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文化祭は、何をする?

「さて、皆さん。文化祭で何がしたいかを書いてきてくれたと思いますので、回収しますね。今日の午後までに集計して、その結果を踏まえて話し合いをするとしましょう!」


 教室の前に立っているのは我らがクラスの委員長萩原。朝礼の後、一限開始前にプリントを回収した。



「何か手伝うか?」


 萩原に聞いてみる。


「うーん。それじゃあ、みんなの意見をこの四つに分類分けしてくれるか?」


舞台演技系:劇、コンサート、ダンスなど

参加型の展示物系:お化け屋敷、○○製作体験教室など

非参加型の展示物系:ポスター発表、オブジェの製作など

露店系:焼きそば屋さん、縁日の出し物など


「かしこまりー」


 一人何枚書いても良い事になっているので、集まった用紙は人数よりも多い。紙束の半分を受け取って、仕分けしていく。



「ド派手な科学実験って『舞台演技系』になる? それとも『参加型の展示物系』?」


萩原に指示を求める。


「どのくらいの規模?」


「粉塵爆発をしたいんだってさ」


「料理の際に火を使うのはオッケーだけど、それ以外の用途で火を使うのはアウトだ。だから、粉塵爆発は許可が下りないと思う」


「だよな」


「だけど、科学実験自体は悪くないと思う。ほら、この学校の文化祭って小中学生も見に来るだろ? 彼らの勉強になるって意味で、実験はいいかも」


 この学校の文化祭はオープンキャンパスも兼ねている。だから、将来この学校を受験予定の人が来ることもあるのだ。


「了解。じゃあ、『参加型の展示物系』に分類するか。ド派手な物をしないなら、教室での発表になるだろうし」



「なあ、暁。俺から聞くのもどうかと思うけどさ」


「おう、どうした」


「『陰陽師がお化けを駆除する! Japanese ホラー!』って劇の事だと思う? それともお化け屋敷の事だと思う?」


「シャルローゼさんの意見?」


「そうそう。何で知ってるんだよ?」


「朝、話したから」


「そういや、今朝は一緒に登校してたな。それで、それを見た一ノ瀬が『コロシテヤル……』って言ってたぞ」


「いつぞやの心霊スポットを思い出すなあ。というか、今日会ったのは偶然だぞ?」


「だろうな。暁は暁さん一筋だもんな。でも、今朝の事を抜きにしても、シャルローゼさんと仲良いよな?」


「俺が紗也一筋かは今は置いておくとして。シャルローゼさんとは、古典文学の話で盛り上がってさ。それでだよ」


 魔法の事は話せないので、そう答えておく。


「ああ、それで。話は逸れたが、これはどうしたらいいんだろう?」


「今朝話した感じだと、お化け屋敷に興味がありそうだったけどな。とは言え、気持ちが変わった可能性もあるし、後で本人に聞くしかないかと」


「だよなー」


 そうして暫し経って……。


「よし、終わった!」


「俺も終わったぞ」


「サンキュ、おかげで早く集計できたよ」



「と言う訳で集計した結果がこちらです」

 最後の授業はホームルーム、つまり文化祭準備の時間である。萩原は、いつの間にか作っていた資料を皆に配る。


舞台演技系:劇、コンサート、ダンスなど

→23案

参加型の展示物系:お化け屋敷、○○製作体験教室など

→7案

非参加型の展示物系:ポスター発表、オブジェの製作など

→5案

露店系:焼きそば屋さん、縁日の出し物など

→15案


「皆さん、考えてきてくれてありがとうございました。見てもらってわかる通り、舞台演技系が一番多く、次いで露店系となりました。具体的に挙がった案は次ページに詳しく載せています。それらを見つつ、改めて、このクラスからは何を展示したいか決めましょう! 取りあえず、周囲の人とあれこれ議論して下さい!」



「この実験って理系クラスがするもんじゃない? 俺達がやるのはどうかと……」


「宇治拾遺物語の喜劇を現代風にアレンジ……絶対これ書いたの暁だよな?」


「縁日っぽい出し物……ヨーヨーすくいとかスーパーボールすくいとか? いささか子供っぽくないかしら?」


「舞台演技系が多いのは意外ね。私、そういう恥ずかしいのはちょっと……」

「恥ずかしいなら、音響とか照明とかを受け持てばいいんじゃない?」

「それは確かに。湊さんはやっぱり主役をしたい感じ?」

「私は、どちらかと言うと悪役をしたいかな」


「拙者は日本刀についてのポスター発表が良いと思うでござる」

「それをしたがるの、お前だけだよ!」

「無念……」


「編み物の体験教室か。いいわね。私、編み物得意だし」

「それなら、体験教室よりも『小物の販売店』が良いんじゃない?」

「それ、いいかも!」


「シャルローゼさんは、気になる物あった?」

「私は……宇治拾遺物語の喜劇ってのに興味があります。日本の古典文学って面白いですから」

「なるほど……。例えば、どんな話があるの?」

「そうですね……。変わった神社を見て、『なんと! こんな風習がこの場所にはあるのか! さぞ尊い言い伝えがあるのだろう!』と涙を流した僧侶が、その神社の住職にそう言ったら『これ、子供の悪戯ですよ?』って言われてショックを受けた……とか有名な話ですよね」

「へえ、そんな話があるんだ。なんだか、ショートコントみたいな文章ね」

「そうですね。日本人は昔から、コメディーを書いていたという事ですね」

「外国人に日本の古典を教えてもらっているというこの奇妙な状況を、誰も疑問に感じていないという不思議さよ」



 こうして、議論は進む……



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