今度こそ御来店
シャナに再会した翌日、リアは今度こそきちんと例のケーキ専門店に行こうと思い立ち店の前まで来ていた。
ならば何故店に入らないのか。その理由は窓から見える店内の様子を見ればすぐに分かる。
「うわぁーー!昨日の悪魔が来ました店長!」
「え!?あっ!ホントにいる!?」
「なんで!?」
「あっ、あの、シャナさんに会ったのも偶然みたいでしたし、普通にケーキ食べに来ただけなんじゃ……」
「どうしますか店長!」
「店長!店長に全ての責任が行きますよ!さっさと決めてください!」
「自分に全ての責任が来ると分かった上で決めろと!?」
「私の話聞いてくれてないですね……」
はっきり言ってカオスである。
「……帰った方がいいかな?」
基本的に自分の都合しか考えないリアまで配慮しだした。もう終わりである。
と、まあリアのそんな状態に気づいたのか先程の唯一リアのことを理解してくれていた店員が店を出てリアの元にやって来た。
「あっ、あの!は、入ります……か?」
話しかけてくれたことにリアは満面の笑みである。まぁ
「ちょっ、あいつ何してんの!!」
「はっ、これで責任は俺の元に来なくなる……?」
「「いえそれはないです」」
「そんな」
この話を聞く限り許可は得ていないようだったが。故に取り敢えず誤解を解こう、ということで少し大きな声で
「うん。前に付き添いで来たときケーキが美味しかったから、自分でも来てみたんだ。……前来たときは知り合い見つけてちょっとはしゃいじゃったけど」
と、言った。店長たちは口を開いてあんぐりとしている。そしてリアにはもちろんそれを気にしてやるつもりはない。
だがまぁ感で気付いていたらしい話しかけてくれた店員はその言葉に明らかにほっとしている。よかった。勇気ある店員が安心出来たみたいで。
「ちょっと……?」
それでも混乱はしているようだが。
「じゃ、店に入ってもいいかな?」
「あっ、はい!もちろんです!」
リアと店員さんは楽しそうだが……
「え!?来んの!?」
「そりゃ来るでしょ。お客様として来てるんだから」
「え、“あの”シャナさんに対してあんなことしても何の報復も受けてないし、絶対にあの人シャナさんよりも強いよね??物理的にも社会的にも。そんな人がうちの店に来るの??」
「いや、よく考えたら前に先代【水】の属性保持者のルフさんと来てましたよ」
「既に御来店されてた!?」
「というかさっきあの人が話してたこと聞いてました?『前に知り合いと来たとき』って言ってたじゃないですか」
「えマジ?」
「マジです」
店内はまた、カオスに成り果てていた。……いや、店員たちはまともか。カオスなのは店長だけか。……普通は逆じゃないだろうか?
「前来たときはお堅い店だと思ったけど、この店意外と楽しそうなところだね」
「ああ、たぶん、前の時は店長居なかったんだと思います。店長居ないとみんなまともなので」
「……へぇ」
果たしてこれを見た感想が楽しそうで良いのだろうか。そして店長いた方がダメになる店なんて存在して良いのだろうか。店長を変えるべきではなかろうか。
ようやく店内に入ることに成功したリアは満面の笑みだった。それはもうとてもニコニコニコニコとしていた。……その反面店内は緊張に満ちていたが。
「ど、どちらの席がよろしいでしょうか?特に指定がないなら個室に行っていただけると有りがたいので、ぐわぁ!?」
「アホですか店長。お客様に何場所を強制しようとしてるんですか」
出来れば何か起こったとしてもあまり問題のない個室に行ってもらいたかったのか、早口でリアに話しかけてきた店長が店員(女)に叩かれた。
「えっ!だって怖いじゃん!出来れば個室行ってもらいたいじゃん!」
「店長お客様がこめかみに青筋を浮かべてるので黙ってく……いや黙れ」
「敬語をかなぐり捨てられた!?」
店員に敬語すら使われない店長とはこれいかに。
「さて、店長が失礼しました。好きな場所にお座りください。また、個室を希望される場合料金が上がりますがいかがなさいますか?」
「お客様の場合個室は無料にしときま、ぐっ!」
「店長は黙ってろ。すみません。これは回収させて頂きますね。それでは」
もう店長が店員(女)にも叩かれた挙げ句、カウンターの方に連れていかれた。ちなみにこの店員がリアが2日前において行った、
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| 迷惑料です |
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というカードを見て絶叫した店員だ。あんなに高額をポンッとおいて行ったリアに出きるだけ金を使わせたかったのだろう。強かな女性だ。
「えっ、えっと、取り敢えず、店長たちは気にせず、何処に行きたいかで決めてもらって大丈夫です、よ?」
