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シャルローゼの日記

◆Side シャルローゼ


 私はソフィリア・シャルローゼ・フォン・アストロフォール、アストロフォール家の第三女です。上に姉が二人と兄が二人おり、私が末っ子となります。


 さて、これは私の個人的な意見ですが、弟や妹が生まれると、子供は大きく成長すると思われます。これまで自分と遊んでくれていた両親は、弟や妹の世話で忙しくなります。何か失敗すると「お姉ちゃん(お兄ちゃん)でしょ。しっかりしなさい」と責められます。


 だから、姉や兄は私と比べて、色々な面で大人っぽく育ったのだと思います。勿論、年齢的に私よりも上なので、彼らの方が大人っぽく見えるのは当然なのでしょうが、その差を考慮してもやはり私の方が幼いのではないかと思います。


 その一例として、私が『自分たちの家系は特別なのでは?』という思いを長く持っていた点が挙げられます。



 私が小学校一年生の頃。父から私たちの家系の伝承を教えてもらいました。


「それは、今では伝説となっている物語。だけど、一部の人間は、それが伝説ではなく史実だと知っている……」


 父が語った物語の内容は当時の私には難しく、あまり理解出来ない物でした。まあ、幼稚園児に重税に耐えかねて町を放棄したとかいう話をしても「何言ってるの?」となって当然です。

 とは言え、理解できるところもありました。それが「私の先祖は魔法使いだったらしい」と言う事です。そしていつのタイミングからかその技術は受け継がれなくなり、今に至ると知りました。(後に、そのタイミングとは『魔女狩り』の時期の前後であると知る事になりました。)


 その後、私は魔法使いになるための手段を探し始めました。まずは自分の部屋の本棚を漁り(当然何も出てこなかった)、次に家の共有スペースに置かれた本棚を漁り(当然何も出てこなかった)、ある日は家の書庫を探し(調べ切れていないが、おそらく何の情報も残っていない)ました。


 そして、家族はその様子を微笑ましく見守ってくれました。後から聞いた話では、彼らは「私達もあんな時期があったっけ……」と思っていたそうです。


 そして、月日は経ち。私は姉や兄のように「魔法に思いを馳せる時期」から脱出する機会なく育ってしまいました。中学生になっても、私は「私たちの先祖は魔法使いである」と信じていたのです。


 我ながら子供っぽいと思います。自分でも心の中では「そんな訳ないよね」と分かってはいるのです。でも、10年間もの間『自分は魔法使いの家系だ』と信じて生きてきたのです。どうしても期待を抱いてしまうのです。



 そんな私のよき理解者が私の祖父でした。祖父もまた、魔法の存在を信じていたのです。彼も子供のころから魔法についての憧憬を抱いており、70歳を過ぎてもなお、その心を失っていなかったのです。


「儂には、魔法の存在証明も、またその歴史が途絶えた理由も突き止められんかった。ソフィリアが謎を解明してくれることを切に願うよ……。足腰が痛んでなかったら、自分から世界中を旅して、証拠を探せるんじゃが……」


 また、祖父は言った。


「ヨーロッパには魔法に関する資料は残っていないと思われる。『魔女狩り』によって、魔法技術はヨーロッパから完全に消えてしまったのだよ」


「そんな……。それじゃあ……」


「だから儂は、魔法技術が残っているとすれば、それはアジアではないかと思うのだよ」


「アジア……。もしかして、日本人の女性と結婚したのって……?」


「ああ。婆さんと出会ったのは、儂が日本の郷土史を調査していた時なんじゃよ」


「そうだったのね!」


「高六丘町という町に訪れた時。当時、外国人は好奇な目で見られたり、敵意を持って見られたりした。そんな中、優しく接してくれた女性に出会って『なんていい人だろう』と思ってなんやかんやあって結婚する事になったんじゃ」


「へえ……なるほどね。それで、結局何の情報も得られなかったの?」


「婆さんと出会えた」


「つまり、魔法技術に関しては収穫ゼロだったのね」


「まあの。あの町に着いたとき、何故かは知らないが、妙な胸騒ぎがしたんじゃよ……。これは凄い情報が眠っているに違いないと直感したね。で、得られたのは、良き配偶者だった訳だ!はっはっは!」


「私も行ってみたいわ、日本に」


「ほう? もしかして、お婿さん探しに?」


「いや、そうじゃなくて。純粋に、お祖父ちゃんが旅した土地を見てみたいのよ。それに……」


「それに?」


「いえ。なんでもないわ」


 その時、私は高六丘町と言う場所に何かあるのではないかという胸騒ぎがした。魔法技術の痕跡があるのか、あるいは運命の人がいるのか。その答えは分からなかったが、取り敢えず行きたいと思ったのだった。


 それから暫く経ち。お祖父ちゃんは、日本行きの飛行機に搭乗する私を見送ってくれたのだった。



 私は日記帳を開き、前に書いた文章を眺めていた。この時は、本当に魔法に出会えるとは思っていなかった。それが、今や私は立派な魔法使いである。


「この先、日本でどんな出来事が待っているのかしら? 楽しみね!」



 もうすぐ、留学先の高校で『文化祭』という物が開かれるそう。文化祭を通じて、クラスメイトと仲良くなって、日本人のお友達を沢山作りたいな!









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