お疲れさまでした!明日も頑張ろう!
その後、店番を次の人に任せ、俺は自由に。
この後はどうしようかな~と考えていると、見知った顔が。あれは……。
「母さんじゃん。それに詩織さんも」
なお、詩織さんとは、紗也の母親だ。
「あ、和也。偶然ね」
「和也君、紗也はどこか分からない?」
「紗也とは午前中は一緒に行動してたんですけど、午後は見かけてないですね。ついさっきまで、俺はそこで店番を、紗也は音響担当で第一体育館にいたので」
「そうなのね。うーん、友達と見て回ってるのかしら……あら?」
何かに気が付いた詩織さん。振り返ると……
「お母さんに由香さん! それにかず兄も! 何喋ってたの?」
「紗也がどこにいるかって話をしてた」
「そうなの? それじゃあ、ちょうどよかったのかな」
「ええ。せっかくだし、案内してくれない? 由香さんはともかく、私は高六丘高校は初めてだし。あ、友達と見て回る予定だったなら、そっちを優先してね」
「うんん、大丈夫よ。若愛ちゃんは早瀬君と一緒に回るみたいだから、私とは別行動」
「へえ! あの二人、そこまで仲良くなったんだ! そっかそっか。末永くお幸せに、だな」
「そうなの! ゆっくりと距離を縮めてるみたいよ」
「二人らしいな」
「そうね」
「そっか、それじゃあ、案内してもらおうかな。和也君はどうする?」
「俺は……。誰かと見て回る約束も無いので……。母さんはこれからどうするの?」
「私? 特に考えてないけど、詩織さんと行動しようかなと。着いてくる?」
「んじゃそうするよ」
その後、紗也と俺は、母さんたちを案内した。時折、クラスメイトに会って「もしかして母親? どうも、クラスメイトの○○です」的な会話をした。中学校の頃は、親と一緒にいる所を見られるのは恥ずかしかったけど、今は何とも思わないなあ。これが成長ってやつかな。
◆
そうこうする内に、時間は流れ。文化祭一日目は終了となった。教室に戻り、終礼を行う。
「えー、という訳で、一日目を無事終える事が出来ました! みなさん、お疲れさまでした。明日は片付けで忙しくなるので、今日、軽く打ち上げをしたいと提案すると無事許可が下りました!!」
「おおーー!」
「と言っても、ジュースとお菓子くらいしかないですけどね。反省会をしつつ、飲み食いするって感じで。それじゃあ、各自、好きな飲み物とお菓子を取ってー。あ、まだ飲まないでくれよ。乾杯するから」
「よし、全員に回ったかな? それじゃあ、一日目の終了を祝って、そして明日の成功を祈って。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「さて、では早速だが、反省会をしようか。俺は特に目立った問題は無かったように思うけど、どうだった?」
「はい、私から。私、店番の担当が14時~14時半だったのだけど、暑くて大変だったわ。可能なら、明日までに扇風機を用意してほしいわ」
「なるほどなるほど。暑いという意見は、他にも挙がっていたな。採用するよ。他には?」
「衣装の一部が破れてしまったんだけど、どうしよう? 俺、裁縫なんてできないから、誰かにして欲しいんだけど……」
「それなら、私がやっておくわ。衣装の手直しや修繕は私の領分だから」
「助かる! 迷惑かけてスマン!」
「いえいえ。それに、それって大道具を運んでるときに出来たやつでしょ? 悪くなんてないって」
「あ、俺のボタンも……」
「一ノ瀬? あんたはチャンバラごっこ中に外れたんでしょ? 自己責任よ。自分で手直ししなさい」
「うぐ! ごめんなさい……。でも、俺、ボタン付けなんて出来ないぞ……」
「それくらい出来ないと、女の子に嫌われるわよ? 特に、結婚ともなれば『この人、鍛冶が一切できない人か……』って思われたら、モテないわ」
「あ、良く考えたら、俺ってボタン付けくらいは出来るわ。自分で頑張るから、気にしないで」
「「「あははは」」」
「他に困った事は……。特にないみたいだな。じゃあ、明日のスケジュールの再確認をするぞ。明日の公演は10時15分からだ。今日は午後からだったが、明日は午前なので、注意して頂きたい。その後、小道具の中で売りに出す物は直ぐに店に運んで売る。それ以外の小道具の内、分解して捨てる予定の物、具体的には段ボールで作った鍬や鋤など、は随時分解するから教室の後ろに運んでくれ。あとそれ以外、例えば私物の道具、は教室の前に置いておく。終礼時に各自持って帰る形になるな。質問は?」
「はい! 分解する前に集合写真を撮りませんか?」
「あー。どうしようか。先輩から聞いた話なんだが、それをしていると、想像以上に帰りが遅くなったりするらしくてな……。実際、去年もそれで問題が起きたらしくてな。うーん……。それなら、今日撮影しておこうか? どうだろう?」
「「「異議なし」」」
「よし、それじゃあ、記念撮影だ。っとその前に、他に質問や意見は? ……特にないか。それじゃあ、集合写真を撮って、その後解散だ!」
◆
先生「撮った写真の内、一番移りが良かった物は現像して配るわね」
萩原「ありがとうございます、先生」
先生「それ以外は……どうしましょ? データでみんなに渡すべきかな?」
萩原「あー。そうですね。そうして頂けると嬉しいです」
先生「ただ、その画像を公共のSNSには流さないように。厳重注意しておいて」
萩原「かしこまりました」




