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学園祭翌日 -理非〜The Song of Victory?〜-

 今回のサブタイトルの元ネタは、中国ドラマ『驪妃りひ-The Song of Glory-』です。原題は『錦繍南歌』だそうです。

 ……残念ながら、これも観たことがないんですよね…。

 学園祭翌日、オレは朝から事務所へと呼び出されていた。いや、一応今日と明日は振り替えで休日となっているので問題は無いのだけど、世間一般は平日であり何事も通常運行のはずなんだよなぁ。つまり普通の学生なら現在は学校の時間なわけだ。だと謂うのに…。


「せっかくの休みのところ申し訳無い。今日、君に来てもらったのはサンダーバードと和解をしてもらうためだ」


 こうして聖さんから説明を受けているけど、実は既に織部さんからその話は聞いている。

 連絡を受けたのは昨日なのだが、その時に改めて散々怒られたのを思い出す。否、本当なら叱るってのが然るべき表現なんだけど、あれは半分近くは感情的だった気がするから、依然(やは)り怒られたってのが正しいだろう。


 こんなことを考えていたところ、マネジャーに率いられサンダーバードのメンバーが到着した。

 話には聞いていたけど、みんな結構若いようだ。と謂うか、あの中の一人ってうちの学校の生徒で同学年の奴なんだよな。他の面子も大体同年代か少し歳上ってところだろうか、最年長でも20歳くらいってところだろう。

 ……ってことは、態々(わざわざ)学校とかを休んで来たってことだよな。うちの事務所って所属タレントにそう謂う無理を強要するなんてこと、余りしないはずだったんだけどなぁ…。


「すみません、お待たせ致しました」


 初対面の時とは違い随分と低姿勢である。

 まあ、今回はお互いの立場ってのが判然(はっき)りとしているからなぁ…。


「一昨日は知らぬこととはいえ大変失礼を致しました」


 オレに対して平身低頭で謝罪を陳べるマネジャー。

 言葉に出すことは無いけど、明らかに動揺し捲くるサンダーバードの面々。どう()ても事態が理解できているとは思えない。

 まあ、そうだろうな。相手がまさかのオレなんだし。あいつらからしてみれば、何故オレがこの場に()るのかが不思議で仕方が無いだろう。普通に考えれば明確な部外者ってか、これ以上無い程の異物感溢れる存在だろうからな。


「こらっ、お前らも頭を下げないかっ!」


 マネジャーに()われ、困惑ながらに従う姿にオレの方も罪悪感を覚える。

 抑々(そもそも)この事態の責任って、こいつらじゃなくってマネジャーの方にこそ有り、こいつらはそれに連座させられただけの被害者なんだもんなぁ…。なのになんでマネジャーの方が偉そうなんだか。


「別に構いませんよ、彼らがなにかしたってわけじゃないですから」


 当然ながらこの台詞は、したのは彼らじゃなくってマネジャーの方だって謂う皮肉である。


「確かにしたのは、彼らじゃなくってお前だもんな」


 ただ、織部さんはこの反応。

 いや、確かにそうだけど、でもそれって売られた喧嘩を買っただけだ。


「それについては説明したはずですよ。ちゃんと許可は貰ったって。

 それにオレ達は、ただ自分達の出し物に参加しただけですしね。変に(あげつら)われる (※1)必要は無いと思うんですけど」


 この台詞は織部さんと何度もやり交わしたものである。大義名分としての正当性は十分なはずだ。


「だったらこちらも()ったはずだ。

 客先はもちろんのこと、同業者の面子を潰して、この先の仕事にどんな影響が有るかくらいは考えて行動するべきだとな。そんなことだから子供扱いされるんだ」


 そしてこの織部さんの台詞も果然(やは)り同じ。

 そりゃあそれくらい解からないでもないけど、しかしそれでもこちらにだって面子(プライド)は有る。せっかく一人前になりつつあるフェアリーテイル(あのふたり)にそんな卑屈さを教えたくはない。

 そりゃあ増長し捲りなのは問題だが、卑屈なアイドルのどこに魅力が有るってんだ。少なくともオレの想い(えが)くアイドルってのは天真爛漫、天衣無縫な少年少女達なんだ。間違ってもそんな(ひね)(くれ) (※2)大人()った紛い物の優等生なんかじゃない。



 まあ、それでも一応はオレも謝った。客観的に()ればオレも大人気(おとなげ)無かったって思えるし。それに相手側だって反省しているみたいだしな。(さすが)にそれを無視ってわけにはいかないだろうからな。

 但し、後悔はしていない。当然反省なんてことも。

 だから飽くまで相手の謝罪を受け容れて、今回はそれで和解することにしただけだ。だからオレの謝罪は表面上で、形だけってことだな。

 つまり、そこだけは相手の面子を立てたってことで、実質的にはオレの完全勝利ってわけだ。


「調子に乗ってるんじゃない。飽くまで今回は相手側がお前の顔を立てたってだけだからな。間違ってもそこを勘違いしないことだ」


 ……相変わらず織部さんは厳しい。

 でも、なにが勘違いなんだか。絶対的に正当性はオレ達側に有るはずなのに…。

※1 ここでは『あげつらう』を使っておりますが『あげつらう』とも書くようです。

 まあ、議論しようが批評しようが、どちらでにしても『ケチをつける』って意味合いで使われることが多いことには違いが無いようです。


※2 当然ですが、この『ひねくれて』ってのは当て字です。『捻昏』って熟語も有りません。

 この言葉の意味合いとしては、無駄に『擦れてるくせに馬鹿なまま』って感じです。

 擦れるのは、まあ個性として、せめてそれなら卑屈にならず、それを正しく克服できる強かで善良な腹黒人間を目指しましょう。(笑)


※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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