リアの闇
「そっちのルリって子、私が姿を見せる前に神職者だって言ってたよね?何で神職者が奴隷用の鎖を着けてるの?」
「っ!!」
「?どれい??なぁに?それ」
ルリのその言葉にリアは疑問を覚えた。何故、鎖をつけられているのに奴隷のことを知らないのだろうか?
「奴隷って言うのは、えっと、」
「ああ!ごめんね!奴隷って言うのは、獣人、とか亜人、とかの種族を表す言葉みたいなものだよ」
取り敢えず、知られたくないというのなら誤魔化そう、そう考えてリアは種族を表す言葉ということにした
「!?」
「そうなんだ!おしえてくれてありがとうございます!」
「どういたしまして。そろそろ寝ない?」
「ねるー」
そういってリアはルリを抱っこし、こっそりと睡眠薬を嗅がせて眠らせた。だが、その事にはレンは気付かず、ルリが寝たということだけを確認し、話し始めた
「何で、誤魔化したんだよ」
「貴方が知ってほしくなさそうだったから」
「ねぇ、何で知ってほしくないのか、奴隷用の鎖をつけたものが奴隷の意味を教えられていないのか、私に教えてくれるよね?教えてくれないって言うんだったら……ルリちゃんに意味、教えるよ?」
リアは一応穏便に教えて貰えないか考えていた。だが、前にも言ったようにリアは頭脳戦が得意に思われるが面倒になれば直ぐにごり押す。よって今回も脅す事にしたようだ
「脅しか……!?」
「うん!悪い話ではないと思うよ?貴方たちに正統性がある、または私が気に入れば私は貴方たちに協力するつもりだからね」
「そのどちらにもならなければ……?」
「このまま別のところに行くだけだよ?」
何なんだ。正統性がある、または私が気に入れば、と言っていることから正統性がない悪者でも気に入れば協力するということだろう。こいつは何がしたい?だいたい俺たちのことを別のところに行った先でばらされない保証はない。何故話すと思っているんだ?、とレンは数秒の間ぐるぐると混乱した頭で考えた
「あ、私が別のところで貴方たちに思ってる?」
「当たり前だろ!」
「じゃあ考えてみて。そんなことして私に利点はある?」
「利点は……えっ……ない……!?っで、でも!利点で言えばもし俺らを助けてもいいことないだろ!?」
確かに、普通に考えればその通り、奴隷を助けても利点はない。だが、普通はなのだ
「ん~利点はあるよ。でも、それを話すのはもしも貴方たちを気に入った場合のみだよ」
「どういう事だよ!」
「私が“今”言えるのは」
リアが深く被ったフードの中から、青と黒のオドッアイが見え……青色の方の目が黒色になった
「社会の闇を知っている。それだけだよ」
ゾクリ
リアのその黒い目を見てレンの動きは止まった
黒い、それだけでは表せられない、まるで底の見えない穴のようにとても暗かった。そしてレンにはそれが、何かに対する絶望を現しているように思え、とても恐ろしく感じられた
だが、そのリアの目の色は直ぐに戻り、また、フードで見えなくなった。それと同時に、レンもまた動き出した
「い、今の、は」
「何だろうね?」
そのリアの言葉に、レンは何故か、自身が殺されかけてるかのような恐怖にさらされた
「もう一度、聞くよ。何故神職者が奴隷用の鎖を着けてるの?」
「村に……悪い奴の臭いがする人間たちが来て、神職者であるルリと俺を売れば稼げるだろうって言って、俺たちを拐ったんだ」
「村の人たちはどうなったの?」
「村の奴らは狩りに行ってたらから女子供しか居なくて、抵抗できずに女は捕らえられて、男子は殺された」
今度は、レンが素直に答えた。だが、それはレンの意思ではなかった。リアが闇魔法を使って強制的に喋らせたのだ
故に、何で俺は素直に喋ったんだ!?こいつから悪い奴の臭いはしないけど、何があるか分からないのに!!と、混乱していた
「あれ?じゃあなんで殺されてないの?」
「ルリとの遊びで女装させられてたから……」
「ああ……」
そこで会話は途切れ、レンは目を反らし、リアは何かを考えるように顔に手を当てた。そして、良いことを思い付いた、と言わんばかりに目を輝かせ、
「ねぇ」
レンに話しかけた
レンは周りの物音が全く聞こえないくらいに混乱していた。しかし、リアの声だけはよく聞き取れた
「貴方はその悪い奴を、どうしたい?」
ドクンとレンの胸がなった。そしてレンはその問に
「殺したい」
と答えた。深く考えて下した決断ではなく、反射的な言葉だった
「そ「いや、殺すんじゃ駄目だ。死は直ぐに痛みが終わる。もっと長い間苦しませてやる!!」……そっか。なら、私は協力するよ」
レンが先程言ったことを訂正し、もっと長い時間苦しませてやる、と言ったのを聞いて、リアはまるで面白いおもちゃを手にしたときのような笑みを浮かべ、協力すると言った
「協力……?俺は、復讐したいって言ってるんだぞ?」
「だから、だよ」
「どういう事だよ」
「貴方は、聞いたことはない?復讐の代行や復讐の補助を行うといわれる、『白銀の悪魔』の存在を」
そういうと同時に、リアはフードを下ろした。すると、絹のような長い銀色の髪と青と黒のオドッアイが見えた。そして今回は両目とも黒くなるなんて事はなく、オドッアイのままだった
「まさか……お前が!?」
「うん。私が、元復讐者にして復讐代行者、白銀の悪魔……あっ、悪魔って言っても、勝手にそう呼ばれてるだけで、私は人間だからね?」
「お前みたいな人畜無害そうな顔をした非常識な奴が!?」
「酷い言われようだなぁ」
確かにその言葉だけを聞けばとても酷い。だが湖の主を殺そうとしたり、正統性がなくても気に入れば協力すると明言したりと常識外れなことをやっているリアが悪い
「でも、これで私に貴方の協力をする事に利点があると分かって貰えたかな?」
「いや分からねぇよ」
「え」
レンのいう通り復讐代行者だと言ったところでそれに利点があるわけではない。何故それで理解して貰えると思ったのか
「ん~。私が復讐の代行や補助をしているのはね、私が昔復讐をしたかった時、私が弱くて全然復讐相手に歯が立たなかったから、それを歯が立つようにしてあげたいな~って思ってるからなんだ。そしてそれをしているうちに復讐している様を見るのが面白いと思えるようになってきてね」
「(まあ嘘だけど)」
「やべぇやつじゃん」
レンはリアの考えていることに気付かず、そのまま相づちを打ち、リアはそれに
「お?復讐の補助は要らないかな?」
と、返した。そして勿論レンはそれは困ると食いぎみに返事をした
「いる!」
「あははは」
「ふ、ふははは」
何故、自分達が笑い出したのか、レンはよく分からなかった。けれど……これが、奴隷商のものたちに拐われてから久しぶりに声を出せて笑えたときだった




