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兵人形供養碑

「出来た! こんな感じかな」


「お、和也。もう(やく)し終わったのか?」


「あ、姉さん。まあ、一応」


「見てもいいか?」


「もちろん。どうぞ」



『兵人形供養碑』改稿:暁和也

戦ひに 備へて組みし 人形と

言霊込めし 霊魂珠(れいこんじゅ)

合はせ動くは 兵人形(ひょうにんぎょう)


西を覆うは 梅印(うめじるし) 

東に並ぶ 波千鳥

響く鏑矢(かぶらや) 動く者


ただ射る兵士 (きゅう)人形

ただ切る兵士 (とう)人形


傀儡(くぐつ)に過ぎぬ (むな)しさよ

意思無き者の 空しさよ


(いくさ)終はりて 珠は割れ

残る静けさ 浮かぶ月


役目を終へし 人形や

後世(ごせ)では意思を 授かなむ



『兵人形供養碑』訳:暁和也

戦争に備えて作った人形と

強い願いを込めた霊魂珠(れいこんじゅ)

二つを合わせて、動きだすのは兵人形(ひょうにんぎょう)


西側は、梅印の旗(?)が覆っている

東側は、波千鳥の旗が並んでいる


合図が響いて、兵士が動き出した。


ただ弓を射る兵士は『(きゅう)人形』である

ただ刀を振る兵士は『(きゅう)人形』である


操り人形に過ぎないなんて、空しいなあ

意志が無いなんて、空しいなあ


戦争が終わって 霊魂珠(れいこんじゅ)は割れて

月夜には静けさが漂っている


役目を終えた人形よ

生まれ変わったら意思を授かって欲しい




「つまりなんだ? 兵人形って人形同士を戦わせて、その残骸を見て詠んだ和歌なのか?」


「そう思う。からくり人形を作る技術があったという事かなあ?」


「強い願いを込めた霊魂珠って所は、ロボット感があるな。プログラムを書き込んだマイコンをはめて動かす……みないな」


「どっちもしっくりこないけどな……。もしかしたら、人形劇の話なのかも」


「ほう、なるほどな。人形劇で使う、兵士役の人形を供養した時に建てた石碑って事か。その線が濃厚だろうな」


「なかなか、解読していて楽しい内容だったよ。明日、紗也にも教えないと」



 次の日の朝。朝食の席で、紗也に石碑の訳を見せる事にした。


「……なるほどね。その昔、この地でゴーレムによる戦争があったと。面白いわね!! ゴーレムの残骸、残っていたりしないかな?! 慧姉、探知装置とか無いの?」


「今は、金属探知機用意してないなあ。それに、仮に持っていたとしても、見つけるのは困難だと思うぞ? 石碑が海底でひっくり返っていたことからも分かる通り、何らかの影響で当時は海岸線だった場所が今では海底になってるぽいし」


 紗也も、石碑の内容にワクワクしてくれたようだ。それにしてもゴーレムかあ。俺はからくり人形と表現し、姉さんはロボットと表現し、紗也はゴーレムと表現する。それぞれの趣味をすごくよく表していると思う。



 さて、今日は旅行の四日目。今日も海で遊ぼうと張り切っていたわけだが……


「こりゃあ、駄目だな」


「「そうね……」」


 晴れてはいる。だから、外で遊ぶことは可能だ。

 だけど、風がとにかく強い。いくら気温が高いとはいえ、これだけの強風の中、水着で遊んだら、風邪を引きそうである。そもそも、海には白波が立っていて、とてもじゃないが安全とは言えない。


「でも、連日遊んでばかりで疲れてたし、今日は部屋でゆっくりしよ」


「そうだな。」

「と言っても、リビングは大人勢が占領しているし……。私達の部屋で遊ぼうか?」


 という訳で、俺たち三人は、部屋でのんびり過ごす事になった。



「それで、何する? ボドゲとか持ってきてたっけ?」


「トランプなら持ってるぞ。紗也は?」


「スマホに将棋アプリが入ってるわ。それくらいね。慧姉は?」


「開発中のアクションゲームがある。二人が嫌じゃないなら、テストプレイしてくれないか?」


「「ほう!」」


 そういえば、姉さんは今年で18歳。ゲームを公開してお小遣い稼ぎを始めたと言っていた。どれ、せっかくだからプレイしてみるか!


「ちなみに、公開する予定なの?」


「今の所はするつもりがない。自分で遊ぶために作った感じだ。二人が楽しんでくれたら、手直しして公開するかも。それじゃあ、準備するから、少々お待ちを」


 姉さんは何かのソフトを立ち上げた。


「二人のスマホを貸してくれ。インストールするから」


「あ、スマホアプリなんだ。オッケー」


「まずは、開発者モードをオンにしてくれるか?」


「「なに、そのカッコいいモード?!」」


「まあ、いいから。まず、設定アプリを開いて」


「「ふむふむ」」


「デバイス情報ってのを開く」


「「ふむふむ」」


「ビルド番号って所を何回もタップする」


「わ! 開発者モードが有効になりましたって出たぞ!」

「すごい! なんかカッコイイ!」


「ちなみに、Ringo社が作ったスマホではそれが出来ないぞ」


「「へえ」」


「後は私が設定しよう。二人とも、スマホを貸してくれ」


「「よろしく」」



 姉さんが色々と操作し、俺達のスマホにゲームがインストールされた。


「このアプリだ。早速起動してみてくれ」


「UASってアプリだな?」

「起動するわね」


 アプリのアイコンに触れる。ロード中と表示され、三秒ほど経つと、タイトル画面が現れた。


 <ウルトラアカツキシスターズ>


「「……」」


「ウルトラアカツキシスターズ、略してUASだ。和也には申し訳ないが、シスターズにさせてもらった」


「姉さん、これはまずい。あの会社に喧嘩を売るのは本当に不味い!」

「そうよ、慧姉! これは洒落にならないわよ!!」


「あー。確かに既存のゲームに似たタイトルのゲームはあるが、中身は全然違う。だから安心したまえ」


「それならまあ……」

「いい……のか?」


「チュートリアルは未実装だから、私がプレイしながら説明するよ。いったん、私の画面を見てくれるか?」


 まさかの、チュートリアルは開発者が直々に説明してくれるようだ。名前はともかく、グラフィックも綺麗っぽいし、期待だな!








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