本題に入る
なんとか子供たちを宥め、リアはルフィーに連れられてルフィーの部屋に来ていた
「さっきはごめんね?誰でも出来る物だと思ってたらから気軽に教えちゃった」
「い、いえ……本気で悪気無かったんだろうなぁ(ボソッ」
その通り、リアに悪気は一切なかった。というか実は今現在も何故ああなったのかちょっとよく分かっていない。その事をルフィーが知ればきっと絶句するだろう
「それで、」
先程の罰が悪そうな表情から打って変わり、リアの顔がまるで相手を試すような、己よりも圧倒的上位者だと示すかのような獰猛な笑みを浮かべ
「依頼内容は?」
と、ルフィーに問いかけた。それに対し、ルフィーは最初の頃のような真剣な表情を取り戻し、そして
「依頼内容は」
ルフィーの瞳が悲しげに、悔しそうに、揺れる
「とある奴隷商から違法奴隷を救うことです」
その依頼内容は、リアにとって少し意外なものだった。なぜなら、基本的にリアに持ち込まれる依頼は相手を殺害するものが多いからだ。……まあ、リアも孤児院を運営する者が人殺しを頼むことはないだろうとは思っていたが
「救う、か。具体的には?奴隷商から引き離すこと?それとも奴隷商から引き離した上でそれ以降の生活も面倒みるの?」
「あっ、いえ。それ以降の生活は孤児院で働いて貰ったり、他の道を望む方にはそのための後ろ楯と“私が”なる予定です」
リアの言葉でルフィーは自分の依頼内容が抽象的過ぎたと理解し、慌てて応答した
「なるほど。了解」
その言葉にルフィーは首を傾げた
「……あの、リアさんの受ける依頼は、基本的に人を殺す物だと聞きました。私の依頼を受けてもいいんでしょうか?」
ルフィーの言葉には、リアもこてん、と首を傾げた。この人は何を言っているんだろう、と言いたげな目で
「私は私が受けたい依頼を受けるだけだよ?」
リアの言葉に特に深い意味は込められていない。だがしかし、ルフィーは自分自身の自由な意思を尊重する、素晴らしいあり方に思えた。
が、ルフィーのそんな考えに気づかず、リアは自身が気になっていたことについて聞くことにした
「そういえば孤児院の子達がルフねぇーちゃって呼んでたけど……愛称?それとも……」
「何かトラウマとかで、本名で呼ばれたくないの?」
リアがそう言った途端、ルフィーが明らかに動揺して、肩を震わせてた
「……えっと、その、」
「ああ、ごめんね?言いづらいなら言わなくてもいいよ」
ルフィーの様子に見かねてリアがフォローをした。リアにしては珍しい……いや、ルフィーが困っていたのは元はといえばリアのせいなのだから当然の事だが
「い、言わなくても、いいんですか?」
だが、ルフィーはリアが言わなくてもいいと言ったことに驚いていた
「もちろん。誰にでも他人に言いたくないこと、言えないことはあるだろうしね」
リアのその言葉にルフィーは
「あ、ありがとうございます」
と、返すこと以外出来なかった
その時、扉の外からパタパタと足音が聞こえてきた。そして
「リアねぇーちゃ!また氷のきれーなの作って!」
孤児院の子達が扉をあけ、リアのところにやってきた
「こら、お話の邪魔しちゃ駄目でしょ」
「ん~でもこれもう話続けられないよね?明日にしない?」
「リアさんがそう言うのなら……」
依頼内容を大雑把に説明した翌日、リアはまたルフィーの部屋……ではなく、ルフィー行きつけのルフィー曰く安心出来る店の個室に来ていた。リアからすれば依頼内容の流出を防ぐためにもっと人気のないところがよかったのだが、ルフィーは有名で人気のないところに行けば注目を浴びてしまうため、ルフィーがよく行く場所で話すことになったのだ
ここはケーキ専門店のため、ルフィーは苺のショートケーキを、リアはチョコレートケーキを注文していた
ルフィーの苺のショートケーキの苺は摘まれてからあまり時間がたっていないのかつやつやしていて、クリームの部分はふわふわと、しかしよく屋台でみるわたあめのようなふわふわ感ではなくしっとり感も兼ね備えていた
一方リアのチョコレートケーキはリアがチョコレートケーキの中でも苦めのものを選んだからか、スポンジの色が濃い。一瞬炭と見間違えるような黒だ。だがしかしそれから登りたつ芳ばしいカカオの香りがそれがチョコレートケーキであるということを示している
「さて、それじゃあ話ながら頂くとしますか!」
「ええ」
美味しそうなケーキに顔を綻ばせながらリアがルフィーにそう言った。それにルフィーは子供みたいでかわいいなぁと本人に言ったら殺されるようなことを考えながらながら返事をした
「で、奴隷商の名前と救出して欲しい人の人数、種族、年齢とか教えてくれる?」
一口食べてキラキラとした目でパッとケーキを見た後、大事に大事にゆっくりとリアがケーキを食べはじめる。が、別にリアは仕事を忘れている訳ではないのでルフィーに依頼内容を聞くことにした。……ふわふわと嬉しそうな顔は隠せていないが。それにしても……これだけ見ればただの13歳の少女だと言うのにギルド長を脅したり挙げ句の果てに人殺しをしていたりする、ということを何も知らない他人が聞いたらどう思うのだろうか。十中八九たちの悪い冗談だと思われるだろう。そうに違いない
「はい。奴隷商の名はブット・ルーズ。彼のもとから救出して欲しいのは計3名で……」
「意外と少ないね」
「あれは一応きちんとした奴隷商でもあるのであまり時間を割けなかったのかと……」
「ああ、なるほど」
違法奴隷を取り扱う奴隷商には、違法奴隷のみを取り扱う奴隷商の場合と、違法奴隷はあくまでもサブとして取り扱っていて、お得意様意外には見せない貴重“品”として扱われている場合の2つがある。リアはてっきり前者の奴隷商だと思っていたため、「意外と少ないね」という発言に繋がったのだ
「それで種族は、ハーフエルフ、ケットシー、アラクネ」
「本来なら一番普通なはずなのにその中にハーフエルフが入っているのにめっちゃくちゃ違和感感じるんだけど」
本当にリアの言う通りだ。ケットシー、アラクネというとても珍しい種族が拐われた中で何故そこまで珍しくもないハーフエルフも拐われたのだろうか
「私もうちの孤児院にくる予定だった子の中で何故この3人がさらわれたのか不思議でなりません」
「ん?うちの孤児院にくる予定だった?」
リアのその言葉にルフィーは首を傾げ、数秒間見つめ合ってからああ!とルフィーが声をあげた
「すみません、言っていませんでしたね。今回私が助けようとしているのは、私の孤児院にくるはずの子供たちが拐われたからだったんです」
「なるほどね。それでわざわざ裏ギルドに依頼したのか」
リアのその言葉にルフィーはきょとんとしていたが、もしもそう言った理由を知れば即座に否定していただろう。何故ならリアは先代とはいえ【水】の属性保持者の孤児院にくるはずだった子供の救出なんて表のギルドに頼めば立場が悪くなるのだろう、と思って言ったのだから。




