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体育祭 -4×100mリレー……を余所に愚痴る-

 今回こんなサブタイトルですが、作中の純だけでなく、作者までサブタイトルにつられたかのように後書きにて愚痴を零しております。

 恐らくかなり不可解で不快な内容なので、いつも後書きを読んでくださる方も今回はその部分(※2の途中から)をとばすことをおすすめします。

 それでも敢えて読もうという方には、久し振りにあの警告をさせていただきます。


【私撰有害図書指定】

 当作品は読者に対し、知識、思想、嗜好などに於いて、悪影響を及ぼす可能性があります。ご注意下さい。なお、当方と致しましては、一切の責任を負いませんので、読者様方の自己責任にてお読み下さい。

 借り物競争が終わり、競技種目は4×100mリレーへと移った。

 お巫山戯満載の種目から真面目(ガチ)な真剣勝負へと変わったことで、観る者達の期待の方向性も同様なものに変わったわけだが、会場の注目を集める人気種目であることには変わり無い。

 そしてそれはオレ達も……と言いたいところだが、生憎オレはそんな心境になれないでいた。


「全く、あのクソ女めが。

 あの難癖が無かったら、責めて5位は狙えてたのに。否、従順(おとな)しくボールを渡してくれてたらもっと上位だったかもしれない。

 だと謂うのに、あいつのせいで最下位だ。

 しかも、選りにも選って、不本意ながらも用意したコレまで()り上げようとしやがるとは、不届き至極も有ったもんじゃねえっ!

 あーっ、くそっ! 考える度に腸が煮え繰り返る。

 くそっ! くそっ! クソ女めっ!

 これで勝ったと思うなよっ!

 今に必ずこの借りは返してやるからなっ!」


 と、こんなわけだ。全く、忌々しいあのクソ女め!


「なにをそんなに荒れてんのよ、鬱陶しい。

 少しは見ている者の気にもなりなさいよっ」


「うん、なにが()ったかは知らないけれど、ここは一旦落ち着いて、僕で()ければ話くらいは聞くから」


 由希に諭され (※1)、天堂に宥められたことで、オレも少しは冷静さを取り戻し……なんてなるわけねえっての。

 あれだけの仕打ちを受けたんだ、そうそう安易にこの憤りが(おさ)まろうわけが無い。

 如何に由希が威圧的に(さと)そう (※1)と、天堂が宥め(すか)して(さと)そう (※1)と、()ち着いて (※1)なんていられるものか。

 まあそんなわけで、せっかくなので遠慮無く愚痴を(こぼ)させて (※2)もらうことにする。

 こう謂う不満は溜め込まずに発散させておかないと、心身(からだ)にどんな悪影響が()るか解らないからな。


「なによっ、それって横暴じゃないっ!

 職権濫用も甚だしいってこのことよっ!」


 何故かこの場に居た香織ちゃんが激昂する。

 いや、香織ちゃん、もう自分のクラスなんて完全に眼中に無いだろ。ここが自分の居場所と謂った感じで直然(すっか)り馴染み切ってるし。


 ……って、気づけばオレって、なんかこうして香織ちゃんにツッコミを入れられるくらいには冷静さを取り戻しつつあるみたいだな。

 これもこうして愚痴を吐き出させてもらってるお陰だろうか?


「へぇ〜、これがその海堂(すすむ)のサインボールかぁ。

 でもこれって、かなり貴重な物なんでしょう?

 よく純ちゃんが貸してくれたわね」


 そんなことを言う割りには、無神経なくらいに、(いと)浅然(あっさ)りオレからそれを攫っていく由希。


「あ、こら、返せっ。汚い手で触ってんじゃねえっ!」


 慌ててそれを取り戻す。

 全く、油断も隙もない。汚れが付きでもしたらどうしてくれるってんだ。

 既に他の連中も群がって、本気で危うい状態だった。

 とは謂ってもまだ安心はできないな。果然(やっぱ)りちゃんと確認をしておかないと。

 そんな理由で、オレはいろいろと覗き込む角度を変えながら、一切の見落しも無いようにと汚れ具合を慎重に慎重に確かめていく。


「……ちょっと、幾らなんでも大袈裟過ぎない?」


 由希の奴、なにを勝手なことを言ってやがる。

 これだから、物の価値の解らない奴ってのは困るんだ。


「あのなあ、コレはただのボールとは違う、あの甲子園の英雄『海堂(すすむ)のサインボール』第1号なんだぞ。

 直筆のサイン入りってだけでも貴重なのに、その中でも特に貴重な()()()()()()()()なんだよ。

 それをこんなに粗雑に扱ってくれやがって。

 マジで汚れのひとつでもついてたらと思うと冷や汗もんだ、全く」


 会話しながらも、怠ること無く、注意深く調べていく。

 ……………………。

 うん、どうやら大丈夫そうだ。余計な汚れは付いていない。

 ふう〜っ……。(ようや)く安堵の溜息だ。本当に余計な心配を掛けてくれる。


「あ〜、ごめん。そう謂や純ちゃんからの借り物だったわよね。我ながら迂闊だったわ」


 どうやら由希も解ってくれたのか、随分と素直に謝ってきた。なんとも殊勝なものである。

 まあ、持ち主がオレじゃなく早乙女純だと思っているからの態度だろうけど、それでも反省してくれたのだし、これ以上はまあ()しとしよう。これでもオレは懐の深い男なのだ。


