BBQ
「……なあ、めっちゃ煙が出てないか?」
「「うん?」」
バーベキューの用意をしている祖父ちゃんの方を見る俺達。そりゃあ、火を使ってるんだから、煙が出ていても編ではない。とは言え、真っ白な雲がモクモクと出ていたら心配になる。
「ちょっと俺、見てくるよ」
「あ、じゃあ私も」「私も行くよ」
…
……
………
「お祖父ちゃん? 大丈夫? 物凄い煙の量だけど……」
「おお、和也。いやあ、去年余った炭を使ったんだが、流石に湿っていたようでの……」
「「「ああ、それで。」」」
「私の作った薬で水蒸気を飛ばすよ。だから、お祖父ちゃんは他の準備をして」
「そうか? そりゃあ、助かる。それじゃあ、儂らは皿と金網の準備をするよ」
「姉さん、そんなものまで用意してきたのか」
「いいや? 薬品を使わなくても水分を取り除けるだろ?」
「まさか……!」
「それ!」
姉さんが指を鳴らす。その瞬間、ジュワ!という音と共に、大量の煙が放出された。
「うわ!」「きゃ!」「わわ!」
いきなり視界が真っ白になり驚く。しかし、10秒と経たないうちに、煙は晴れた。そればかりか、炭から煙がほとんど出なくなっている。
「「おおーー!」」
「一気に水を蒸発させたんだ。実は研究室でも使っててな。実験器具を手っ取り早く乾燥させたいときに便利なんだよ」
「なるほどな。姉さん、魔法はあんまり使ってないと思ってたけど、有効活用してるんだな」
「まあね」
その後戻ってきた祖父ちゃんは「ほう! 見事なものだな、慧子。お前の発明品か?」と言っていた。俺達は苦笑しながら頷くのだった。
◆
買い出しに行っていた母さんたちが帰ってきた。野菜、魚介類などなどが揃う。さあ、バーベキューの始まりだ。
「さて、焼く前に乾杯しておこうかの。ドリンクは持ったか? それじゃあ、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「うし! それじゃあ、肉を焼くぞ! 肉を食うぞ!」
「お父さんは元気だなあ」
「おう。儂はまだまだ元気にあふれておるぞ!」
「俺達も焼き始めないとな。姉さん、そこに置いてあるトング、取ってくれる?」
「はい。よろしく頼むよ」
「ああ、任せてくれ。レア? ミディアム? ウェルダン?」
「ウェルダンで。生焼けは危険だぞ? しっかり焼いてくれよ?」
「分かってるって」
「野菜と魚介類、持ってきたわよ」
「ああ、サンキュー紗也」
バーベキューセットは合計三つ用意されている。大人組が二つを使用し、俺達三人で一つを使用する事になっている。
「和也。肉も魚介類もしっかりと焼くんだぞ。例えば、鶏肉だとカンピロバクターって細菌が有名だ。比較的短いらせん状のグラム陰性菌。下痢や腹痛、嘔吐が主症状として見られ、日本で発生する食中毒の主な原因菌の一つだ。魚介類の食中毒も同じくらい危険だ。アニサキスが有名だな。ニョロっとした寄生虫で、こちらも日本でよくみられる食中毒の原因だ」
「「……」」
「どうした、二人とも? もしかして興味がわいたか? 疫学への理解は、自信を守る事に繋がるからな。他の寄生虫としては……」
「頼む、姉さん。食事中にそういう話はよしてくれ」
「む? 食事中だからこそ、知るべき情報だろ? 紗也もそう思うよな?」
「ごめんなさい、慧姉。教えてくれるのはありがたいんだけど……。そういう話を聞くと食欲がなくなるから辞めて欲しいな」
「あ、あれ? なんで私が悪者みたいになってるの? まあ、二人が辞めてというなら辞めるが……」
この後聞いた話によると、大学の友達と女子会を開いた時は、この話題で凄く盛り上がったそう。終いには、『細菌・ウイルス・真菌・寄生虫』がテーマの山手線ゲームが始まったらしい。どんな女子会だよ!!
「ほい。カルビが焼けたぞ」
「「ありがと」」
「火力が強いな……。ひっくり返すのが少しでも遅れたら真っ黒に焦げるなあ。俺はひっくり返すのに専念するから、二人はどんどん食べちゃって」
「分かったわ、お言葉に甘えるわね」
「分かった」
俺は色々な種類の肉を焼いていく。タン、ホルモン、サーロイン。豚バラにソーセージ。鶏の胸肉。
勿論、玉ねぎやトウモロコシ、カボチャ、アスパラガスなどの野菜も調理していく。うん、美味そうだ。
「やっぱり私達ばかり食べるのは申し訳ない。ほら、和也。あーん」
「サンキュー、姉さん。あーん。むぐむぐ」
「わ、私からも! あーん」
「パク。むぐむぐ。サンキュー、紗也」
二人に食べさせて貰いながら、俺は必死に肉をひっくり返すのだった。
◆
ひと段落付いて、今度は姉さんが火の前で調理することになった。
「お米も炊けたみたいだし、牛丼にして食うか」
解放された俺。白飯に肉を乗せて、食う事にする。
「いいわね、それ! 私もそうやって食べよ。あ、でも、そのお肉、鶏肉と豚肉も混じってるから……」
「じゃあ、牛丼ではなく焼き肉丼か。うーん、美味い! 肉の旨味って最高だな!」
「ほんとに! あ。かず兄はもうホタテのバター醤油焼き食べた?」
「いや、まだだな」
「じゃあ、これ。どうぞ。取って置いたやつよ」
「ありがと。うめぇえ! やっぱり、ホタテにはバター醤油だよな!」
「うんうん。私はお刺身も好きだけどねーー」
「ああ、刺身にしても美味しいよな!」
食材を焼ききった頃、ちょうど炭が燃え尽きた。
食べきれなかった食材は明日以降のご飯かな。
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