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「では、まずは今後の方向性を再確認しようと思います。まずは、暁を中心に演じやすそうな古典文学を集める。そして演劇部を中心に台本を作成。その台本をシャルローゼさんが中心となって英語に翻訳。この時、重要構文や重要単語を混ぜ込むようにしたいと思う。役の振り分けを行って、演者は台本の暗唱を、その他のメンバーは小道具の製作をする。こんな感じでいいですかね? 特に、暁と演劇部の皆さん、そしてシャルローゼさんには負担がかかるけど、大丈夫かな?」



「大丈夫、そんなに負担じゃないから。そういえば宇治拾遺物語って書いたけど、今昔物語とか徒然草とかも含めて、問題ない?」


「任せる」


「分かった。じゃあ、演じやすそうなストーリーをピックアップしておくよ」


「お願いする」


「その中から、どれを演じるか決めるのは、どういう形で決める?」


「うーん。どこかのタイミングで多数決を取ろうと思う。取り敢えず、暁は出来るだけ多くピックアップしてくれ。それで、そのデータをワープロファイルで渡してくれると助かる」


「かしこまり!」



「台本製作は任せて! 物語を台本に変換するのは、私達の得意分野だから」


「おお! 頼もしいな、福原。他の活動も忙しいだろうし、あまり抱え込まないようにな」


「だいじょーぶ、だいじょーぶ。締め切り前に比べたら、こんなの平気よ」


「流石はプロだな」


 そういえば、福原は中学時代に小説コンクールで上位入賞し、その後は作家として活動しているんだっけ?そう言う意味で、彼女の物書きとしてのキャリアはプロと言っても問題ない。



「翻訳は任せてください!」


「よろしくお願いする。日本の受験における重要構文一覧を渡すから、それをみて、使えそうな構文は盛り込んでくれると助かる」


「分かりました」



「それから、小道具製作の担当について。先生が教えて下さるそうだし、初心者でもどんどんチャレンジしてほしいと思っているけど、ひとまず経験者が何人くらいいるのか知りたいな。編み物とか刺繍とかいう意見が出たけど、実際に得意な人って何人くらいいる?」


「小鳥遊さん、すっごく上手よ! ね?」

「わ、私ですか? ええと……。はい、手芸は得意です……」


「おお! 凄く助かる。他には……」


「編み物の経験はないけど、刺繍なら得意よ!」


「へえ! 佐々木ってそんな特技があったのか! そういえば、この前生徒会に届けられた落とし物のハンカチって……」


「ええ。あのハンカチに施した刺繍は私が作ったものよ」


「うひゃあ! それは凄いな。クオリティーが半端なかったし、既製品かと思ったよ。それじゃあ、物語の雰囲気に合った刺繍を作ってくれると助かる」


「お任せあれ! あ、だけど、デザインは他の子にお願いしたいかも」


「美術部の出番だな。美術部と言えば……」


「私ね。まっかせて!」


「助かる、桜田。美術部の活動でも忙しいだろうが、よろしくお願いする。他には……」


「紗也ちゃんの鞄についてるアクセサリーって自作って言ってなかったっけ? 手芸とはちょっと違うかもだけど、ハンドメイドって意味ならいいんじゃない?」


「あ、これはかず兄から貰ったものだから……」


「あ、そうなんだ」


「暁って変な才能を持ち合わせてるよな。古文漢文とかアクセサリー製作とか。ともかく、協力してくれるか?」


「あー。出来る限り頑張ってみる。試作品を作ってみるから、判断はみんなにお任せする」



 こうして、各々の役割が決まっていった。俺も参加する場面があるようだし、意外と充実した文化祭になるかもしれない。

 これは、クラス全体を巻き込んで、イベントを盛り上げようとしてくれる萩原の人徳と会話スキルのおかげだな。感謝である。



 その日の放課後。部屋の隅から、古典文学が載っている本を引っ張り出して、久しぶりに読み返した。有名どころは中学時代に読んでしまっているので、最近は読み返していない。初めて読んだ時のことを思い出しながら、一部改変した原文を読み進める。


「ホラーとして、これは入れておこうか。……ラブロマンスはどうだろ? 一応候補に入れておくか。コメディー要素といえば、これだよな。これは、ちょっと長めのミステリー。使えそうだな」


 ピックアップし、その内容をワープロにまとめていく。途中で、シャルローゼさんにも連絡し、共同で面白そうな作品をまとめ上げた。


「和也ー! テストプレイしてくれないか? あれ、今忙しい?」


「あー。文化祭関係でちょっと。でも、ちょっと休憩してもいいか。テストプレイに付き合うよ」


「和也が家でも文化祭に取り組むなんて……! めっちゃ楽しんでるじゃないか!」


「なんか、古典文学を劇にするってのが意外とウケが良くてさ。それに決まったんだよ」


「マジかー。流石は文系クラスだな。理系クラスだったら、絶対反対されてるぞ」


「だろうな。で、今回はどんなゲーム?」


「脱出ゲームだ。自分で作った脱出ゲーム程、楽しくない物は無いからな」


「なるほど。それは確かにテストプレイが必須だな」


「ちなみに、紗也も呼んだんだが、一向に謎が解けてなくてな……」


「ああ……。紗也ってそう言う系、苦手だしな。どれ、俺がクリアしてやろうではないか!」


 と言う感じで、休憩を挟みつつ、提案書を書き上げたのだった。





紗也「慧姉……ここから先に進めないんだけど?」


慧子「いや、そこはそんなに難易度高くないんだが? 和也はどうだ?」


和也「そこは突破出来たけど、次の一手で詰まってる……」


慧子「嘘ぅ……。難しすぎたのかなあ……」


 謎解きと言うのは往々にして、作り手からすると簡単でも、第三者的には難し過ぎる事があると、今回の事で分かったのだった。







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