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俺の先祖は魔法使いだったらしい  作者: 青羽 真
魔法の研究をしよう
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歴史資料館

 姉さんが開発した精霊濃度計を使うと、精霊濃度が著しく高い場所とそうでない場所がある事が分かった。

 「術者が良くいる場所」=「俺の家・紗也の家・祖父ちゃんの家など」が高い値を示すと予想していたが、どうもそれ以外にも要素がありそうだ。

 そこで俺たちは町中の精霊濃度を測り、それを分析しようという事になった。



 三人で手分けして測った値を集計するのは姉さんの役目だ。姉さんは、俺達のスマホから記録データを抽出し、それを解析し始めた。

 ものすごい勢いでプログラムを打ち込んでいく姉さん。何をやっているのかさっぱり分からないが、取り合えずカッコいい。そして数分後には、パソコンの画面上に地図と計測値が表示されていた。


「よし、可視化出来たぞ!」


「「おお!!」」


「ついでに、計測していない場所のデータもいい感じで補完したら……出来た! それから、スレッショルドを調整して……。出来た! おお? なんだこれは?」


 パソコン画面には衛星写真に(もや)がかかったような映像が映し出されていた。靄は地図上のある地点を中心に放射状に広がっている。


※こんな感じ↓

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「その靄は何?」

 と紗也が疑問を投げかける。


「これは精霊濃度の濃い所を示しているのだが……」


「なるほど? つまり、精霊濃度が高い場所はランダムに存在するのではなく、一定のパターンを呈しているってことで合ってる?」


「そういう事になるな」


 ラノベ脳の俺からすると、このような図を見せられてパッと思いつく単語は一つしかない。


「もしかして、それって龍脈(りゅうみゃく)……とか?」


「りゅうみゃく? なんだそれは?」

「なるほど! これがかの有名な龍脈なのね! まさか、本当に見る日が来るとは思ってなかったわ!」


 姉さんは聞き馴染みが無かったようだが、紗也は知っていたようだ。ファンタジーな存在であった『龍脈』を現実世界で見る事が出来て、興奮している。かく言う俺も、興奮している。


 龍脈とは元々は風水の考え方で、地中を『気』が流れている場所のこと。その場所に住むと、運気が巡ってきて一家が繁栄すると言われていた。今でも信じている人は少なからずいるだろう。

 似た概念として、西欧では『レイライン』という物がある。『レイライン』とは『古代遺跡群が描く直線』の事。その真偽はともかく、レイライン上は「スピリチュアルな場所」であり、古代の人はそこに神殿を建築したとされている。

 そして、ラノベに登場する龍脈は前者と後者が混ざったような概念となっている。つまり、「龍脈には魔力が流れており、その魔力が交わる場所にはダンジョンなどの遺跡が出現する」という設定が良く見受けられるのだ。


 こういう内容を姉さんに説明する。


「なるほど。実際に自分で計測してなかったら、馬鹿馬鹿しい話だと一蹴していたが……」


「その、龍脈が交わる場所って何があるの?!」


 地図を指さし(◆印の場所)尋ねてみる。


「ここは……。お祖父ちゃんの家だな……」


「「え゛」」


 何という事だろう。祖父ちゃんの家は『気が集まる場所』だったのか! だからあんなにも精霊濃度が高かったのか!!


「慧姉! 地中を探索しましょ! お祖父ちゃんの家の下に、何かが眠ってるかも!」

「俺、祖父ちゃんに地下を掘り起こす許可を貰ってくる!」


 そうと分かれば、早速行動だ。俺は祖父ちゃんに電話をしようとし……


「待て、二人とも」


 姉さんに止められた。


「あの辺りは湧水帯、つまり地下水が出るエリアなんだぞ? そんな場所をむやみに掘ったら、水没するぞ?」


「「むう……」」


「それに、いきなり『掘る』よりも、先に資料を探してみる方が良いんじゃないのか? 歴史資料館にでも行って、昔あの辺りに何かがあったのかとかを調べる方を先にすべきと私は思う」


「「なるほど!」」



 俺達が向かったのは、高六丘(たかろくおか)歴史資料館。ここ、高六丘町にまつわる記録を保管してある小さな市営博物館だ。


 特に朝水区(祖父ちゃんの家がある辺りだ)は湧水が出るので古くから人が住んでいた土地である。その分、歴史的意味のある物が発見されることも多く、資料館には昔を知る手掛かりが色々と眠っている。


「「「こんにちは~」」」


「おや、暁君じゃないか。いらっしゃい」


 建物に入ると、館長が出迎えてくれた。小学生の頃から古文漢文に興味を持っていた俺は、よくここを訪れて勉強していたので、いつしか館長に名前を憶えてもらった。


「この辺りの古い地図を見たいのですが……」


「おお、分かった。それなら、コピーしてくるよ。ちょっと待ってなさい」


 館長は事務室のキーボードをカタカタと打つ。


「はい、印刷できたよ。1658年に作られたとされる地図。こっちは1798年に作られたとされる地図。これが1874年に作られた地図。で最後のこれが1934年に作られた高六丘町の地図だな」


「ありがとうございます! そういえば、パソコンでデータを管理するようになったのですね。昔は全部アナログだったのに」


「ははは。やっぱり、デジタル化しておけば、管理が楽だからの」



 頂いた地図をパソコンに取り込んで、先ほどの精霊濃度の地図と重ねてみる。


「まず、祖父ちゃんの家は昔から今までずっと家みたいね」


「そうみたいだな……。あ、1798年の地図のこの文字! ちょっと分かりにくいけど、暁って字じゃないか?」


「「おおーー!」」


「ってそれはいいとして、他に何か面白い発見はある? 古代遺跡とか?」


「特には……おや?」


 姉さんが4枚の地図を見比べてふと呟く。


「昔と今とで神社の位置が変ってる。で、昔の神社の位置なのだが、精霊濃度が高い場所に集中してそうだぞ」


「「ほんとに?!」」


「偶然かもしれないけどな。ほら、一之丘神社がここで、二之丘神社がここ」


「すごい! ちまり、昔、神社のあった場所が、精霊濃度が高いってことか?」

「とすると、今後精霊濃度の分布は変わるかもしれないわね」


「いいや、因果が逆かもしれないぞ? 精霊濃度が高い場所に神社が作られたのかも」


「なるほど。という事は、昔の人は、精霊濃度を認知する何らかの手段を持っていたという事かな?」


「その可能性は大いにあるな。実際、暁家の蔵で見つかった古文書が書かれていた頃は陰陽師が実在していたようだからな」



 そういえばそうだ。蔵で見つかった古文書が真実だったという事は、俺達の先祖は魔法使いだったという事になる。

 それなのに、一体何故、魔法は廃れてしまったのだろう? どうして、今や魔法の存在を覚えている人物がいないのだろう?

 いつから人々は、科学のみを信奉し、魔法の存在を忘れ去ったのだろう?



 龍脈の存在といい、魔法が廃れた理由と言い、謎は深まるばかりだ。





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