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旅行四日目と五日目

「まずは、キャラクターを選択するんだ。今の所、三人の候補があるぞ」


A:カズ:スピード特化

B:サヤカ:器用特化

C:ケイ:防御特化


「カズ?」

「サヤカ?」


「あ! 先に言うのを忘れていたが、『本ゲームはフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません』」


「「嘘つけ!」」


 俺はカズを、紗也はサヤカを選択した。姉さんはケイを選択。まあ、そうなるよな。



「で、OKを押すと、いきなりスタートだ。この作品は箱庭探索型のアクションゲームだ。画面左に表示されるスティックをフリックしてキャラを移動させ、右側に表示されるボタンで魔法を発動する。キャラややり込み度に応じて使える魔法が異なるのだが、ゲーム開始時点はこの魔法が使える」


カズ:氷の弾丸

サヤカ:アイスアタック

ケイ:盾魔法(タイミングよく発動する事で、攻撃を跳ね返す)


「私はアイスアタックね。いつも使ってる魔法よね?」

「俺は氷の弾丸……。これって紗也の魔法との違いは何?」


「全く同じだぞ」


「「ええ……」」


 まあ、俺を模したキャラが『アイスアタック』を使ったり、逆に紗也を模したキャラが『氷の弾丸』を使っていたら違和感を感じるけど……。


 このゲームのキャラクターが俺達をモデルにしいると再認識した上で、姉さんの説明は続く。



「マップ内には魔物が徘徊している。あ! 丁度、スライムが飛び出してきたな。そしたら、魔法を使って攻撃するんだ」


 ケイの前に飛び出したスライムは、ケイに向かって突進を始めた。姉さんはタイミングを見計らってボタンをクリックした。すると、ケイが魔法を発動し、スライムはノックバックを受けた。あ、HPバーも減ってるな。


「こんな感じだ」


「よし」

「やってみるね!」


……

………


「魔法ってホーミング機能が付いてるのね」


「それは、紗也だけだ。間違えた、サヤカだけだ」


「なるほど。サヤカは器用特化って書いてあったものね」


「俺のキャラは素早いから、出来るだけ距離を詰めて発射する感じだな」


「ああ。カズの移動速度は他キャラの1.5倍だからな。操作が難しいと思うが、慣れればかなり強いキャラだと思うぞ」


「そっか……よし! 倒せたぞ!」


「ドロップアイテムは町に行ったら換金したり出来るぞ。町は……」



 こうして、テストプレイを楽しんだ。

 まだまだ未完成ではあるものの、グラフィックや操作性は好感が持てた。この先、正式にリリースされたらいいなと思う。





 旅行五日目になった。今日は雨が降っており、外に出て遊ぶことは出来なさそうだ。と言っても、明日の早朝に帰る事になるので、今日の間に荷物を纏めておく必要がある。どちらにせよ遊ぶのは厳しかったかもしれない。


 ベットの下や毛布の裏などの忘れ物をし易い場所を徹底的に確認する。そういえば、中学校の時、財布を何所かに忘れてお土産が買えなくなった友人がいた覚えがある。っと思い出に耽っている場合じゃないな。


「姉さん、このメモは持って帰るの? 捨てていいの?」


 俺達の部屋の机の上には、数式や何かの記号が書きなぐってある紙が散乱していた。それを拾い上げ、姉さんにひらひらと見せる。


「あー。ちょっと待ってくれ。確認する。和也こそ、そこに置いてるメモは捨てるって事でいいんだよな?」


 姉さんが指さした先には、兵人形供養碑を訳した際のメモがある。もうそれはいらないな。


「訳は姉さんのノーパソに入れてるし、写真も保存してあるよな」


「ああ。保存してあるぞ」


「ならもういらないな」


「分かった。あ、私の書いたメモもいらない物ばかりだったから、紙ごみに出してきてくれ」


「はーい」



「やっほ、かず兄。何その紙束?」


 指定のゴミ捨て場へ赴くと、紗也に出くわした。ペットボトルを捨てている所だったようだ。


「全部ゴミだ」


「いったい何をしたら、そんなに紙ごみが溜まるのよ……」


 確かに、旅行先で紙ごみが溜まるってのは普通じゃないかもしれないな。紗也は不思議に思ったのか、紙に書かれた内容をチラッと見て「ああ、なるほどね……」と納得してくれた。まあ、俺達姉弟はメモ用紙と切っても切れない関係にあるからね!


「そう言う訳だ。兵人形供養碑の訳をするときに色々メモを取ったからな。姉さんは姉さんで魔法と脳波の関係を調べてるみたい。あと、魔法の発動に関わる粒子を突き止めたいとか、魔法の威力を図る装置を開発したいとか言っていたな」


「二人とも、凄いわね……。旅行先で何やってるのだか……」


「そう言う紗也は何してたんだ? 夕食後は俺達とは別行動だったよな?」


「私はお父さんとお母さんと同室だったから、早くに寝たわ」


「ああ、そっか。せっかくの旅行なのに、夜遅くまで他愛もない話で盛り上がれなかったのは残念だな」


「修学旅行みたいに?」


「そうそう、そんな感じで!」


「でも、仮に私が二人と同室だったとしても、盛り上がったかしら? かず兄は慧姉とか私とコイバナに花を咲かせたかった?」


「……確かに。あ、父さんが呼んでる。ちょっと戻るわ」


「私も戻らなくちゃ」




 午後にはコテッジの掃除をした。ここは俺たちの私物ではなく、あくまでレンタル品である。まあ、ある程度汚して帰っても、業者がキレイにするとは思うが、それはなんだか落ち着かない。立つ鳥跡を濁さず。この言葉は、本当にいい表現だと思う。



 次の日、俺達は帰路に着いた。姉さん、紗也、そして俺。三人とも熟睡したしまった事は言うまでもない。







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