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せっかく留学生がいるんだし……

「英語でする劇って面白そうじゃない?」


 誰かが言った。舞台演技系に分類されている項目に目を通すと、確かにその項目があった。


「ああ、それを書いたのは俺だ。せっかくこのクラスには留学生がいるんだし、どうかな?」


 萩原の案だったようだ。確かに悪くはないと思う。シャルローゼさんの力を借りて、他のクラスでは実現できない企画を組む。凄く楽しそうだ。


「それって、演者は英文を暗記しなくちゃいけないよな? きつくないか?」


「それは……ガンバレとしか言いようがないな」


「鬼畜!」


「でも、英文の暗唱は勉強になるぞ? 『あっ、これ文化祭で覚えた表現だ!』みたいな」


「某通信教育の宣伝広告みたいな言い方するなよ。かえって怪しく聞こえるぞ?」


「それは俺も思った。まあ、俺の案はそんな感じだ。他の案とも比較しつつ、色々案を練ってくれ」


「英語でする屋台とかでもいいんじゃない?」

「それ、客が来ないわよ?」

「あ、確かに」


「お前、英語得意だよな? 英語の曲とかも歌えるし。英語の劇に決まったら、お前が主役だな」

「ぼ、僕はそんなの無理ですーー!」

「早瀬をからかって遊ぶなよ……」


 おお。今の案で、さらに議論が活性化した。はてさて、どうなるかな。



 15分ほど、周囲の人とあれやこれやと話し合う時間が設けられ、その後萩原が手を打った。


「いったん静かにしてもらえます? どうも。ブレーンストーミングも兼ねて、色々と話し合いをしてもらいましたが、議論が活性化したようで何よりです。改めて、文化祭で何をしたいか挙げて行こうと思います。例えば……シャルローゼさんとその周囲の皆さん、何か良いアイデアは出ましたか?」


 急に当てられたシャルローゼさん達は一瞬たじろいでしまったが、直ぐに冷静になって、シャルローゼさんが代表して意見を述べた。


「日本の古典を英訳して劇にするという意見が出ました。『古典文学』、『英語』、それから誰かが書いていた『お笑い』や『ホラー』という意見を混ぜたような物です」


「なるほど。ありがとうございます。『お笑い』や『ホラー』はネタを誰が書くのかと疑問に感じていたのですが、今の案だとその問題が解消されますし、良いと思います。他には……。じゃあ、一ノ瀬とその周辺の人? 何か面白い案、出た?」


「「「メイドカフェ!」」」


「えー。一ノ瀬達はメイド服を着てお店を開きたいようですね。あいつらに女装趣味があったとは意外でしたが、書いておきましょうか」


「「「いや、そうじゃなくて……」」」


 何か言いたげな一ノ瀬たちを無視して、萩原は議論を進める。


「他に案が出たなら言ってくださーい! はい、桜田!」


「パロディーネタを要所要所に使った劇という意見が出たぞ。さっき出た『お笑い』ってのに近いかな?」


「分かった。パロネタって書いておくか。他に案は……。はい、小鳥遊さん。どうぞ」


「わ、私は、『小物の販売店』をしたいなって思います! 来年の家庭家の授業の先取学習にもなりますし! それに、楽しいと思います!」


「小物ね……。どういったものを作るんだろ? すまない、俺はそっち方面の知識は皆無で」


「えっと……。例えば、真っ白な布に刺繍(ししゅう)(ほどこ)したり、毛糸を編んでブローチを作ったりすると良いと思います!」


「他にも、簡単な電子工作をして、LEDがチカチカ光るオブジェとかも良いと思うわ。男子だと、そっち形の方が好きじゃない?」

 と小鳥遊さんの隣に座っている女子が付け加えた。


「なるほど、分かったよ。うーん、刺繍や編み物は実現可能性もありそうだけど、電子工作は難しくないか? キットを買ってきて組み立てるならまだしも、回路から設計するとなると、かなり難しいよな?」


「……そうね。正直、私個人的には電子工作はいらないと思うのだけどね。でも、『編み物とか刺繍とかしたくないー』って文句を言う人がいるかなって思ってさ」


「まあ、確かに。うーん。確か、暁のお姉さんって、そう言うののプロだったよな?」


「ああ。いざとなったら色々聞けると思う」


「もしかしたら、お世話になるかもしれない」


「分かった」



 その他色々と案が出て、最終的に10個ほどの案にまとまった。


「それじゃあ、この中から選ぶとしようか。一回、多数決してみようか。顔を伏せてー!」



 で、結果的に『英語で演じる古典文学』と『小物の販売店』が一位と二位になった。改めて決選投票をし、『英語で演じる古典文学』に決まった。のだが……


「うーん。一応、『英語で演じる古典文学』に決まったわけだが……。本当にこれでいいのだろうか?」


「「「?」」」


 萩原が頭を抱え、俺達は首を(かし)げる。何か問題があるのだろうか?


「いやな。一応、多数決で決まったわけだが、それでも約半数は『小物の販売店』をしたいって思っている訳だろ? それなのに、『英語で演じる古典文学』をするとなったら、半数の人の意見を(ないがし)ろにする訳で……。それはちょっとなあと思ってさ」


 なるほど。確かに一理ある。しかし、仕方がないのでは?全員がやりたいことを見つけるなんて不可能な訳だし。



「それならさ」


 そこで意見を出したのは杉原だった。クラス中が杉原に注目する。


「劇で使う小道具を、手芸で作って売るのはどう? 双方の意見を反映できると思うし」


「ナイスアイデア。じゃあ、それで行こうか! 反対意見は? ……ないみたいだね。と言う訳で、先生。こんな感じで決まりましたが、如何でしょう?」


 先生の方をチラッと見る。

 先生はスススッと前に出て


「はい。萩原君、司会進行お疲れさまでした。凄くいい案にまとまったと思います! ちなみに、私は編み物が得意ですので、是非色々聞いてくださいね! それでは……どうします? もう少し、案を煮詰めますか? それとも、残りは自習にしましょうか?」


 せっかくだし、もっと話を煮詰めたら良いじゃん!と言う訳にもいかない。各クラスで決まった内容を生徒会が収集し、被りが無いかを確認する必要があるのだ。被りがあった場合、各クラスの代表が話し合って、内容の変更が行われたりする。


「そうですね……僕としては、このまま話を進めても大丈夫かと思います。小物の販売だけなら被る可能性もありますが、古典を英語に直してする劇が被るとは思えませんので」


「だそうです。それじゃあ、萩原君。引き続き、進行をお願いしますね」






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