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開会式


「役が無い人は、ちょっとこっちを手伝ってー!」


 む、なんだろうか? 声のした方へと移動する。


「小物店の準備を進めましょう。劇の小道具や背景で使用する物以外は、並べておいても問題ないでしょ?」


「了解だ。それにしても、結構な量が出来たなあ……」


「全員で作ったものね。手先が器用な人が多くて助かったって感じよね。さ、準備していきましょ」


 レジンで作ったアクセサリーや刺繍されたハンカチを整列させていく。劇に携わっていない分、こう言う所で役に立たないといけないな。



 その後、程なくして開会式の時間になった。まずは、校長先生の挨拶である。


「えー。本日は雲一つない。えー。の秋晴れの下。えー。紅葉した紅葉と共に。えー。文化祭を開催できたことを。えー。大変うれしく思う。えー。こうして、天候に恵まれたのも。えー。諸君らが真剣に。えー。準備を頑張ったことの。えー。賜物であろう。ただし、諸君らには。えー。学生の本分はあくまで。えー。勉強であるという事を。えー。忘れてほしくない。えー。この文化祭も。えー。あくまで学習の一環である。えー。この文化祭を通じて。えー。多くの事を学ぼうという。えー。姿勢を見せて貰いたい。えー。……」


 俺が真面目に聞いたのはここまで。校長先生の話のテンポが遅くて遅くて、途中から集中力が切れてしまうのだ。他にもありがたいことを言っていたんだと思うが、俺の頭の中には入ってこなかった。

 その後、生徒指導部からの諸注意などを聞かされ、そして……


「続いて、生徒会長からの挨拶があります。白鷺会長、よろしくお願いします」


 続いて生徒会長のあいさつである。この会長は、はきはきとした声とその容姿から、生徒からの人気が高い。萩原が生徒会に入ったのも、会長とお近づきになる為だったからな。


「とうとう、この日がやってきました! 待ちに待った文化祭当日! こうして秋晴れの下文化祭を迎える事が出来て、本当にうれしく思います。さて、皆様に文化祭のパンフレットを配ったのが今週の月曜日でした。それに目を通しましたでしょうか? 私は隅から隅まで目を通しました。この学校で『文化祭』が始まった経緯を知ったり、開催各クラスの出し物紹介を読んで早く見てみたい気持ちになったり。そして、去年起きた問題とそれを踏まえた諸注意を読んで、改めて気を引き締めたり。今一度、皆さんにも、パンフレットを読んで頂きたく思いました。さて、話は変わって、先ほどから先生方からも諸注意がなされたように、文化祭はどうしてもタガが外れがちです。しかし、それで問題を起こしてしまっては、楽しい文化祭が台無しになってしまうかもしれません。十分気を付けてください。ちなみに、『タガが外れる』の『タガ』は桶を固定している輪の事を指します。それが外れると……水があふれちゃいますよね。くれぐれも、タガを外し過ぎて、楽しい文化祭に、水を零さない、いや、水を差さないように。おっと、長々と話してしまったな。早速、文化祭を始めようではないか。私が『楽しむぞ!』と言うから、みんなは『おー!』と言ってくれ。それでは。コホン」


 白鷺会長は、一呼吸おいて……。そして


「文化祭、楽しむぞ!!」


「「「おー-!」」」

「「「フォーー!」」」

「ガオーー!」


 全校生徒が大声で叫んだ。俺も勿論叫んだ。なお、若干変な叫び声が聞こえた気がしなくもないが、気のせいという事にして置こう。


 そして。大声に合わせて、吹奏楽部が文化祭のテーマ曲を演奏し始めた。最近、若者に人気のボカロ曲である。

 テンポのいい曲が流れてきて、我々生徒も大はしゃぎ。いつしか手拍子を叩くようになり、中にはリズムに合わせてぴょんぴょん飛び跳ねる者まで出てきた。



 こうして、文化祭が始まったのだった。



 さて。我々の舞台は午後からなので、午前中は自由に文化祭を回る事が出来る。マジックショーや占いなどの定番物から、科学部による大実験まで、面白そうなイベントが盛りだくさんである。早速見て回りたい。

 ちらっと横を見る。開会式は出席番号順で並んでいるので、俺の隣にいるのは紗也である。

 俺の視線に気づいたのか、紗也もこちらを見てきた。視線がぶつかる。


「一緒に見て回らない?」


 自分でも半分無意識の内に、俺はそう言っていた。恋人でもないのに、こんな提案をするのは変ではなかろうか? 言い終わってから気が付くも……。


「……ええ。もちろんいいわよ!」


 一瞬の逡巡の後、紗也は同意してくれた。文化祭を一緒に回ってくれる人が出来て良かった。



「ちなみに、見たい物とかある? 俺は、パンフレットをちゃんと見てないから……」


「実は私も。まずは、行きたい場所を決めよう」


 二人でパンフレットをのぞき込む。うーん、どうしようかなあ……。


「この占いとかどうかな? あ、かず兄はこういうの信じないんだっけ?」


「嫌な結果は信じないけど、いい結果は信じるかな。紗也は?」


「あはは。確かに、それはいいかもしれないわね。私も嫌な結果は気にしないようにしているわ。だけど、文化祭でやってる占いだし、嫌な結果は出ないんじゃない?」


「凄いメタい発言だな。でも、同感。それなら、楽しめそうだな。行ってみようか!」


 かくして、2年E組の『未来視の館』に向かう事になったのだった。





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