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俺の先祖は魔法使いだったらしい  作者: 青羽 真
魔法の研究をしよう
27/69

精霊は数式を通じて観察する

「ついにやったぞ、和也!」


 姉さんが俺の部屋のドアをバーンと開け放った。突然入ってこないで!せめてノックしてから入ってくれ!


「姉さん? どうしたの」


 ずかずかと俺の前まで歩み寄った姉さんは、そのまま俺の両肩を掴み、ぐわんぐわんと前後にゆする。


「和也の言ったとおりだったよ!」


「何が?! ちょっと、揺らさないで!!」


 世界が揺れる……。誰か、助けて~



「で?いったい何が出来たの?」


「ああ。すまない。つい興奮して和也を揺さぶってしまった」


「大丈夫。いつものことだし。いや、それはそれで問題なような……?」


「まあともかくだ。前に和也が『神聖魔法』と『精霊魔法』について話してくれたよな?」


 そんなことあったっけ? うーん、そういえば話したような気もする。


「そんな話したな。それで?」


「うむ。まず第一に『神聖魔法』ってのはあり得そうにないって私は思ったんだ」


 おさらいだが、魔法を行使する際、俺達自身は疲れない。無限に魔法を行使出来そうなのだ。しかし、これでは『このエネルギーはどこから来るの?』という疑問にぶつかる。

 その点について、異世界物のラノベだと『体内に溜まった魔力を消費して、魔法を行使する』という設定をよく見かける。未知のエネルギーが体内に溜まっているという事だな。しかし、体内に溜まった(未知の)エネルギーを消費するなら、いつか燃料切れを起こすはず。なのに、俺達はいくら魔法を行使しても『魔力切れ』になったりしない。

 そう思った俺は、俺達が魔法を行使する際に消費するエネルギーは術者以外から供給されているのではないかと思った。その考え方は、ラノベでは『神聖魔法』や『精霊魔法』という表現で呼ばれている。

 ここで『神聖魔法』とは、この世界の創造主的な存在が術者がイメージした魔法を代わりに行使してくれるというニュアンスだ。対して『精霊魔法』とは、空間内に多数存在する、目に見えない生き物が術者がイメージした魔法を代わりに行使してくれるというニュアンスだ。


「つまり、姉さんは『創造主』や『神様』的な物を信じないって事?」


「少し違うかな。なにせ私は、魔法なんて未知の論理を究明している途中なんだ。ありとあらゆる可能性を考えるさ。神聖魔法をあり得ないと思ったのは、包み隠さず言うと『どうもしっくりこなかった』からなんだ」


「はい?」


「少し考えてほしい。例えば、私が『この部屋を涼しくしたい』と願ったとしよう。それと同時に和也が『この部屋を暑くしたい』と願ったとしよう。もしも、魔法を聞き入れる存在が一人なら、困らないだろうか?」


「うーん。確かに?」


「それに対して、『精霊魔法』のように、術の行使をする存在が複数いると考えると納得がいく」


「なるほどな。でも、それだけが理由? なんだか、ずいぶんとざっくりした理論だけど……」


「和也の言うように、これだけだと『仮説』の域を出ない。だから、私は精霊が存在すると仮定して実験を行う事にした」


「えーと?」


「術者が魔法のイメージを行った際、精霊が反応する確率をa[/s]、反応しなくなる確率をb[/s]とする。ただし、aやbは術者からの距離、イメージの具体性、その他の要因に依存する。そういうモデルを考えてみたんだ」


「???」


「あーー。分かりやすく言うとこんな感じだ」

 姉さんはタブレットのメモ帳アプリを立ち上げ、さらさらと図を書く。


~~~

精霊「ニンゲンが魔法を使おうとしている! 手伝ってやろうかな」

→1秒以内に「手伝う」を選ぶ確率がa


精霊「手伝ってるけど、そろそろ疲れたな」

→1秒以内に「手伝うのを辞める」を選ぶ確率がb

~~~


「簡略化して伝えたが、このように精霊は『手伝う』と『手伝わない』を行き来しているのだと私は仮定した。仮に二人の術者が魔法を行使しているなら、こんな感じになるな」


~~~

「術者Aを手伝う」←遷移→「手伝わない」←遷移→「術者Bを手伝う」


精霊が100体いたとして、その内何体かは「術者Aを手伝う」状態にいて、何体かは「術者Bを手伝う」状態。そして残りは「どちらも手伝っていない」状態になる。

この数は時間と共に変動し、それぞれ40体、30体、30体だったとしても、一秒後には43体、29体、28体になっているかもしれない。

~~~


「イメージはつかめたか?」


「なんとなく」

 正直、いまいち分かってない。ごめんなさい!


「このような遷移の仕方は、細胞膜に存在するイオンチャネルの開閉にも見られるんだ。だから、その計算方法を参考に、精霊反応モデルを算出した。ここについては、詳しくは話さないが、要は『精霊が居るとしたら、こんな風な挙動を示すんじゃないか』という仮説を立ててみたんだ」


「なるほど?」


「目に見えない『精霊』なんかの現象を知る、唯一の手掛かりは数式なんだ。科学者は数式を通じて目に見えない物を観察する。私もその一人というわけだ」


「いわゆる『数字がそう語ってる』ってやつだな?」

 ということで合ってるよな?


「その通り。実験を繰り返した私は、なんと! 空間内に存在する精霊の濃度を測定する機械を開発する事に成功したんだ!」


 へえーー。それは……

「え? ほんとに? 普通に凄い事じゃない?」


「ふふん! しかも、小型化して持ち運べるサイズにまで小さくしたぞ。それがこれだ! じゃん! WAGD(ヴァージッド)という機械だ!」



 姉さんは自慢げにアタッシュケースを開く。中にはスマートフォンサイズの機械が三つ、鎮座していた。







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