学園祭初日 -看過せんけん-
今回のサブタイトルも、中国の武侠小説『古龍』の『浣花洗剣録』のパロディです。ただ無理やりで広島弁っぽくなってしまいましたが…。
この作品では『燕返し』という剣技が変なかたちで登場し思わず笑ってしまいました。
この作品はドラマ化されており、主演は謝霆鋒が演じています。興味のある方は是非。
作戦会議も終わったことだし、それでは早速取り掛かろうか。
まずは商品在庫の確認。目標は全ての売り切りだ。
うん、説明では偉そうに宣ったものの、行ることは特に特別なことではなく、周りのクラスの模擬店同様、ただ商品を売るだけである。
そう、ただただ一生懸命。オレ達にできる全力を尽くす、それだけだ。
店舗の雰囲気作り、そして客寄せ。その双方の条件を満たすものと謂えば?
まずは音楽ってところだろう。耳から入る音楽で興味を持たせて客を寄せるのは定番だ。
次に店員。愛想の好いのは当然として、美男美女ならなおのこと好し。それに関しては我がクラスのレベルは……結構高い方かな。
オレの主観はともかくとして、女子の方は問題無いだろう。世間全般的に女子高生ってだけでありがたがってる感じだからなぁ…。
「まあ暫くは由希と斑目で駕ぐ として、本番は美咲ちゃんが来てからだな」
こんな奴らでも一応は女だし、なんとかそれなりのことにはなるだろう。
「ちょっと、それってどう謂う意味よ。
そりゃあ美咲ちゃんとアタシ達とじゃ比べものにならないかもしれないけど、それでも謂って可いことと悪いことが有るでしょ!」
ん? オレってなにか変なことを言ったか?
「どう謂う意味って、そのままだろ?
美咲ちゃんが来るまでお前らに店番を頼むって以外になんの意味が有るってんだよ?
この忙しい時に変な難癖付けやがって」
「省略してる部分が有るでしょうがっ。
ちゃんと顔に表てんのよっ!」
なぁ⁈
つまり今のは“謂う”ってのは“謂う”ってことだったのか?
そりゃあ幾らなんでも横暴だろ⁈
口に出したわけじゃないんだし無罪だろ⁈
「有罪に決まってるでしょうが! 重罪よ重罪!」
そんな無体な台詞と伴に由希のアイアンクローがオレにキマる。
「おしおきだベ〜」ってつもりかもしれないが、どう考えてもこれは仕置きのレベルが念仏の人だ。レントゲンの演出るアレだ。
「アタシのこの手が光って唸る!
お前を倒せと輝き叫ぶ!
砕け!ひぃっさつ!!
シャァァァァイニング・○ィンガァァァァァァッ!!」
ま、待てっ、本気で殺る気かよっ⁈
必殺なんて叫ってるし、マジでオレ死ぬの?
……幸い死ぬってことはなかったみたいだが、未だに頭が割れそうだ。一層本当に死んだ方が楽だったかもしれない。
「いや、大袈裟じゃないか?
アレって明らかに冗談半分だろ、漫画の技名叫んでたし」
河合の奴、他人事だと思って好き勝手な批評を下してくれやがって。
「当然でしょ。アレって思う程大した威力って無いのよ。
某漫画家も「ものすごく痛いのに人体へのダメージは少ない」って評ってるしね。
もし本気で殺るんなら、そのまま頭から叩き付けてるってところだわ」
確かそれって『○ーリンゲンの鈍色刃』 って漫画の技じゃなかったっけ。
遉は『姫夜叉』、なんとも物騒な女だ。漫画の技でも軽く再現するからなぁ…。
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由希のせいで余計な時間を浪費してしまったが、気を取り直して作戦再開だ。
第一段階は先程の由希達で肯し……否、宜しとして、ここからは第二段階だ。
そんな理由で、やって赴たのは放送部。
「なにを請ってるのよ。
機材を貸し出せだなんて、そんなのできるわけが無いでしょう。
仮にできたとしても、いきなりでなんてそんなの無理よ」
まあ、そうだろう。断わられるのは解かったていたので特に落ち込むとかは無い。
では何故来たかと説うのなら、ただそれを確かめたかったからで、これで大規模な音で外部から邪魔が入らないことが確認できたわけだ。
幸い軽音楽部の舞台上演は、今演っているアイドルのそれと同じ場所なので明日なわけで、今日は演るとしても小規模なことしかできないだろう。だったら彼らは脅威じゃない。
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うん、本当にどこも大したことはなさそうだ。
オレ達の出店に戻る途中で、雑と他の催事を偵察て験たけど、所詮は素人の企画ってことだな。
その手法は果然りオレ達と大差無い。
そうなればあとは人員と商品の質での勝負となるわけで、負ける要素が皆無だな。
「宜し、まずは想定通り。これなら美咲ちゃんの合流した時点で勝負は決まりだな。
ただもう一手、駄目押しを加えることにするか。
そんな理由だ。お前らは先に出店の方に戻っててくれ。オレは別の準備が有るから。
できれば売り子を手伝ってくれると助かる」
ここでレナ達と分かれる。
理由は先程述った通り。
「時間稼ぎってことね…。
でも勝負を決めてしまっても良いんでしょ?」
「そうよね。勝って遂せるわ。国民的アイドルと謳われるリトルキッスの名誉に懸けてっ!」
なんとも頼もしい限りだな。この分なら安心して任せても可さそうだ。
……なんか美咲ちゃんから変な影響を受けてそうだけど、そこは考えないようにしよう…。
※1 ここでは『駕ぐ』を使っておりますが、意味は『凌ぐ』と同じです。
『駕』は『馬』の上に『加』で、イメージ通りの『乗る』『馬を使役する』という意味。『凌』は『冫』と『夌』で『氷』と『丘』転じて『厳しい道』ってイメージです。これなら絶対に『しのぐ』は『凌ぐ』だろうって思ったのですが、ならば何故『駕』で『駕ぐ』なのだろうと思い、ここで考察をしてみました。というのも、いつものGoogleでもよく解からなかっので…。
『駕』には『役人になる』なんて意味合いも有り、つまりは『犬馬のように働く』という意味合いかと思われます。一方で『凌』は『冫』の付くことから『環境に適応する』と自己解釈で意訳してみました。
そんな理由で、ここでは『困難な仕事に対処する』という意味合いで『駕ぐ』としております。
※2 念のためですが、この『○ーリンゲンの鈍色刃』という技は草履とは一切関係有りません。
いや、この漫画ではヤラれ役の多いこのキャラですけど『ベルリンの〜』以外にも技って有ったんですね。(笑)
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




