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旅行三日目

 旅行二日目の午後は『がっちょ』を三人で捕まえた。

 色合いが海底と同化していて、なかなか見つける事が出来ず、六匹しか捕まえる事が出来なかった。

 小麦粉を調達し、唐揚げにして三人で試食し……


「めっちゃおいしい!」


「え、ナニコレ。すっごく美味しいんだけど!」


「想像以上に美味しいな。是非、みんなにも分けたいな」


 大変満足した。



 そう言う訳で、三日目は『がっちょ』獲りに専念することにした。こういう遊び方が出来るのも海の醍醐味と言えるだろう。


「お昼までの五時間で、誰が一番多く捕まえられるか勝負といこう! 最下位の人は罰ゲームな!」


「おう、どうな罰ゲーム?」「倫理的にオッケーな範囲にしてよね」


 姉さんは、しばし考え、ポンと手を打った。


「そうだ!! 『全力でハシビロコウの真似をする』とかどう?」


「うわあ。ビミョーに嫌なラインだなあ」

「よくそんなアイデアが出たわね……。 勝者はその様子を撮影?」


「勿論だな。だが、SNSに挙げるのは無しで」


「「オーケー!」」



 それじゃあ、ハシビロコウの物真似をしなくていいように、頑張ろう!



 三時間が経過した。「泳いで、魚を見つけて、凍らせる」という非常に単調な作業ではあるが、「今日の昼飯を捕まえている」と思うと、非常にモチベーションが湧く。やはり、おいしいは正義だと思う。

 さて、現在のスコアは


俺:12匹

紗也:6匹

姉さん:5匹


 であり、俺がかなり優勢である。これは憶測にすぎないが、俺が三人の中で最も肺活量が高いのだと思う。よって、より長時間水中に滞在する事ができ、より沢山の魚を見つける事が出来ているというわけだ。


 ここまで順調だと、少し冒険してみたくなるな。よし、もう少し深い所を探してみようかな!



(おう。でっかい岩があるじゃん。ああいう岩の下って魚がいるイメージだよな?)


 深い所は、浅瀬ほど人の手が加わっていないのだろう。巨大な岩が鎮座していた。岩陰と言えば、魚が隠れているイメージがある。早速俺は岩に近づく。


(タコ? あれはタコなのでは?!)


 ビンゴ! 岩陰をのぞき込むと八本脚の生き物と目が合った。墨を吐いて威嚇するが、俺の魔法は遠距離攻撃。


(『凍てつけ』! よっしゃ、美味そうなタコを捕まえたぞ!!)


 ガッツポーズ。これは二人に自慢したい。って息が苦しくなってきた。急いで息継ぎをしよう。


(うん?)


 岩の隙間から、凍ったタコを引きずり出す時、岩の裏面に手があたった。そこは、想像以上にツルツルで岩肌とは思えなかった。


(ナマコでも触ってしまったか? ……何もいない? まあいいや、ひとまず息継ぎを……!)



 なお、二人に巨大なタコを見せると、たいそう喜んでくれた。おっと、紗也が7匹、姉さんが8匹になっている。俺も負けてられないな!



俺:21匹+タコ

紗也:13匹

姉さん:15匹



「わ、私が最下位……。負けちゃった……」


「紗也がハシビロコウの物まねな」

「和也、カメラをありったけ用意するぞ。ありとあらゆるアングルから記録するのだ」

「いいね! あとで、可愛く編集して俺に頂戴」

「勿論さ。さあ、撮影会を始めるよーー!」


「ちょっと? ほんとに罰ゲーム、するの? って、何、その大量のカメラ?!」


「大人勢から借りてきた。全部で8台のスマホと姉さんの持ってるドローン二台。合計10台のカメラで撮影するよ。大丈夫、可愛いアングルで撮影するから」


「は、恥ずかしい……私が恥ずかしがってるところを見てそんなに楽しい?」


「「もちろん!」」


「二人のイジワルーー! まあ、そう言う約束だったしするけどさあ……。で、ハシビロコウの物まねってどうやるの?」


「そうだなあ。まず、むすっとした顔でのしのし歩く。フラミンゴみたいに足が長いから、それを意識した歩き方をするように。そして、そのままむすっとした顔で突っ立つ。5秒ほど待機。その後、眼下に魚がいると思って、ぐわ!と捕まえる真似をする。丸呑みし、満足げな顔をカメラに向ける。こんな感じかな」


 姉さんが色々と指示を出す。うわあ。紗也が可愛そうになってきた。まあ、助けはしないけどな!俺だって楽しみだし。


「ちゅ、注文が多い……分かった、やってみるね」


「それじゃあ、行きまーす。3、2、1、アクション!」


 アヒル口の紗也が、ノシノシと歩き、ステージの中央へ赴く。

 中央で、しばし待機した紗也は、下にいる魚を捕まえる真似をする。なびいた髪が色っぽく見える。なお、今は水着の上に上着を着ている。是非、水着でして欲しかった。

 魚を丸呑みする真似をした紗也は、最後にカメラに向けてドヤ顔を決める。お!いいね、そのどや顔。


「カット! めっちゃ可愛かった! な、姉さん」

「ああ。凄い面白かった! 可愛く編集するから、私はコテージに戻るぞ」


「うう……恥ずかしかった……」


「……紗也も編集した動画いる?」


「……せっかくなんで貰う。ああーー! またしても私は黒歴史を作ってしまったーー! くっ、殺せ……」


「黒歴史でもないだろ? 罰ゲームの動画なんて、いい思い出の一つだよ。それに比べて俺の黒歴史は……はあ」


「そういえば、かず兄、中学生の頃、詩を書くのにはまってたよね?」


「そうなんだよなーー。しかもさ! ちょっと聞いてよ! あの頃の詩は、全部捨てたと思ってたのに、いつの間にか姉さんがスキャンしてたみたいでさ……。わざわざ、『和也の詩~My School Days~』って詩集にして俺に見せてきたんだよ……。しかも、無駄にお洒落な表紙までつけてさ。はあああ……」


「あの、ひまわり畑の表紙ね」


「え?」


「あ、しまった!」


「おい、紗也。まさか、あの詩集見たのか? 姉さんから取り上げて、データも消させたんだぞ!!」


「きゃ! 急に腕を掴まないでよ! エッチなんだからーー! プンプン!」


「可愛く怒って誤魔化せると思うなよ? 白状しな。どうしてあの詩集を紗也が知ってるんだ?」


「……慧姉から貰ったの。厳重保管用と保存用と鑑賞用の三冊」


「な!!」


「この際だから白状するけど、私だけじゃなくて、私達の家族はみんな持ってるよ?」


「NOーーーーー!!!」



 俺の黒歴史は、家族にも知られているようだった……。





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