前日譚
それは、あまりにも美しく悲しい1匹と1人の物語の結末
薄暗い洞窟の中、キラキラと光る美しい白銀の竜と長い黒髪で儚げな雰囲気を纏った美少女が体を竜に寄せている。竜は低音の色声で喋りだす。
「離れるのだ、呪いで君も死んでしまう」
よく見ると竜の体には黒い模様が浮かび上がっている
少女は鈴を転がすような声で答える
「君が死ぬ時は一緒に死のう」
竜は困ったような声で言った
「それは我が言った言葉だ」
「貴方のその言葉が私を救ったのです、今度は私が貴方を救わせてください」
「困った巫女だな」
少女は、頬を膨らました
「名前で呼んでください」
「なぜ、巫女が名前で呼ばれたいのか今でもわからぬ」
「名前で呼んでください」
少し呆れたように竜が呼ぶ
「リズ」
「はい、なんですか?」
「もし、来世で出会った時、我に名前があれば名を呼んでくれるか?」
「何度でも呼びましょう」
「リズ」
「はい、なんですか?」
「来世でも一緒にいてくれるか?」
「今も来世も共に生きて死にましょう」
「・・・・」
「・・・・」
少しの沈黙が続く
「銀竜様」
「どうした?」
「幸せでしたか?」
「チーと過ごす時間はどんな宝よりも心を満たした」
「銀竜様」
「どうした?」
「おやすみなさい」
「おやすみ、リズ」
2人は永遠に幸せに眠った