続 千鶴 来訪者 -JUNの二度目の曲制作-
日が明けた。
女子高生がやってきた。
またしても学校にやってきた。
長谷川千鶴だ。
校門の傍で佇んでいる。
昨日も来ていた美人女子高生、しかもそれがアイドル『長谷川千鶴』ってこともあり、当然うちのクラスでは、男どもを中心に大騒ぎとなっていた。
「え、あの子、長谷川千鶴だろ」
「確か昨日も来てたよな」
「ああ、また今日も男鹿に会いに来たみたいだぜ」
やっぱりオレに会いに来たようだ。
「ええっ、今日もまた純⁈」
「美咲ちゃんじゃなくって?」
「そういや二人で逢引してたよな。しかも泣かせてたし」
「純くん、千鶴さんとどういう関係なの?」
オレはその場から逃げ出した。
といっても、やはり会わないわけにはいかないわけで、オレは千鶴さんと、昨日の喫茶店に来ていた。
後からは、今日も、うじょうじょと追いて来るやつらが。
中には入ってきてないけれど、やはり、ガラス窓にべったりと貼り付いている。
って、おいっ、美咲ちゃんっ。また、今日もかよ。
よく見りゃ、由希に真彦もいる。
ったく、あいつら……。
念のため、今日も奥の方の席へ。
やはり、壁に背を向ける席に着く千鶴さん。
そして、向き合うように席に着くオレ。
「で、話ってのはなんだ? 昨日も来たばっかりだろ」
「あら、そんなの決まってるじゃない『JUN』セ・ン・セ・イ」
「なんのことだよっ。わけ解んないこと言ってんじゃねぇよ」
「へぇ、また韜晦けるつもり?
昨日ちゃんと約束したじゃない。
で、どんなのが出来たの?」
「なんでだよっ。オレはただの素人だぞ。そんな簡単にはいかないだろっ」
「そうかしら、咲からは、1日で3曲は作るって聞いたんだけど」
美咲ちゃんってば余計なことを……。他人事だと思って。
「無茶言ってんじゃねえよ。そもそも催促無しって約束だろ」
全く、自業自得とはいえ、鬱陶しい女と関わってしまったもんだ。
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千鶴さんとの約束の件だけど、さてどうしたものだろう。
曲なんて、そう簡単に出来るとは思えない。
仮に出来たとしても、それに味を占められてはたまらない。
なら、作るとすればどういったものがいいだろうか……。
まずは普通に、季節は夏。
そしてやはり、恋愛絡みか……。こういう、羞恥心を刺激しまくるテーマって苦手なんだけどなぁ……。
で、ここに何か捻りを加えるって、本当どうしよう……。
……ん! 待てよ。
ここは逆に考えてみよう。
まずは、何か嫌がらせ的なものを考えて、そこから手直しをしていって…………。
よし、これでいこう。
じゃあまず、どんな嫌がらせにしよう。
セクハラ的ものか。確かにアイドルで女性ってことを考えればありかもしれないが、露骨だと文句を言われかねない。
じゃあ他には……。
こうして一晩掛けて、曲が出来上がったのだった。
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週明けの月曜日。
女子高生がやって来た。
執拗くまたもや、やって来た。
って、このパターンはもういいか。
当然の如く千鶴さんである。
「また今日も来たぜ」
「全く、こいつのどこがいいんだか」
「本当、死ねばいいのに」
おい、お前、本人を前にして、そういうこと言うか。喧嘩でも売ってんのかよ。
まぁ、嫉妬だって判ってるから敢えてスルーするけど。
で、恒例の遣り取りをスルーして、現在、例の喫茶店。
「やってくれたわね」
「え、なんのことだ」
察しはついているけど、敢えて韜晦する。
「韜晦けんじゃないわよっ!
あの曲のことよっ!
何よあれ。まるっきり演歌じゃない!
アイドルに演歌を歌えって言うの!!」
「そうかな、この業界じゃ、よく聞く話だと思うんだけど」
確か演ドルとか言うらしい。
「それにあの曲、演歌じゃないつもりだけど」
但し、雛型だけど。
「知らないわよ、そんなことっ。
聖さんにみてもらったら、すっかり演歌になってたんだから。
そもそもあの曲、最初っからそのつもりで作ったんじゃないでしょうねっ」
因みにその曲は、千鶴さんの手を離れ、別の演歌歌手の手に渡っている。
「言ったはずだろ。オレはただの素人だって。
まぁ、ともかく、約束通り、一応一曲作ったんだし、ちゃんと義理は果たしたぞ」
翌日、別の曲を渡すことにした。
一応、用意はしてあったのだ。
但し、少しばかりセクハラ的ではあるのだが…。