一番最初に話しかけてくれた店員さんが、店内に入ってから一言も喋っていないリアにそう言った。
「あ、そう?じゃあ、外がよく見える個室で」
「え、いいんすか」
「ん?ああ、別に君たちに頼まれたから行く訳じゃないよ?ただ、個室に行ってみたかったから行くだけ」
「えっと、じゃあ、ご案内するので、後輩くんは店長を絞めといてくださいね」
「はい、先輩」
なんと話しかけてくれた店員さんの方が先輩だったらしい。流石のリアも理解できないと言いたげな表情だ。
「君が先輩なんだ……」
「?はい!」
いや、実際に言いやがった。そして店員さんは何の意図があってそう聞かれたのか理解していないようだ。何故だ。
「まあ別にいっか。それじゃあ案内お願いしてもいい?」
「はい!あっ部屋の中にメニュー表が置いてあるので、それで頼みたい物を決めてから、ドアの右横にある呼び鈴を鳴らしてもらえばすぐに行きますので!」
「了解」
さて、ようやく席に着くことに成功したリアは、メニュー表を持って固まっていた。
「……メニュー、多すぎない?」
ケーキ専門店故にケーキしかメニューにないのだが、おそらく約70種類以上のケーキの名前が目次に書かれていた。普通多くても20種類くらいだというのに。
ちなみに前に来たときはチョコ系のおすすめケーキをルフィに選んでもらったためメニュー表を一切見てなかった。それゆえに今混乱していた。
そしてリアは一旦メニュー表を閉じ、目も閉じて頷いたあと、再びメニュー表を開けて
「取り敢えずチョコ系のケーキのエリア探そうかな。あっ、でも前回はチョコの苦味を生かした形のケーキだったから牛乳多めのケーキにしようかな……」
と、注文するケーキを選び始めた。もう突っ込むのは諦めたようだ。
「ミルク多めのチョコ系でも甘過ぎるのは苦手だから除外するとして……それでも10種類くらいあるね。やっぱり多すぎじゃない?」
机にトントン、と爪を当てて鳴らしながら、リアはメニュー表見てそう言った。
「あっ、待ってこれ凄く気になる。これにしよ」
ここからまたどのケーキにするか悩むかと思われたが、ミルク少なめのチョコレートケーキのうち、3つ目のケーキの説明文を読んだ途端、そう言って呼び鈴を鳴らした。
「美味しい」
届けられた例のメニュー表の中の3つ目ケーキ……ザッハトルテを一口口にいれて、リアは感心したような顔でそう呟いた。
「お口に合ったようでよかったです!」
そしてリアに答えるのはもちろんポワポワとした笑みを浮かべる一番最初に話しかけてきた先輩ちゃんだ。
「ザッハトルテって名前だけ聞いたことあって大分前から興味あったんだよね。師匠が好きだって言ってたし」
「ザッハトルテはチョコレートの濃厚さと、ジャムのさっぱりとした味を楽しんでいただけるので、大体の年齢層の方に気に入って頂けますからね!」
先輩ちゃんの説明に、へぇ、と相づちを打ちながら、リアがどんどんザッハトルテを食べ進めていく。
……相づちを打つ前に「先輩??って思ってたけどちゃんとケーキのことを覚えて説明出来るんだ……」とリアが小声で言っていたことについて突っ込んではならない。
「あっ、そういえばケーキの持ち帰りって出来る?」
「可能ですよ」
「じゃあストロベリー系のケーキの中で一番のおすすめの奴持ち帰ってもいける?」
「はい! ストロベリー系でおすすめの物……となると、ストロベリームースはいかがでしょうか?ムース系統のケーキはうちのケーキの中でも大分評判がいいですよ」
ストロベリームース、と小さな声で呟きながら、リアはシャナの顔を思い浮かべた。
(……ムース系、ってことは口の中で柔く溶けていく感じになる筈だよね?食べたことないからよく分かんなけど)
(そしてそんなヤワそうなの自分で食べる気はないけど。まあ、シャナはそういうの気に入りそうだし、それでいいか)
「じゃあ、それで」
自分で食べるのは嫌だと思う癖にシャナには買おうとしている。もしこの話を聞けばシャナは扱いが雑だ!と、文句を言ってくるだろう。
それはそれとしてストロベリームースはもちろん食べるだろうが。
「了解です! じゃあ、シェフの方に頼んでくるので、少々お待ちくださいね!」
「ん。その間にケーキ食べておく」
そうして無事ストロベリームースを持ち帰りの形式で受け取り、リアが店の扉を開けた。
「あ」
と、同時に立ち止まり、最後に謝罪くらいしておけと連れ出された店長を見て、
「約2週間後くらいにルフと一緒にまた来るね」
とだけ言って、店を出ていった。
そしてもちろん店主の方はというと……
「え!? 何で!? 怖いんで来ないで欲しいんですけど!?」
と絶叫し、先輩ちゃんたちに叩かれていた。
ケーキについては全て食べたことないので大体想像です。はい。卵、牛乳アレルギーなので。いや、他にもアレルギーたくさんあるんですけどね?
【追記】
土曜日と間違えて更新忘れてました。まだ11時なので滑り込みセーフということで許してください