「う〜ん、でもそっか。

 それって純ちゃんの宝物だし、純くんが気を遣うのも当然だよね。

 なんてったって、純ちゃんが大事にしている宝物を純くんに貸してくれたのって、それだけ純くんが信頼されているって証だもん、それを裏切るなんてできるわけないよね。

 だから純くんがあれだけ怒ってたのも納得かな。

 そんなわけだから純くん、これからも純ちゃんのこと裏切ったりしちゃ駄目だからね。

 私はふたりのこと応援してるんだから、絶対だよ」


 ……ちょっと、美咲ちゃん、こんな大勢の前でなにを()ってくれてるの?

 ほら、香織ちゃんが凄い形相で睨んでるし。

 ……って謂ってもその対象はオレではなくって美咲ちゃんなのだが。対して美咲ちゃんは実に堂々としたものでいらっしゃる。


「ごめんね、香織ちゃん。でも依然(やっぱ)り私は純ちゃんを裏切る気にはなれないから、香織ちゃんを気遣うことはできないの。本当ごめんね」


 いや、だからなんで当事者抜きで宣戦布告なんてしてんだよ。まあそりゃあ今さらじゃあるけどさ…。


 しかしこれだけ大勢の人前でって、本当勘弁してほしいものだ。

 これじゃオレって、アイドルふたりを天秤に架ける果報な二股野郎だと宣言しているみたいじゃないか。オレにはそんな気なんて全く欠片程も無いってのに。


「ふ〜ん、純ってば、まだ見限られたわけじゃなかったんだ。適切(てっきり)純ちゃんは浮気者の純から甲子園の英雄(ヒーロー)海堂(すすむ)に乗り換えたとばかり思ってたのに…。

 そっかぁ、まだ純なんかに未練が有ったんだ…」


 あと、由希が余計なことを呟いているけど……、まあこっちは美咲ちゃん達みたいに目立ってない分だけまだマシってことにしよう。



 でも、本当に今さらで、なんで今頃改めてって展開なんだけど。

 まさかこれって、世間に拡散とかしないよな?

 いや、仮令(たとえ)校内限定だったとしても、こう謂う面倒事が再加熱ってのは是非とも勘弁願いたい。


 頼むから変なフラグだったりしないでほしいよな、本当。

※1 作中で使っているように『諭す』には幾つかの同類の文字が有るようです。今回の作中では次のような意味合いで使っております。なお『さとす』はおまけです。

【諭す】はっきりわかるように教える。納得するように教え導く。

さとす】やさしく教える?

『喩』には『よろこぶ』という読み方が有り、旁の『兪』には『しかり』『和らぐ』等の意味が有る。

さとす】厳しく(酷しく?)教える?

 上部の『辟』には『刑罰』という意味合いが有る。

さとす】理解してもらい気持ちをスッキリと落ち着かせる?

れい』には『爽やかな』『落ちる』という意味が有ります。そのため作中では『ち着く』の当て字を使っております。

 因みに『泠』は『冷』とは別の字です。

さとす】諭す。疑問の晴れることあかつきの如し?


※2 作中の『愚痴をこぼす』の表現ですが、一般的には『こぼす』の字を使うようです。まあ『あふれる』のだから『溢す』が正しいという意見も少なくはないですが…。

 作者的には『こぼす』には次のようなイメージが有ったりします。

【溢す】器から満ちあふれさせる。

【零す】高所から落下させる。

こぼす】器を転覆させ、中身を散らす。本来は『ひるがえす』と読みます。

 と、まあこんな感じなわけで、この度は『堪忍袋から溢れる』ってことを強調するべく『溢す』を使っております。

 通常が『零す』なのは多分、頭部という人体の上部からと思われます。『垂れる』なんて別の言い方が有るのもそれが理由かもしれません。

 さて、ここからは捻くれ者の作者の私見なのでとばすことをおすすめします。


 これは作者の捻くれた考え方なのですが『言葉は水の如く高きから低きへ』なんて悪しき考えに囚われているため、言葉の類は『零す』なのだという考察だったりします。

 実際、会話って『一方的なのが理想』とばかりに『偉い人から下々へ一方的に告げるもの、反論は許されずただ黙認有るのみ』ってのが多いんですよね。しかも形式上は相手の意見も聞いているってのがまた悪質、実際のところは反論はもちろん、疑問や意見を述べることさえ禁止ってのが不文律として有る有様です。

 恐らくこれは、組織の秩序を重要視するという理由によるものでしょうから、仕方が無いと受け容れるべきっていうのが現実なのでしょう…。


 と、こんなことをぼやいてというか、愚痴ってしまいましたが、飽くまでこれは作者の劣等感を原因とする誤った価値観からくる私見です。読者の方までつられてネガティブにならないよう、そしてこんな傲慢な価値観を他者に強要しないようお願いします。


※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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