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俺の先祖は魔法使いだったらしい  作者: 青羽 真
魔法の研究をしよう
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旅の余韻

 旅行から帰ってきた俺は、手に入れたサクラガイの加工に励んでいた。

 ローズクオーツのような優しい桃色の貝殻を傷つけないように細心の注意を払いつつ、作業を進める。


 まずは貝殻の汚れや臭いを落とす作業だ。といっても、もともと海中で洗われていたので、それほど臭いはきつくない。だが、後々嫌なにおいがしたら興冷めだ。姉さんのアドバイスを貰いつつ、脱臭する。


 薬品で処理している間に、指輪のリング部分を作る事にする。リングは、UVレジンという物を使って作る。これは紫外線を当てる事で硬化する薬品であり、素人でも扱いやすい樹脂の一つである。

 シリコンモールドと呼ばれる『型』を使って造形する。紗也の薬指のサイズは……俺の小指くらいの太さで丁度いいかな。


 さて。せっかく海に行った思い出として指輪を作るのだ。リングもただの樹脂ではなく、何かを埋め込んでみたい。ハンドメイド専門店にでも行って、何かないか探すか。


 そう言う訳で、俺が購入したのは星の砂。これを淡い青色のレジンと混ぜてリングを作ってみようと思う。

 薄青色のレジンと星の砂を混ぜ合わせる。うわあ。気泡が出来てしまった。軽く加熱する事で気泡を追い出す事も出来るのだが、もっと簡単に一晩放置して気泡を追い出そうと思う。どうせ、貝殻の脱臭に時間を待たないといけない訳だし。


 暗所で一晩放置し、レジンに入っていた気泡はほとんど抜けていた。それをシリコンモールドそおっと流し込み……完成だ。ここにUVライトを照射する事で、リング部分が完成である。

 星の砂が散りばめられた指輪。この時点でも十分素敵だと思うが、ここに貝殻を取り付けないといけない。


 しっかりと脱臭した貝殻にレジンをレジンに漬けて簡単に割れてしまわないようにする。裏側はたっぷりとレジンを満たして硬化させ、表側は筆を使って表面だけレジンで覆う。うん、良い感じになった。後は、リングの先に固定したら、オーケー。


 最後の仕上げとして、レジン作品のコーティング剤を表面に塗布して、べたつきを無くす。これで、完璧。夏の思い出の指輪が完成した。



「という訳で、遅くなったけど、これ。サクラガイの指輪。今年の夏の思い出の末席に加えてくれると嬉しいな」


「ありがとう!」


「手、出してくれる?」


「う、うん……。なんだか照れるわね」


 おずおずと左手を差し出す紗也。俺もかなり緊張しているが、それを悟られないようにさっと薬指に指輪を通す。


「サイズ、合ってるかな……。良かった! ぴったりだな?」


「わあ! 凄く可愛いじゃん! 大切にするわね」


「気に入って貰えてよかったよ」


 色々な角度から嵌めた指輪を見る紗也。長年一緒にいる俺だからこそ、彼女が湛える笑顔と賛辞がお世辞で言ったものではなく、本心だと分かった。喜んでもらえて本当に良かった。



 その後、紗也と夏休みの宿題をする事になった。丁度、英語のリスニングの宿題が残っていたので、二人でしようという事になったのだ。

 リスニングの宿題はどうしても時間を使うので、やる気が起きなかったのだ。そう言う時は、誰かと一緒にする事で、やる気が起きてくるのだ。

 勿論、真面目じゃない人と開く勉強会はあまり良くないけど……。男子高校生同士で勉強会を開こうものなら、しゃべって、ゲームして、スナック菓子を食って一日が終わってしまう(これは俺の偏見だろうか?)。その点、紗也と一緒なら勉強が捗る。


「お邪魔しまーす。紗也の部屋に来るのも、なんだか久しぶりな気がするな」


「そうかしら? ……散らかってるけど、気にしないでくれるとありがたいわ」


「言うほど散らかってはいないと思うけど……。姉さんの部屋なんて、一週間放置したら、目も当てられないことになるからなあ……。特に下着とか、俺が片付けていい物なのか? 仮にも男子高校生だぞ、俺」


「慧姉、一度何かに集中すると、他の事が(おろそ)かになるものね……。私は下着はちゃんと片づけてあるよ、流石に」


「逆に下着が散乱してたら、反応に困るから助かったよ」


「あはは、確かに。それじゃあ、早速始めよ!」



 教材の最終ページに載っているURLにアクセスして、音声ファイルをダウンロードする。中学の頃はCDが付属していたんだけどなあ。今は教材も進化しているのか……。

 5分ほどですべてのファイルがダウンロード出来た。早速再生する。


“~♪♪ ネイティブイングリッシュリスニング! ネイティブの発音に慣れ、聞く力を養おう! Native English Listening! Get used to native pronunciation and develop your listening ability!”


「本当に関係のない事だけどさ。今流れてるBGMって誰が作曲してるんだろうね?」


「確かにな。この一瞬の為だけに、作曲してるのかなあ……」


“Page 5. You will hear a conversation. Choose the most appropriate response to the last statement in the conversation.”

(ページ5。会話が流れます。最後の会話に対する返答として最も適当な物を選びなさい)


 おっと、始まったな。早速5ページ目を開き、流れる会話に耳を傾ける。


John :“Hi, Sara.”

Sara :“Oh, John!! What a coincidence.”

John :“Yeah! By the way, I'm gonna go to a restaurant. Won't you come? It's on me!”

Sara :“Thanks, but I've kept my boyfriend waiting.”

John :“What?! You have a boyfriend?!”


A: No, he is my younger brother.

B: Yes. Thank you for telling me.

C: Yes, he and I have been seeing each other for about a month.

D: No, we've just broken up.


※訳

ジョン「やあ、サラ」

サラ「あら、ジョン! 奇遇ね!」

ジョン「だね! そういや、今からレストランに行くんだ。一所に来ない? 奢るよ!」

サラ「ありがと、でも彼氏を待たせてるの」

ジョン「え゛?! 彼氏いるの?!」


正解(C): ええ、一か月ほど付き合ってるの。



「「いや、ジョン可哀そうだな!!」」


 こんな悲しい文章をいきなり聞かせるなよ……。

 たまにツッコミを入れつつ、俺達は宿題を解くのだった。




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