学園祭初日 -沽券奇譚-
今回のサブタイトルは中国のアクションRPG『古剣奇譚』のパロディです。
開発は上海オーロゴン、配信はSteamだったと思うのですが……すみません、そのあたりはどうも疎くてよく解かりません。
ただ、人気は高く評判も良いようで、中国ではドラマ化されてたりするようです。
……と、紹介してはみたのですが、実はこのドラマって、観たことってまだ無いんですよね。BSかCSなんかで放送されてはいたらしいのですが、時間が合わなくて…。
*ジャンル変更しました。
でも、ヒューマンドラマ〔文芸〕で正しいのかは、自信がありません。
一応は登場人物が人間ですが人としての道徳心は薄い感じですし、内容もその時の思い付き任せでだらだら展開なので、まだ随筆小説って方が近いのではないかって感じです。
主人公は年齢に相応しく見事に厨二病を患って、煩わしい自意識過剰人間で、その実劣等感の塊って感じです。彼が苦悩し成長するのならヒューマンドラマってのもアリなのかもしれませんが、どうなるかは未定。
こんなので本当に良いのでしょうか?
「で、これからどうするんですか?
あんなことを宣ったからにはそれなりの考えは有るんですよね」
舞台裏を出て直ぐに早速レナが訊ねてきた。
ミナも期待の眼差しでオレを見つめてくる。
オレも他人のことを摘えないけど、こいつらは相変わらず過激だ。
まあ、侮辱を受けた当事者だけにそれも仕方が無いのだが。
「なにを晦ってるんですか。それは純先輩だって同じじゃないですか。
大体星プロに所属してるくせに『JUN』からの頼み事を袖にしようだなんて、身の程知らずも酷過ぎますっ」
「それに私達をあんなに疎略に扱うなんて許せないわ。私達はあの『リトルキッス』の妹分なのよっ。
なのにあんな侮辱的仕打ちを受けるなんて…。
ああっ、おふたりになんて顔向けをすれば可いのよ…」
いや、そんなことを謂われてもな…。
こっちとしては同じ事務所所属ってことで、簡単にしか自己紹介してなかったし、学校なので名刺のような身分証明できる物も渡せてない。そんな周りの目を気にしながらの交渉だったし、反えて省れば少し無理が有ったかもしれない。なのでミナが摘うような不条理な怒りは持っていない。ミナの慷慨忠直 さはありがたいけどな。
ただ、レナの摘うことは解からないでもない。相変わらずの傲慢風りはどうかと思うが、以前とは違いちゃんと実績が根拠として根差しつつある。なのでその怒りも申し訳無さも、以前と違って真っ当だ。
「なんだお前ら、オレがあれだけ誂われ放しでなにもしないなんて思ってたのか?」
生憎オレはそんな殊勝な人間じゃない。
喧嘩を売られれば買い叩くし、借りは熨斗を足けて返す主義だ。
世の中侮られたら破滅。だったらそうならないように、周囲に示譬める のが当然だろ?
他人は野蛮だと罵るかも知れないけど、他に考り方を知らないんだから仕方が無い。ただ頑なに信じた道を進むだけだ。
ツッパることが漢の勲章とも謳うからな。
▼
「なんだよ、そんな理由で帰って来たのかよ」
そう言う河合も黠り誰かと店番を交代して教室に帰って来ていたようだ。
「本当、酷い迷惑よ。いきなりこの子達とどこかに行ったと思ったら、戻ってきた途端これだもの」
あの後、残してきた斑目達と会場を去ったオレ達は、ひとまず教室へと移動することにしたのだった。
そしていつものクラスの仲間内でこの度のことを相談中ってわけである。否、今のところは、これまでのことの差し当たりの無い程度の説明と……そして何故だか雑談が少々…。
「嫌なら斑目だけでも残ってりゃ宜かったのになんで従いて来たんだ?」
そう、何故か斑目も一緒だったのだ。
本当なんでだよ? サンダーバード?だったか、あいつらを観るのを愉しみにしてたんじゃなかったのか?
「しょうがないじゃない。なんかあの場の雰囲気に流されちゃったんだから」
訊けばなんとも間抜けな理由だった。
アホだ、こいつ。
「でも、今からでももう一度掛け合って試るってできないのかな?」
この台詞は漸く補習から戻ってきていた美咲ちゃんだ。
「う〜ん、ごめんね。午後からも少し、補習の続きが残ってるからちょっと無理かな」
止せば宜いのに美咲ちゃんってば、こうも判然りと説明するか?
お陰でせっかく暈していたのが台無しだ。
ほら、レナ達が困惑した笑顔を浮かべてるじゃないか。
まあ、仕方が無い。美咲ちゃんの尊厳については今さらなので、早々と話を進めよう。
「恐らく再交渉は無理だろうな。
それにオレ達の方にもそんなつもりは全く無い。
有るのは如何な趁趣であいつらと対峙するかだけだ」
とは謂っても、学園祭でできることと謂えば、なんらかの催事で対決することくらいだろう。
だが今さら、急遽新しい催事なんて起やらせてもらえないだろう。
ならば今催っている催事の中で、それをどう活かすかってことになるわけだ。
…………………。
「良し、勝ける。これなら十分問題無い」
考えの纏まったオレは、早速それを打ち明けた。
「全く、本当お前って性格悪いよな」
「そうよね。よくこんなこと考え着くものよね」
河合と斑目が呆れるような目を向けてくる。
でも、そんな特別なことをしようってんじゃないんだけどなぁ。
単に本気で模擬店をやろうってだけなんだから。
「そう謂えばこの人って、こう謂った自分の立場を利用するのが得意だったもんね」
「そう、特に相手が持ち出した言い分での自縄自縛を狙ってくるところなんて質が悪いったら無いのよねえ…」
ミナとレナも同様だ。
でも、相手の言い分を認めるならば、それを利用するのは当然なんじゃないだろうか?
否、それが誰に依るものだろうと、ルールってのはそれを克く理解し、それに則った戦略を練るのが勝利への絶対条件なんだから。
「アンタが説うと『則る』が『乗っ奪る』に思えるのが不思議よねえ」
なんか由希が変なことを謂っているけど、ここは気にしないことにしよう。
「…事情……自爆……?」
美咲ちゃんも、なんか変なことを謂ってる気がするけど、これも気にしないことにしよう。
ともかくだ、これで作戦は決まった。あとは実行あるのみだ。
※1『慷慨忠直』とは『忠義の心から激しく怒り、悲しむこと』という意味の言葉です。
『慷慨』とは『世の中の不義理や不正に腹を立てること』という意味であり、『慷』と『慨』には『嘆き憤る』という意味が有ります。[Google 参考]
※2『知らしめる』の当て字として『示譬』という言葉を使っておりますが、これは『示喩』に因んだ作者の造語です。意味合いとしては『譬えを示す』で『例を見せて諭す』なのですが、ここでは話の流れ的に『見せしめで警める』という良くない意味合いになります。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




