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夏の甲子園四日目 第二試合 (中編) -野○元監督も知らなかったらしい話-

 パクリのネタ、やっちゃいました。

 ただ、やったはいいのですが、作者には難しくてよく理解できてません。

 う〜ん、スポーツも今では頭脳の時代なんですね…。

 でも、やっぱり奇策よりは王道が一番。王道が王道たる所以です。

夏の甲子園四日目第二試合、鳥取県代表・羽衣石(うえし)高校と新潟県代表・春日山高校の試合は、0対1と1点リードで二回表、羽衣石の攻撃を迎えた。

 そして四番打者(バッター)の尼子に痛烈な(スリー)(ベース)(ヒット)(ゆる)し、春日山は(ノー)(アウト)三塁といきなりピンチ。

 う〜ん、果然(やっぱ)り女じゃ主戦(エース)投手(ピッチャー)は務まらないか…。

 それでも直江は、がんばった。

 後続の五番・五十嵐、六番・鍛冶木のスクイズを見事に失敗させて、たった今、七番打者の天鬼(あまき)(ライト)(フライ)に打ち取った。

 ふ〜っ、危なかしくって見てられない。

 まあ取り敢えず攻守交代(チェンジ)だ攻守交代。


 そんなわけで二回裏。

 投手が頼りにならない分、なんとか追加点がほしいところだ。

 1点程度じゃ不安だからなぁ……。


 ……って、はあ⁈

 なんだ⁈ なんで1対1になってんだ?

 いつどこで点が入ったってんだよ?

 そう思ったのはオレだけじゃなく三塁側応援席(スタンド)はもちろんのこと、他の客席からも疑問の声が聞こえてくる。


「凄いっ! ナイス頭脳プレイっ!」


 そんな中、意外な声が聞こえてきた。

 これってモニターの向こうの美咲ちゃん?


「ええ⁈ ちょっと、み……咲ちゃんってば、もしかしてなにが()ったか解ってんの?」


 ヤバ……、思わず美咲ちゃんって、本名で呼ぶところだった。

 否、それよりも。


「ふふふ〜ん。当然だよ。

 これはルールの盲点を突いた頭脳プレイなんだよ純ちゃん」


 うぐぅっ……。

 まさか美咲ちゃんからこんな台詞を聞くことになるとは……。

 (うぜ)ぇっ。まさか他人が(さか)しら()るのがここまで癪に障るとは…。

 増してやそれが美咲ちゃんだなんて……。

 だが、ここは我慢だ。

 どういうことか説明してもらわないことには、なにが起きたか解らない。


「う〜ん、詳しいことはよく解んないけど、予習で読んだ資料に今みたいなことが載ってたよ」


 はあ⁈ なんだよそれ?

 美咲ちゃんが読んだのって、資料といっても漫画だろ?

 つまり、漫画みたいなことが起きたってか?


「あ、有った。『ルールブックの盲点の1点』。

 2012年春の選抜。済々黌(せいせいこう)対鳴門戦か……。

『第4アウトとアピールによるアウトの入れ替え』って……。

 マジか? こんなことまで気にしなけりゃなんねえのかよ」


 なんか近くの応援の人が、今の件について検索してたみたいだけど、なんだそりゃ?

『ルールブックの盲点の1点』って……。

 セコっ。そんなことまでするってか?


 否、ルール上許されてるんだから美咲ちゃんのいう通りなんだろうけど。

 策を弄することを卑怯って謂うなら、送りバンドも敬遠も許されないってことになる。

 変化球ですら反則だ。

 そりゃあ、正々堂々、力と力の真っ向勝負ってのは恰好良い。

 力は王道、知恵は外道って、そういう意見も有るだろう。

 でもそれを()()()()()()()してる時点で、相手と同類。それこそが自分達の嫌う卑怯な戦術なんだけどなぁ。

 力を主張するのなら『剛能断柔(剛よく柔を断つ)』。

 知恵や技なら『柔能制剛(柔よく剛を制す)』。

 相手を否定するんなら、それを貫いてこそだろう。

 まあ実際はその両方を併せ持つ『柔剛一体』こそが大事なんだけど…。


 で、この羽衣石(うえし)高校だけど、今謂った『柔剛一体』を成す強敵。

 そんなわけで現在1対1の同点。

 ええい()げるな、仕切り直しだ。

 まだ二回裏が始まったばかり、ここからだ。

 ……って、あれ? もう攻守交代(チェンジ)

 もう少しがんばれよ春日山高校。

※『第4アウトとアピールによるアウトの入れ替え』

 『ルールブックの盲点の1点』とは、『ドカベン』の単行本35巻(文庫版23巻)、アニメでは147話で放送されたエピソードから派生した、『滅多に起こらないプレーゆえに、ルール上は正しく適用されているがプロ野球選手でも失念しやすいルール』で入った得点を意味するそうです。

 タイトルから誤解されがちですが、ルールブックに不備があるわけではなく、ルールブックにしっかり明記されている取り決めだそうです。

 滅多に発生しないケース故に選手や監督が知らない、もしくは見落としてしまう為に『盲点』という言葉が使われているんだとか。

 因みに『ラストイニング』でもこのネタが有るらしいです。

 2012年の第94回全国高校野球選手権大会第6日2回戦・済々黌 (せいせいこう)対鳴門戦。

 済々黌の攻撃で1アウト一・三塁でショートライナーで2アウトの後、鳴門側はエンドランで飛び出した一塁ランナーを一塁でアウトで3アウトにしたが、その3アウトの前に済々黌の三塁走者が一か八か三塁に戻らずに本塁へ駆け込み、鳴門側はこの三塁走者をアウトにするアピール(4つ目のアウトを取り、「これを3アウト目に置き換えて欲しい」と要求する)をせずにベンチに帰ってしまったので、得点が認められている。後に済々黌高校メンバーは「この漫画のこのプレーを知っていた」、監督は「過去にドカベンで読んでおり、練習にも取り入れた」と語っているらしいです。

 一方で、2019年夏の全国高校野球大会秋田県決勝の明桜高対秋田中央高では、守る秋田中央高が一死満塁での浅めのライトフライで2アウト、ボールを2塁に送って3アウト目を取ったが、その直後に3塁ランナーをアピールプレイでアウトにした(第4アウト)。そして第3アウトの置き換えが行われ、3塁ランナーのホームインは無効となったなんてことが。

 取材によると秋田中央高ではこのルールについて練習で触れており、監督が動くまでもなく、ファウルラインを超える前に内野手らやベンチメンバーが気づいて自ら行動を起こしたとの事。

 因みに米国の野球では、このルールの認知度が高いらしく、しっかりとアピールで得点を無効にするシーンも見られているそうです。

 なお、ルール上、アピールの有効期間は、

•まだ3アウトで無い場合は次のプレーを行うまで。

•3アウトが成立後の時は投手および内野手全員(外野手は対象外)がファウルラインを越えるまで。

となってるそうです。

[Google 参考]


※作中に出てくる『柔よく剛を制す』は三略の一節で『柔能よく剛を制し、弱能く強を制す。柔は徳なり、剛は賊なり。弱は人の助くる所、強は人の攻むる所なり。柔は設くる所有り、剛は施す所有り、弱は用うる所有り、強は加うる所有り。此この四者を兼ねて、其の宣よろしきを制す』とあるそうです。

 内容としては、『柔』『剛』『弱』『強』の『それぞれを兼ね備えてうまく使うのがよい』ということらしいです。[Google 参考]


※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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