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『リトルキッス』

 学校が終わるとオレはすぐ、星プロへと向かった。

 そして、(ひじり)さん、織部さんのもとへ。

 今のオレは『早乙女純』状態だ。

 訓練生『男鹿純』では、この二人に会うのはまず無理だからだ。

 契約外である平日にやって来たため、何事かと二人を心配させてしまったのだが、こっちは重要案件を抱えているのだ、そんなこと気にしてられない。

 早速、要件を切り出す。

「実は、曲を作ってみたんで、()てもらえませんか」

巫山戯(ふざけ)るのも大概にしろっ」

「まあ、いいじゃないか。

 多分一昨日のことが原因だろうし、それなら無下(むげ)にするわけにはいかないだろう」

 見てもらえるか不安はあったが、どうやら杞憂に終わったようだ。

 聖さんの言っていたように、罪悪感を感じたせいかもしれないけど、それでもその懐の深さには感謝である。

 では早速、聖さん達の気が変わらないうちに、曲の入ったメモリーカードを渡すとしよう。

 流石に、直ぐにといくわけもなく結果は後日ということになった。


          ▼


 デビュー曲が決まった。

 タイトルは『Little Kiss』

 幼い子供達の初々しい恋愛模様を(うた)たった曲だ。

 作詞作曲『JUN』編曲『天宮聖』

 そう、オレの作った曲は、聖さんの手直しを受け、晴れて採用となったのだ。

「ねぇ、もしかして、この『JUN』って、純ちゃんのこと?」

「ああ、そ…」

「それは確かにその曲はオレが用意したけど、それが何処の誰かってのは、本人のプライバシーに関わるため答えられねぇんだよ」

 聖さんが答えるのに被せ遮る。

 ごめんなさい、聖さん。

 でも、一応、理由はあるんです。

「どういうつもりだ、純」

「だってそのほうがおもしろそうでしょ。

 正体をあやふやにしとけば、美咲ちゃんみたいに勘違いする奴が出てきて、話題にもなりそうだしさ」

 本当ならオレが用意したってのも言いたくなかったのだが、それに関しては、オレと聖さん達が会っているのを見た奴がいかねないので諦めた。

「ふむ、それはアリかもしれないね」

「えぇ〜、私にも教えてくれたっていいじゃな〜い。純ちゃんのいじわる〜」

「曲も決まったことだし、ここらでユニット名も決めちゃいませんか?」

 いい加減、面倒なので話を逸らすことにしよう。

「そうだね。で、どんな名前がいいんだい」

 え、オレ達で決めていいんですか、聖さん?

「え〜っと、それじゃあ…」

「はい、却下」

「ちょっと、まだ何も言ってないよ、純ちゃん」

「何言ってんだよ。前科があるのをもう忘れたのか?」

 美咲ちゃんの命名のセンスが()()なのは、未だに記憶に残るところだ。

「もう、純ちゃんのいじわる!」

「いっそ、デビュー曲と同じでいいんじゃないですか。結構よく聞きますよ、そういう話」

 兄貴達のバンド名もそうだしな。

「ふむ、そうなるとLittle Kissか」

「案外いいかもしれませんね」

「うん、とってもかわいいし、私も賛成」

 というわけで、オレ達のユニット名は『リトルキッス』に決定した。


          ▼


 2月に入った。

 ただ、好事魔多しというわけで……はなく、今回は、魔でなくさらなる好事が重なった。

 オレ達のデビュー曲は、さる有名菓子メーカーの新商品のCM曲に採用された。

 その新商品は『リトルキッス』という名のキャンディで、キャッチコピーは初恋の味。

 名前といい、キャッチコピーといい、オレ達のユニット名と曲に合わせて企画したとしか思えない、あまりにも都合のいい話だった。

 しかも、そのCMが流れ始めると、オレ達の存在は一躍話題となり。

 そして、3月にもなると遂に、テレビ出演のオファーがきたのであった。

※作中の『()る』は、作者オリジナルの当て字です。ご注意下さい。

 一方、『無下(むげ)』は正しい用法のようです。『無碍』とは同音異義語で間違いそうですが、こっちは自由自在を意味するようで、本作今回の用法だと意味が正反対となるようです。あと『同音異 () 語』って『同音異 () 語』って書くものだと思ってました。日本語って難しいですね。

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― 新着の感想 ―
 純君が主人公らしく、やる気をだして、才能開花をしているのはいい感じですね。  でも、由希ちゃんが出てこないのは、寂しい(笑)  子供嗜好の変態 ← 吹き出しました!  また遊びに来ますー!
こんばんはです。 (* ̄▽ ̄)ノ 女装は当然として……。 アイドルで通用するレベルで、 女性に間違われる でも、ヤンキーと普通にケンカしてくる……。 素でも結構女性っぽいのか、 素で行けるタイプな…
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