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夏の甲子園決勝前日 休養日 テレビ放送『白熱!夏の甲子園』にて -美咲ちゃんの予想、オレの予想-

 (いよいよ)明日は決勝戦。休養日である今日の『白熱!夏の甲子園』の収録は、これまでの試合を振り返りながら明日の結果がどうなるかを予想するというテーマで行なわれていた。


「私は依然(やっぱ)り大阪桐葉かな。

 だってあの大島くんが()るんだよ。

 決勝戦でもきっといっぱい打ち捲ってくれるはずだよ」


 美咲ちゃんは相変わらず大阪桐葉贔屓(ひいき)だ。

 美咲ちゃんはこういう派手に打ち捲くるタイプの選手が大好きだ。特に大島のファンである。

 そんな理由で大阪桐葉支持ってわけだ。なんとも解り易い。


「だよなぁ、多分そう言うと思ったよ。

 実際、一回戦の清洲工業戦では決勝点の本塁打(ホームラン)を1本、二回戦の南国戦では本塁打(ホームラン)を2本、単打(シングルヒット)1本で打点が6、三回戦の鍋島工業戦ではツーランを1本で2打点、準決勝の市立下松戦では本塁打(ホームラン)が2本ので3打点。本当、大活躍だよなぁ」


 まあ、その分敬遠も多かったんだけど、それが無ければもっと打ってたかもしれない。


「でしょ? 果然(やっぱ)り純ちゃんもそう思うでしょ?」


 オレの同意が取れたと思ったのだろう、美咲ちゃんは大興奮だ。


「でも、それでも依然(やっぱ)り横浜(みなと)学園かな。

 大阪桐葉(そっち)に最強打者の大島が()るってんなら、横浜港学園(こっち)にだって今大会の最優秀(ナンバーワン)投手(エース)の海堂が()るんだからな。

 ……って対抗し(言い)たいところなんだけど、流石にちょっと分が悪いかな」


「え? ちょっと意外。

 純ちゃんなら仮令(たとえ)多少の不利が有ったとしても、そこは根性で捻じ伏せるなんて言いそうだと思ってたのに」


 確かにそれは有るだろう。

 実際、準決勝の優曇華(うどんげ)学院戦では、打者一巡したところで少なからず安打(ヒット)(ゆる)し始め遂には王隠堂(おういんどう)本塁打(ホームラン)を打たれてたりするのだが、そこからは意地と根性の力尽くで相手を捻じ伏せ、そうやって勝利を攫んだわけだし。


「それでも、そういうのを繰り返してると結構負担が掛かるからな、無理が祟るとその影響は必ずどこかに出てくるはずだ。だから普段はできるだけ力を抜いて投げてるはずで、ヤバそうな時だけ本気で投げているはずだ。恐らくは優曇華学院戦で打たれたのもそういうのが理由だろう。

 で、王隠堂に本塁打(ホームラン)を喰らったことで本気になったってことだろうけど、当然その疲れは有るわけで、今日の休養日でどれだけ回復できるかが勝負の鍵となるだろうな」


 まあ一番の問題は、強打者・大島に対して海堂が全てで真っ向から勝負するだろうことだろうな。

 あいつが逃げに回ったところなんて見たことが無いし、恐らくは間違い無いだろう。

 他の奴みたいに敬遠とかすれば、戦術的にかなり楽になるんだけど、こいつにはそんな器用な真似はできないだろうから。

 男らしくて好感は持てるけど、チームのことを考えるならこれは致命的な欠点と謂って間違い無い。


「そっかぁ。それじゃ果然(やっぱ)り、純ちゃんの予想も大阪桐葉ってことになるんだ」


 オレの推論に美咲ちゃんが答えを出たとでも謂うようなことを言う。


「ちょっと待てよ。別にそんなこと言ってないだろ。

 確かに分が悪いとは言ったけど、勝てないなんて言った覚えは無いっての。

 だからこっちの予想は依然横浜(みなと)学園だよっ。海堂ならきっとやってくれるはずだ」


 それに強運を呼ぶ男(ラッキーマン)である捕手(恋女房)の山田も()れば、軍多利(ぐんだり)や町田といった頼もしい仲間達だって()いている。だからきっと勝て(やれ)るはずだ。


 そんな理由で、今回も当然ながらオレと美咲ちゃんの予想は別々。

 まあオレの予想はどちらかと謂えば希望的なものなのが悔しいけど…。


 ここでひとつオレに思わぬ幸運が。

 なんとオレと美咲ちゃんの予想というか支持する相手が(ちが)ったことで、籤引きの結果に関わらずそれぞれが自分の支持する相手の方の応援席へと行けることとなった。つまりオレは横浜(みなと)学園側の応援担当に確定したわけだ。

 まあ、それぞれが支持する相手と逆の応援席ってのも、間抜けというよりも違和感有り過ぎだからな。こうして試合前にそれぞれの支持する相手を番組で宣言しているわけだし。


 よし。これで明日は思う存分に横浜港学園を応援するぞ!

※作中に『無理が祟る』という言葉が出てきますが、実はこの『災いする』という意味の『祟る』という言葉は『神仏や怨霊が人間に齎す災厄』ということ以外でも使用されます。

 例としては『心労が祟る』等がそうです。


※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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