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初めての魔法は龍脈の上で

 シャルローゼさんに魔法を実践してもらう事になる。初めての魔法は、何がいいだろう?


「ひとまず、結果が見やすいから、水を凍らせる魔法でどうだろう?」


「なるほど。それじゃあ、水を用意するね」


 姉さんが選んだのは凍結の魔法。確かに、「水が凍る」と結果が分かりやすい魔法だし、失敗しても温度の低下が起こっていれば、「もうすぐ成功」と考える事が出来る。


 俺は水をいれた紙コップを四つ用意し、シャルローゼさん、姉さん、紗也に配る。

 姉さんは水分子が凍結するメカニズムをシャルローゼさんに説明し始めた。起こしたい現象をより鮮明にイメージする事が求められるからである。


「では、早速実践してみましょうか。私達も使ってみますので、見ていて下さい」


俺「『凍結』」

紗也「『フリーズ』」

姉さん「それ」


 俺達三人の前に置かれていた水がパキパキと音を立てて凍りついた。それをキラキラした目で見つめるシャルローゼさん。


「私も試してみます! 『Glaciem(グラキエーム)』」


 魔法の存在を心から信じており、さらに魔法使いの家系であるシャルローゼさん、失敗するはずがない。そう思っていたのだが……


「失敗です……」


 シャルローゼさんのコップに変化は見られなかった。


「うーん。他の魔法も試してみましょうか」



 その後、色々と試してみたが、なかなか成功せず。これはまずい傾向だ。失敗が続くと「自分は魔法を使えない」という先入観に取り付かれて魔法の発動条件を満たさなくなる恐れがあるからだ。


 何が俺達と違う? どうしてシャルローゼさんは魔法を発動できない?

 もしかすると、先祖が有していた魔法使いの資質を受け継がなかったのかもしれないが、その可能性を検討するのは最後だ。今は、他の可能性を考える必要がある。



「僕達の時と何が違うか考えてみますね。姉さん、紗也。どう思う?」


「生まれ育った土地じゃないと駄目とか? その土地の精霊に気に入られる必要がある……的な感じかも」


 と紗也がつぶやく。


「それはある得るかも。だけど、今すぐ試せることではないよな……」


 シャルローゼさんが祖国へ帰国するまで魔法を発動できなかったら、それを試してもらおう。とシャルローゼさんにも説明する。


「そうか、もしかして……」


 次に声を上げたのは姉さん。


「何かを思いついたの?」


「『精霊に気に入られる必要がある』関係で思いついた。もしかしたら、はじめての魔法発動は『精霊濃度が高い場所』でする必要があるんじゃないか? 私達が初めて魔法を使ったのはお祖父ちゃんの家。龍脈上だったよな」


「なるほど……。だけど、この家も十分精霊濃度が高いぞ?」


 龍脈上に加えて、術者(あるいは発動中の霊魂珠)の傍は精霊濃度が高くなることが分かっている。そして、俺の家は姉さんと俺という二人の術者がいる事で、精霊濃度が高いのだ。


「まあな……。でも、試してみる価値はあると私は思う。と言う訳で、移動しませんか?」


「分かりました。Ley lineの交わる所へ行くという事ですね? 家の者へ一言伝えます」


「そう言う事です。私も、祖父に連絡しておかないと」



 やってきました我らが祖父の家。科学的(?)根拠に基づいた、この町で最も信ぴょう性のあるパワースポットと言えよう。



「それでは、使ってみますね。『Glaciem(グラキエーム)』」


 紙コップに入った水に向けて祈る果たして結果は……


 ――ピキ


 ――パキパキ!


「成功しましたーー!」


「「「おめでとうございます!」」」


 こうして、シャルローゼさんは無事魔法を使えるようになったのだった。



 その後、他の様々な魔法について教えたり、教えられたりした。

 結局、我々が使う魔法は、己の想像力の及ぶ範囲の事なら大抵実現させてしまうのだ。自分の近くに存在する物質なら何でも変形させることが出来るし、重力の操作だってできてしまう。

 どうしても紗也や俺が使う魔法は日本で書かれたラノベを参考にした物になってしまうのだが、シャルローゼさんはアストロフォールで書かれた小説を参考にするので、今までと違った魔法についても知る事が出来た。

 例えばこういう物。


「これって生き物を生み出す事は出来ないのですかね?」


「「え?」」


 この発想は無かった。少なくとも俺達がよく読むラノベでは、生命を生み出す(たぐい)の魔法は存在しない。

 しいて言えば、テイムやサモンだろうか?テイムとは動物を捕まえて自分の配下にする魔法。サモンは悪魔などを魔界から呼び出す魔法だ。だが、シャルローゼさんの提案した魔法は「完全に無から生き物を創造する魔法」の事だった。なんとなく、それは禁忌であるような気がして、無意識のうちに避けていたのかもしれない。


 さて、その問いに姉さんが答えた。


「どうでしょう? 出来たとしても、心血管系や腸まで完璧にイメージ出来るなら生み出せるかもしれないですが……試してみます?」


「植物なら、失敗してもグロテスクな事態にはならないのではないでしょうか?」


「それもそうですね。枯れ草を材料に、生きた植物を生み出せたら、面白いと思います」


「やってみましょう!」


 結論から言うと、出来なかった。枯れ草の繊維を変形させて、花っぽい物にする事は出来たが、生命は宿らなかった。




◆その後の会話


慧子「マイコプラズマ程度なら生み出せるか……?」


和也「姉さん? 危険な実験はしないでよ?」


慧子「しないしない。そもそも、するメリットが無いよ」









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