学園祭準備 -出し物を決めよう-
→文化祭を学園祭に変更しました。[2023/08/10]
体育祭が終わったばかりの10月半ば。しかし今月末の土日には今度は学園祭が待っていたりする。なんとも忙しない話ではあるが、……本当なんでなんだろうな。その一週間前には中間試験まで有るし、まさか生徒に忙殺体験をさせるのが目的ってんじゃないだろうな。熟々生徒会に関わらなくって良かったと思う。
で、現在オレはと説うと、ホームルームで出店についての話し合い中。
学園ものの読み物なんかでお馴染みのように、果然りお化け屋敷や食べ物関係の模擬店ってのが有力候補で、特に喫茶店なんかは大人気。もちろん給仕はメイドや執事風だったり、その他の仮装をしていたりと趣味全開。内容だって「本当は夜の店だろ」って思わずツッコミたくなるような……って遉にそれは無いけれど、それでもお触りとかが無いだけで客に媚を売る様式なのは間違い無いだろう。受け応えの「はい、喜んで」も「はい、宜媚んで」って当て字を使いたくなるような『適宜に媚びる』が『接客方針』ってことになりそうだ。
「気持ちは解らないでもないけど、お前ら本当にそれで好いのか?」
オレの意見は彼ら大勢に反する少数派と謂うよりもほぼオレひとり。こりゃあ異端派ってのが正しそうだ。
「それってどう謂う意味だよ?
内のクラスって美咲ちゃん、つまりアイドルの『花房咲』を筆頭に結構美少女が揃ってんだぞ。それなのにやらないなんて、そんなもったいないことできる理由無いだろう」
「そうよ、それに男子には天堂くん、『御堂玲』だって在るのよ。誰だって羨ましがるこの状況を否定するなんて有り得ないでしょ!」
「男鹿だって一応はリトキスの親衛隊なんだから、それくらいは解かると思ってたんだけど」
珍しく河合の意見と朝日奈達の意見が一致する。
まあ、お互いの利害が一致してんだから協調するのも当然か。
「お前ら本当に解ってないんだな。
お前らが謂ってるのって、例えるなら『将来ケーキ屋さんになりたい』って幼い子供が憧れてるのと同じなんだよ。
この場合、『作るのが好き』ってんなら問題無いけど、大抵の場合は『食べるのが好き』だからな。その場合って『ケーキ屋さん』じゃなくって『お客さん』になるのが正解じゃねえの?
で、今のお前らの場合だけど、果たしてどちらに該当するんだろうな?」
ははっ、思った通りだ。河合を筆頭にかなりの奴らが動揺してやがる。
と謂っても、まだ一部例外が在るみたいだな。
じゃあ、ここでもう一推し。
「もし仮に『ケーキ屋さんになりたい』だったとしても、『同僚と仲好く一緒』に仕事できる時間が、果たしてどれだけ有るだろうな?
どう考えても同僚よりも『客に接してる』時間の方が長いし多いんじゃないか?
対して客は同僚と仲好く、否、仲睦まじくやってるわけだ。自分が我慢してる目の前で、恐らくは一日中そんなの見せ付けられることになるわけだな」
おお⁈ 今度は先程の例外達、こっちは朝日奈達だけど、かなりの有効打だったみたいだな。
……まあ、それでも我知らずって奴は在る。これも先程の例外で、少数派だった奴らだ。
でもこいつらは仕方が無いだろうな。最初っから関わる気の無い奴らだから。
「ふ〜ん。じゃあ純はどうしたいって謂うのよ。
これだけ他人を引っ掻き回しておいて、後のことは知りませんなんて無責任なこと、まさか言い出さないわよねえ」
うん、まあ由希のこの台詞だが、一応は想定内である。こいつ、筋の曲ったことを殊の外、毛嫌いするからな。
「そうだな……。雑貨市的りで宜いんじゃないか?
それぞれが余り物を用意するだけで手は余り掛からないし、店番も数人が交代ですれば済みそうだし、結構面倒が無くって好さそうだと思うんだけど」
オレの意見は圧倒的多数の支持に依り可決することとなった。先程までの喫茶店の案を翻してだ。
つまり、結局は『ケーキは作るよりも食べる物』ってことだろう。
自分達の出し物は程々に、他所の出し物を愉しむことに決めたってわけだ。
自分から嗾けといてなんだけど、こうも浅然りいくと、なんだかなぁ…。余りにも自分の欲望に忠実過ぎだろう。




