夏の甲子園十二日目 反省会にて -早乙女純、葛藤する-
ベスト8が決まった。
そして休養日を挟んだ今日はベスト4が。
勝ち残ったのは市立下松(山口県)、優曇華学院(奈良県)、そして大会有力候補の大阪桐葉(大阪府)とその対抗馬と謂われる横浜港学園(神奈川県)の4校。
「九州勢は3校揃って脱落かぁ。1校くらいは残るかと思ってたんだけどなぁ」
「だって相手が相手だもん、しょうがないんじゃないかなぁ」
美咲ちゃんの言う通り、相手が悪かったと謂えるだろう。
聖法(長崎県)の相手は大阪桐葉だったし、鍋島工業(佐賀県)は横浜港学園だ。そして熊崎(大分)は強打の優曇華学院と十分納得の試合相手だ。
因みに残った九州勢以外である岩手県代表・一関商業は市立下松に敗れている。
「でも、熊崎は二枚主戦投手の戸次と立花、抑えの衛藤で優曇華打線をよく抑えてたし、打撃でも姫野や安心院ががんばってただろう。結構惜しいところまでいってたんだけどなぁ」
「へえ〜、純ちゃんは熊崎高校が勝つって思ってたんだ?」
どうやら美咲ちゃんの予想は違ったらしい。
まぁ、この子の場合よく打つ学校が好きみたいだからなぁ…。
「否、そういうわけじゃないけど、でも同じ強打の京サブを破った学校だし、そういう期待って有るだろう?」
京サブはオタク揃いの学校ということで、散々ネタ枠と揶揄されていた学校だ。
だけど実際に試合をしてみれば今大会の大穴と呼ばれる程の活躍振り。そんな理由で結構気にいってた学校だ。
熊崎はそんな京サブを破った学校、だったら代わりに応援したくもなるってもんだろ。
「京サブって確か純ちゃんのお気に入りの学校だったよね。ふ〜ん、でもその理屈だと優曇華学院は同じ純ちゃんのお気に入りの流川高校に勝った学校だよ。
私はそっちの方を応援してるとばかり思ってた」
「…………。だあ〜〜っ!
そう言やそっちもそうだったあ〜っ!」
いや、しょうがないだろ。その時は熊崎は三塁側でオレの担当側だったんだし。
…………そうなんだよな。
こういうのって二回戦目からは嫌でも有ったし、そういうものだとは解っちゃいたんだけど、だから気にしないようにしてたんだけど、それでもどうしてもなぁ……。特にオレの関わった学校って。
「ちょ、ちょっと、純ちゃん…」
ヤバ、美咲ちゃんが怯いている。
でも…。
「しょうがないだろっ。自分の関わった学校って、どうしても愛着が湧いてくるってもんだろ」
特に春日山なんてなぁ…。
結局、直江の事情は訊かなかったので解らないまま。まあそれについては構わないんだけど、それでも思うところは少なからず有るわけで。
あいつってば今頃どうしてんだろうな……。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




