夏の甲子園三日目 第一試合
どうも遅くなりました。すみません。
なんか気づけば前話までのひとつひとつに『いいね』なんて入れてくれた方がいたみたいで『いいね』が一気に114件に。ありがとうございます。でもこの『いいね』ってなんの意味があるのでしょうか?
まあ良いものなのは確かなのでしょうけど、理解できなくてごめんなさい。とはいえ、励みにはなっております。なんてったって、読者様からの貴重な好評価なわけですから。そんな理由で素直に嬉しいです。これからも宜しくご愛読いただければ幸いです。
さて、今回の話では、埼玉県、千葉県を悪く表現しておりますが、決して作者の本心ではありません。というか首都圏に対して辺鄙な田舎なんてありえないのでは…。
それにどこにだって他所には無い良いところが有りますし、地方もそんなに悪くはないかもしれないですよ。なんてったって、テレビも無い、ラジオも無い、車もそれ程走ってないなんて今どきそんな、某歌手の歌の文句みたいなことは無いでしょうしね。
日本全国津々浦々、これだけ多くの都市が有れば、お互いにライバル意識を持っていたりするところも有る。
有名なところでは東京と大阪、京都と奈良。東京と大阪はお互いに東西の中心都市だし、京都と奈良は今でこそ協調しているけど、6世紀頃の仏教文化を巡る対立が有ったと中学の授業でやっていた。
広島と大阪も、アレな人達の本場はどちらかとか、いや、もう少し普通人的に、お好み焼きの好み?みたいな意見の対立なんかも有名だ。因みにオレは広島派。なんといってもあのソースは絶対に広島だ。
で、この広島とこの前試合をした岡山なんかも、どちらが山陽地域の主要都市かといった対抗意識が有るらしい。
とまあ、一応は前向きな争いだけにまだある意味微笑ましいんだけど、今日、三日目の第一試合のこの両者はなぁ……。
「おらぁ、あんな文明開化も知らない未開の地の代表に、オレ達都会っ子・千葉県民の偉大さを教えてやれ〜」
今オレの目の前で、こんな敵意丸出しの応援をしているのは千葉県代表・房州学院高校。
なんかツッパリ系の男だらけの応援団だ。
別に男子校ってわけじゃないんだけど、まあ恐らくはこの恐い恰好のせいでだろう、女の子の姿が周りに見当たらない。
一方、美咲ちゃんのいる一塁側応援席の埼玉県代表・翔耀高校は普通に男女バランスの宜い応援って感じだ。
「みんなー、あんな俄な裏切り者の似非都会人どもに、目に物見せてやるぞー!」
こちらの応援団の声が届いていたのか、向こうの応援もこちらの敵意に応じるかのような感じだ。
近年変な映画が公開されたこともあり、過度に侮辱に敏感になってるのかも。
まああの映画の場合、ネタってことで明らかに過剰で現実的でないから寛容になれるんだろうけど、今の場合は完全に煽りだからな。対応も当然に受けて立つってことになるよな。
こんな巫山戯た両応援席だけど、選手達は至って真面目。真摯でそして紳士的。
球穢れなくなんとやらってやつかな。
流石は両者とも強豪犇めく激戦地区の代表。強さだけでなくその精神も一流だ。
それだけに、この応援振りはなんとも残念なんだよなぁ。
「ああ〜、負けちまったか。
練習試合の時には勝ってたのにな。
流石に本番は本気度が違う」
応援団長が残念そうに呟いた。
彼の言うように、この試合を制したのは埼玉県代表・翔耀高校だった。
…って、あれ? 練習試合?
オレの疑問に対する団長が説明はこうだった。
「うちと翔耀の野球部は交流が有って、今までも何度か練習試合を組んだことが有るんだ。
で、この前の練習試合の時々は勝ってたんだけど、いざ本番の甲子園大会で、このざまってわけだ。
ああ、くそっ、ちくしょー。
こうなったらあいつらには是非優勝してもらわないとな。
じゃないとうちが弱いって思われちまう。
仕方がない、帰ったらテレビであいつらの応援だ」
なるほどな。応援の時のあの台詞は、気安いまでに親交が有る学校だからこそってわけか。
でも、公の場だし、テレビにも映るんだからもう少し考えるべきだよな。学校のイメージが悪くなっても知らないぞ。
…っと、ヤバい。もう少し話を訊きたいけれど、漸々インタビューにも行かないと。
それにしてもライバルか。
『強敵』と書いて『とも』と読むって関係なわけだ。
なんか美いよなそういうの。
なんだかインタビューが楽しみだ。
きっと好いコメントがもらえそうだ。
負け試合だけど、こういうのもアリかもしれない。
ああ、またひとつ高校野球が好きな理由が増えた。
この仕事受けて本当好かった。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




