
こう謂う心底人の好いところが万人受けする理由であり、美咲ちゃんの魅力だもんな。
さて、鳥羽との和解は完全になったみたいだし、鳥羽も美咲ちゃんや天堂、そして他の友人達との友好も築けたようだ。
この分ならなにも心配は要らないかもしれないな。
きっとサンダーバードとの完全和解も、鳥羽を通じて巧く進ってくれることだろう。
ふう…。全く、まさかあの一件がここまで面倒なことになるとはな。でもこれで漸く落着か。
これからは感情任せでもなく、もう少し考えて行動する必要が有りそうだ。
※1 ここの『格る』という表現ですが、『深い考察』という意味合いで使っております。
『格』という字には『組み合う』という意味合いが有るみたいなので、ここでは『しっかりと本質を掴み、理解しよう』ってことになります。
あ、間違っても『格闘で(殴り合って)理解し合う』なんて脳筋思考(志向?)って意味じゃありません。ないはずです。……多分…。
冗談はさておき、『いたる』という言葉には次のような字が使われるようです。まあ、一般的には『至る』か『到る』くらいしか使いませんが…。あと、『致す』はオマケです。
【至る】流れにより、とある状況になる。
【到る】行動により結果が出る。
【致す】目的を持って努める。
【格る】物事の本質にいきつく。物事と向き合う?
『格る』とは読みません。(笑)
【戻る】回帰する。
通常は『戻る』と読むのはご存知の通りです。
【迄る】辿り着く。
【訖る】終わる。
【曁る】兆す?
【詣る】高みに達する。
【造る】完成する。最終形態になる。
造詣ってそういう意味だったみたいです。
【臻る】集約する? 大局に従う?
【踵る】追い着く。
以上、いつもの通りのGoogle参考による考察でした。
※2 この『畏縮る』というのは、意味合いからの当て字です。
実は幕末期から明治期にかけて何度か改訂された『和英語林集成』と題する英和・和英対訳辞書の中に、『縮る(びびる)』という項目があるそうです(『日本国語大辞典』より)。まあ、現在ではまったく通用しない表記ですが…。
因みに語源は、戦の際に鎧と鎧がぶつかる「ビンビン」という音なんだとか。[Google 参考]
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




