野球狂の謳?
7月。期末試験が終わり、終業式を終えると愈夏休み。
なんと高校生ともなると、中学生の時みたいに夏休みの宿題という物が無かった。
否、他所の学校だと違うのかもしれないけど、とにかくオレ達の学校には、夏休みの宿題という物が無かった。
なんでもうちの学校の方針で、生徒達にはその分の時間を、部活やバイト、その他の趣味なんかに当てて有意義に使ってほしいってことらしい。
お陰で美咲ちゃんは大喜び。
オレも去年みたいに、夏休み最終日に、宿題を手伝わされるなんてことにはならずに済むわけだ。
まあ、その分仕事が入ってくるわけだが…。
「ふぇ〜ん、こんなの聞いてないよ〜」
美咲ちゃんが悲鳴を上げる。
オレ達の前には山積みの本。
この度受けた仕事に必要な予備知識を得るため、現在オレ達はその勉強中だったりする。
まあ、宿題から解放されたと思ってたところでこれだ。勉強嫌いの美咲ちゃんには嘸かしってことだろう。
今回受けた仕事、それは高校野球のレポーターだった。
球児達と同じ高校生からの目線でということで、オレ達が選ばれたというわけだ。
そんなわけで、付け焼き刃ながらもいろいろと本を読み漁っているのだが…。
「なにをいきなり弱音を吐いてんだよ。
美咲ちゃんが読んでるのは漫画だろ」
そう、美咲ちゃんの前に積まれているのは漫画ばかり。それ対してオレの方は入門書とか、統計資料の類ばかり。多少は毒吐いてみても免いはずだ
「確かにそうだけど、結構難しいのも有るんだから」
そう言いながら、美咲ちゃんがオレに一冊の本を渡してくる。当然漫画だ。
タイトルは『とにかく振りかぶって』
取り敢えずあらすじはおいておいて……。
なるほど、結構真面目な考察を含めた作品だった。
これなら美咲ちゃんの言うことも一理有る…?
…って、ちょっと待て。
美咲ちゃんが読んでるのって『ド○ベン』じゃないかっ!
確かにそれは野球漫画としては必読だろう。
ルールとかそういったことに触れることも、偶にだけど有る。
でもそれって基本的にネタだろ。大体がめちゃくちゃなことばかりだ。
流石に常識外の超人は出てこないし、主人公は正統派だけど、その周りのやってることは奇妙奇天烈なことばかり。
なんでそんなの持ってきた?
これらの本を用意しただろう人物に、つい不信を抱いてしまう。
……否、まあネタか。
多少はこういうことにも通じておく必要が有るって判断なんだろう。
……でも、現実に起るのか、そんな珍プレーって?
例えば、ベースの踏み忘れとか…。
確かその場合はホームランでもアウトだったよな。アピールは必要だった気がするけど。
つまり、美咲ちゃんはそんな珍知識担当ってわけか。
未だにボケ役扱いなんだな、美咲ちゃんって…。
なんとなくだが、この仕事におけるオレの役割が解ってきた。
恐らくだけど、オレと美咲ちゃんの漫才的掛け合いを交えながら…否、雑えながら、そんなリポートを期待しているのだろうな。
でもマジで良いのか?
混じえながらになりそうで、つまり周りが混乱しそうで怖いんだけど…。
うん、この企画考えた人って恐らく冒険好きか変人だな。
話題的には直球で、人気はど真ん中かもしれないけど、仕事は素人だけに大暴投。下手すりゃ企画に致命的。
番組打ち切りは無いにしたって、視聴率的に責任問題覚悟の大勝負だ。
幾ら番組企画って説っても、現場の人間は、そんな重大責任は堪らないっての。
まあ、受けてしまったからには仕方がない。
取り敢えずはやるだけやってみよう。
そんなわけでまずは勉強だ。
人事を尽くして天命を待つ。あとは野となれ山となれだ。
はぁ…。大人って皆こうやって働いているんだな。
※作中に出てくる『まじえる』ですが、『交』『雑』『混』と使い分けているため、その意味の違いについて説明すると次のようになります。(作者独自の解釈です)
【交える】
関係を持たせる。
別種のものを共存、もしくは対立させること?
混ざったものの区別がつく場合に用いる。
【雑える】
掛け合せる。
別種のもので純粋さを失う場合に用いる。
普通は『混ぜる』が使われる?
【混じえる】
別種のものを溶け合わせひとつにする。
混ざったものの区別がつかない場合に用いる。
正しくは『混ぜる』。
因みに、同じ『まじえる』と読む漢字には次のものが有りました。[Google 参考]
【綜える】まとめる。すべる。
【糅える】食料を混ぜる。
なお作中での内容は、純達の『交じえる』話にボケが『雑ざる』ことにより、最後には『混ざり合』って別の話っぽくなり、何が言いたいのか混乱して分からなくなるという意味合いです。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




