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マジックショー

◆Side 和也


 想像以上に本格的だった占いを楽しんだ後、俺達はマジックショーを見に行くことにした。これはマジック同好会の主催するイベントであり、クラスの出し物とは違う。よって、クオリティーも段違いに凄いと思われる。


「Ladies and Gentleman! マジック同好会のマジックショーを見に来てくれてありがとな! 司会を務める松井、もといMr.Mだ! さて、これは俺の持論だが、マジックとは『如何にして観客の認識を欺くか』だと思っている。目だけを欺くんじゃない。起こった現象をどう記憶するか、つまり認識を欺くんだ。観客の皆様は、このマジックショーを通じて、認識の脆弱(ぜいじゃく)性、つまり人間が如何(いか)に騙されやすいかを実感してもらえればと思う。それでは……It's a show time!」


 ショーが始まった。まずは手始めにとばかりに司会を務めていたMr.Mが何も持っていない手の平から突然紙吹雪を出現させ、パッと投げる。その紙吹雪に合わせて、トランプを持った女性が現れた。


「Hello, boys and girls! ここに、トランプがありまーす!」


 パッと手の中で扇形に広がり、数字の面を俺達に向ける。見た感じ、数字はバラバラのように見える。


「今回使うのは、四枚のエースと四枚のキングでーす! それじゃあ、ちょっと探しますね。ところで、マジシャンは触っただけでトランプの枚数がだいたい分かるってよく言われるんですが、もっと極めたら触っただけで欲しいカードの位置が分かるようになるんですよ」


 そう言って、彼女はトランプの山をすっと2分割、4分割と分けた。そして、四つのトランプの山の一番上をめくる。すると……


「はい、まずは四枚のキングが揃いましたね!」


 それは全てキングだった。我々観客から「おお!」という驚きの声が上がる。


「そして続いて……エースを取り出そうと思います! まずはこの山」


 四分割したトランプの山の一つに手を伸ばし……


「こうしてフッと振ると! 一枚飛び出してきました!」


 右手に掴んだ山を軽く振ると、「パチン!」という音と共に、一枚のカードが飛び出してきた。それを左手でキャッチした彼女は観客に向き直り……


「これを見てみると……。じゃん、エースです!」


 すげえ! どうなっているんだろう?


「他の山からも抽出しましょうか。それ! それ!」


 彼女がトランプの山を振ると、各山から一枚ずつトランプが飛び出す。そして、その両方がエースだった。


「最後の山からも……それ! じゃん! あれ?」


 最後の山からも一枚飛び出してきたが……それはエースではなくジョーカーだった。失敗か?


「あれ? ジョーカーは混ぜてないはずなのに……。少々お待ちを。こういう時はフッと息を吹きかけてッと。じゃん!」


「「「え?」」」


 なんと、先ほどまでジョーカーだったカードが、一瞬にしてエースに切り替わってしまった。すごいなあ……。失敗したと見せかけて成功させるテクニック、という事なのだろう。

 何がすごいって、マジシャンの言った『あれ? ジョーカーは混ぜてないはずなのに……』が本当に焦っているような声だったこと。観客の我々を「あ、失敗したな」と思わせたという意味で、彼女は我々の目を欺いたのではなく心を欺いたと言えよう。凄い……。


「途中、ハプニングもありましたが、どうにかエースとキングを揃える事が出来ましたね。それじゃあ、早速本番と行きましょう! 改めて確認しましょう。まずはエースが1、2、3、4枚ありますね」


 一枚一枚、俺達にカードを見せるマジシャン。確かにエースが四枚ある事を確認した。


「これは後で使うので黒板に貼っておきましょう。残ったのはキングが四枚。1、2、3、4枚ありますね」


 四枚のエースを磁石を使って黒板に貼り付ける。そして、同じように一枚一枚、俺達にキングを見せた。確かにキングが四枚ある事を確認した。


「それでは、今からこのストローで、カードの色を吸い取ります。スーー!」


 胸ポケットに入っていたストローを咥え、キング四枚から何かを吸い取るような動作をする。


「さて、どうなったか見てみましょうか! じゃん!」


 四枚のカードを扇形に開き、俺達に見せる。


「「「わあ!」」」


 なんと、カードの内、一枚から絵柄が消えていた。白紙一枚とキングが三枚になっているのだ。


「今度は、色を戻してみましょう。プーー!」


 今度はストローを四枚のカードに吹きかける。しかし……


「ゴホ! ゴホ! 失礼、ストローが喉の奥に当たって……。失敗したかな?」


 そう言いつつ、四枚のカードを俺達に提示する。すると……。


「あれま。白紙のカードをキングに戻すはずが、一枚がクラブのエースになってしまいましたね……」


 なんと、キング三枚とエース一枚に変化していた! どうなっているんだ?! まさか魔法? 魔法使いなのか?!


「困りましたね……このままでは、クラブのエースが二枚になってしまいます……。よし、少々お待ちを」


 そう言って、再びストローを咥えたマジシャンは、黒板に貼ってあるエースの束に向かって息を吹きかけた。


「これで、こちらに貼ってってあったクラブのエースがクラブのキングに変化したはずです。どなたか、確認してみますか? それでは……そこのあなた!」


「え? 俺?」


 まさかの、俺が当てられた。


「そうですそうです。どうぞ、確認してみてくださいな」


「はい」


「四枚のカードを観客席に向けてパッと開いてください! せーの!」


「「「おおーーー!」」」


 なんと、三枚のエースに混ざって、クラブのキングが挟まっていたのだった。


「お手伝い、ありがとね。これで私のマジックはお終い! 楽しんでもらえたかな!」


 盛大な拍手を背に、彼女は舞台裏へと消えて行ったのだった……。



 この後も、カードマジック、コインマジック、輪ゴムを使ったマジックなどを見た。どれもこれも全く仕掛けが分からなかった……。

 なお、こっそり、精霊濃度を測ってみたが、通常の値を示していたので、彼女たちが実は魔法使いという事は無いようだ。







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